能楽師 片山九郎右衛門さんに能の特徴と魅力を聞いてきました #京都観世会館コラボ企画
華やかさを最小限で表現し、無限を感じる幽玄の世界……それが「能」。
こんにちはミュージアム部の部長 内村です。みなさま「能」と聞いて何を思い浮かべますか? インパクト抜群の「能面」。神聖な空間の「舞台」。煌びやかな「装束」。どれも一度は見たことがあると思いますが、正直なところよく知らない……そんな世界ではないでしょうか(かくいう私もそう!)
そこで今回は、前半に私から能の歴史をダイジェスト形式でお伝えさせていただいて、後半に能楽師 片山 九郎右衛門さんにご登場いただき、能の特徴と魅力を教えてもらいたいと思います。
まずは「能」の歴史ダイジェスト
能役者のルーツは中国伝来の「散楽」!?
能は600年以上続く日本最古の歌舞劇です。諸説ありますが、奈良時代に中国大陸より伝わった「散楽」の役者が諸国に散って「座」という集団を作っていったのが、能の生まれる土壌となったのだそうです。当初は曲芸や奇術を楽しむものだったのだそうで、現代の能のイメージとはずいぶんと違いますね。
散楽はさまざまな芸能と交わり「猿楽」へ
散楽は平安・鎌倉期に入ると、ものまねや寸劇、田楽などとも交流し独自の発展を遂げ「猿楽(あるいは申楽)」と呼ばれるようになります。
室町時代になると、寺社の法会や祭礼で翁猿楽を舞うことが多くなり、寺社とのつながりが強くなりました。
このように、時代の変化でさまざまな文化・芸能と組み合わさっていくのがよくわかりますね。
現代の「能」への進化
奈良で大和猿楽四座の結崎座の棟梁として活躍していた観阿弥は、白拍子の曲舞などを導入して、従来の猿楽に大きな革新をもたらします。
1375年に京都新熊野神社で、息子の世阿弥とともに猿楽能を演じます。それを観劇した室町将軍の足利義満が世阿弥にほれ込みます。まさに運命の出会い!ですね。
それ以降、観阿弥が率いる一座は将軍をはじめとした武家や公家など有力者たちの愛顧を得て、幕府のお抱え的存在になりました。
世代は観阿弥から世阿弥へと移ります。世阿弥は劇の構成を前場、後場と前後編に分けて、神や霊、精霊などの人を超えた存在を主人公 (シテ)、旅人や僧侶などの登場人物 (ワキ) とし、後場でシテがワキの夢に登場し、土地の伝説や身の上を語る作劇法「複式夢幻能」を創り出しました。
こうして世阿弥は、父の志した「幽玄」を理想とする歌舞主体の芸能に磨き上げていき、現代の能へと受け継がれています。
駆け足で説明しましたが、このような古くからさまざまな芸能とともに交わり、進化してきた歴史を持つ日本最古の歌舞劇が「能」なのです!
ちなみに「能楽」という呼び方をするときは、能に狂言も含んだ呼び方になります。
片山 九郎右衛門さん!能の特徴と魅力を教えてください
舞台は現代。京都観世流 片山家当主の、片山 九郎右衛門さんにご登場いただいて、能の特徴と魅力をお聞きしてきました。
「能」ならではの3つの特徴
能を「和製ミュージカル」と説明していただくことがあります。確かにミュージカルのように音楽とお芝居、そして舞を一緒に楽しめる歌舞劇ですが違いがいくつかありまして、その中でも特徴的な3つ「囃子」「仮面劇」「謡」についてお話したいと思います。
ひとつめ。能において音楽は囃子という方がしっくりきます。例えばシテ(主役を演じる役者)が演じる主人公に、囃子はあるときは励ましを、またあるときは「そうではない」と疑問や提案を投げかけたりします。シーンを盛り上げるBGMとしてではなく、お芝居に直接関わっていくのが囃子なのです。これは音楽との大きな違いではないでしょうか。
ふたつめの「仮面劇」だというのは、わかりやすい特徴ですね。仮面を使って演じるというのは表現上、制約がとても多いのです。ほかの歌舞劇はメイクに変わっていったのですが、能の世界はいまだに能面という専用の仮面を使い続けています。
みっつめは「謡」が物語を紡ぐこと。謡いとは語りと歌の間をゆくような歌唱法でしょうか。
「囃子」「仮面劇」「謡」この3つの柱で物語が進んでいくのが能ならではの特徴ですね。
世界に入り込んでほしい
私が思う能の魅力は、演じている世界に入っていただくことができるということです。
能では神や霊、精霊(シテ)が現れて、旅人や僧侶(ワキ)に身の上を話すようなシーンが多くあります。その時ワキは「何とかこの人を助けてあげたい、慰めてあげたい」と考え行動するのですが、その想いや行動は、観劇しているお客さまに一番近いところにあると思います。
ワキに思い入れすることろから始めていただいて見ていただく。その体験を重ねていると、いつの間にかその物語の場所に自分が存在しているような、居合せているような体験をしていただけるようになります。どこか神事めいたところがあるでしょう。そこが能のおもしろいところなのです。
「物語を見る」という受け身的な楽しみ方でなく、「物語に参加する」というある種スイング感を楽しんでいただけたらうれしいです。
「能」の世界に浸れる京都観世会館へ!
片山 九郎右衛門さんの語る「能」の特徴と魅力はいかがでしたでしょうか? 私たちが思っていた歌舞劇とはまた違う神事めいた側面もあり、今まで体験したことのない世界に入ることができるのかもしれません。
今回お話を聞きに伺った京都観世会館は、市内の文化芸術ゾーンである岡崎に位置します。京都における舞台芸術の総本山として能・狂言が鑑賞できる能楽堂です。第二次世界大戦末期の強制疎開の後、復活を願う能楽師たちと昭和33年3月現在の地に再建されました。
京都観世会館では、はじめて能にふれる方のためにさまざまな取り組みをしています。「面白能楽堂」もそのひとつ。
毎年夏休みに様々なテーマで能の“おもしろさ”をお楽しみいただく、子どもも大人も気軽にご参加いただける催しです。次回開催は2022年7月を予定。
京都観世会館とフェリシモミュージアム部が「初めての能」をテーマに初コラボ!
フェリシモミュージアム部は日本最古の歌舞劇「能」をテーマにしたグッズを、京都観世会館とコラボレーションして開発中です!
発売は2022年3月18日(金)! フェリシモミュージアム部ウェブサイトでの販売予定。詳しい情報は、3月18日(金)までお待ちください!
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