ブロラン!バララン! 行けーっ!ブロラン号!
こんにちは。
時計の話は置きまして、月イチのいっぷく記事です。
お盆休みに時間ができたので、少し早めの投稿です。
いつもの、自分の昭和の頃の思い出ばなし、
ちょっと、物語風にしてみました。
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交差点のど真ん中。
『ごめんなさい・・ もうだめです・・』
「あれれ、止まっちゃったよ」
「今朝も調子悪かったもんなあ、まいったな、こんなトコで」
周りからのクラクションが大きくなる。
「とりあえず、押すわ、兄貴はハンドル頼む」
『左手さん、弟さん、ゴメンナサイ・・』
『せめて、右折が終わってから、止まりたかったんだけど・・』
自分が窓から手を出し他の車を止め、弟が押し始める。
『あれあれ、二人とも、他の車たちと喧嘩はじめちゃった』
『僕のせいで、喧嘩はやめて!』
・・・
今から、40年と少し前、
自分、18で自動車免許を取って、
初めての愛車は、父親が仕事で使っていた車でした。
その車は、SUZUKI の キャリーバン
今でも、キャリーは、スーパーキャリーの名で軽トラが販売され、
ワンボックスタイプは、エブリイの名で販売されています。
自分の愛車は、
その前身、昭和50年代の実用軽商用車、見出し写真の車です。
(見出し写真は、SUZUKIのHPより引用しました)
自分が高校生の時に、我が家に来て、
自分が乗り始めた頃は、8万近く走っていたボロ車でした。
4ナンバー。
550cc、4速MT、28ps。
3気筒、2スト、キャブだったような。
背高で、急ブレーキ踏んだらコロンといくと思います(笑)。
効かないクーラーや、カセットデッキは、外付け。
色は、メタリックブラウン。
この色は乗用車っぽい色で、気に入ってました。
今で言う、流行りの旧車ではありません。
もう、憶えている方も少ないでしょう。
時代とともに、消え去る運命の実用商用車。
街中で、見ることは、まず無いと思います。
ひとことで言うと、
「めちゃ遅い! すげぇうるさい! 止まる気がない!」
の三本柱でしたが、
免許取り立ての青年にとって、ボディサイズが小さいがゆえ、
小回りがよく、縦列駐車も楽で。
バイクもありましたが、ワイワイできる4輪の方が楽しく、
近所の友達の家に行くにも、父親から借りて出かけていました。
愛称は、『ブロラン号』。
やかましいエンジン音と、そのポンコツ具合から、
マンガの”ど根性ガエル”の南先生の愛車の名前を引き継ぎました(笑)。
南先生のブロラン号は、
セダンの「パブリカ」だったんじゃないかと思いますが、
自分の『ブロラン号』は、ワンボックスです。
話は、『ブロラン号』の、独り言です。
(左手=自分)
・・・
下町の自動車修理工場。
『修理のおじさんが、僕のおなかをのぞいて、うなってる』
『むずかしいところが、壊れちゃったのかな』
『そういえば、この前、オイル入れたばっかだったよね』
『左手さん、「ガソリンも食うのに、オイルも食うんかい!」って、』
『言いながら、いつもオイルをたすよねえ(笑)』
『そっかあ。』
『左手さんが、僕に乗りはじめて、もうすぐ、3年かあ』
『いろんなトコ、ドライブしたよねえ』
『左手さんと僕との初めてのドライブは、房総半島一周だったっけ』
『出発した時にいってた「ドキドキだよ、怖いなあ」が、』
『帰りは「オレ、運転うまくね」だったよね、正直、笑ったよ』
『夏は、左手さんの友達3人と、』
『キャンプ道具いっぱいのせて、富士山に行ったねえ』
『男4人と、荷物がいっぱい、』
『僕、一生懸命に走ったんだよ、けど、とても遅くて、』
『高速の登坂車線で、トラックにあおられてたよねえ』
『「行けーっ!ブロラン号!」って、』
『エンジン以上に大きい声で、左手さん、ほえてたっけ(笑)』
『清里には何回も行ったなあ、ここも坂道は大変でしたね(笑)』
『街中では、』
『僕が小さいからって、道がこんでいるとすぐに路地に入る左手さん、』
『せまい路地裏を、せわしなく、あっちこっちと走ったよね、』
『なんで、せっかちなんだろうねと、お袋さんがいつもこぼしてたよ』
『僕は知ってるよ、それって、親父さんゆずりだよね(笑)』
『けど、道がすいてても、』
『助手席に女の子が座ってる時は、ゆっくりゆっくり、まっすぐ走るよね(笑)』
『チョークをひいて、一発でエンジンがかれば、気分良さそうで』
『エンブレが弱く下り坂では、ひとり大騒ぎ』
『切り返しでは ハンドルが重い!と、ぼやきまくり』
『シート下のエンジンがうるさく、カセットのボリュームはいつもMAX』
『あと、僕、パンクが多くて、』
『左手さん、プロ並みにタイヤ交換がうまくなりましたね(笑)』
『そうそう、車上荒らしにもあっちゃったよね』
『取られたものはなかったけど、スライドドアの窓を壊されて、』
『左手さん、親父さん以上に、怒ってたっけ、』
『愛されているとわかって、とてもうれしかったよ』
『いろんなことが、あったなあ』
『あっ、左手さんがきた』
『修理のおじさんと、なにか話してる』
『親父さんのかわりにきたのかな?』
ドアを開け、運転席に座る。
「よっ、ブロラン号!」
「悪いな、親父に用事があって、俺が迎えにきたよ」
『いいですよ。 あのときは、大変でしたね』
キーを回す。
キュルキュルー、
ブロラン! バララン!
ちょっと、アクセルをふかす。
ブロラン!! バララン!!
バックミラーにオイル燃焼の煙が見える。
「おっ、今日は、調子よさそうだね、一発だよ」
『はい、だいじょぶそうです』
バックミラーをいじり、
「ブロラン号に乗って、2年たったっけ、今、3年目か・・ 」
「おまえと・・ いっしょに・・ 」
「たの・・ し・・ かっ・ 」
バン!!
自分は、ハンドルを、強く叩き、
ハンドルに、顔をうずめた。
『もう、 なにも言わなくて、いいですよ』
『わかってますから、』
『これが、左手さんとの最後のドライブだって、ことは』
『今日は、天気がいいですね』
『道路もすいているみたいですよ』
『ゆっくりゆっくり、 走りましょうよ』
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先にも書きましたが、自分が免許を取って、最初の車が、
『ブロラン号』でした。
この頃は、スーパーカー以上に、スーパー国産車全盛期。
巷には、かっこよく、速い車が、溢れてました。
その中で、非力な『ブロラン号』をどう走らせるかが、
楽しさのひとつでもありました。
思うと、
その身勝手な自分の運転や、初心者の荒い運転もあったと思います。
3発のうちの、1発を潰してしまい、
『ブロラン号』の、予後不良を早めてしまったようです。
車屋に引き取ってもらったとき、解体かもと聞いたことを憶えています。
そんな仕打ちをしてしまいましたが、
『ブロラン号』が、こんな話の想いで、いてくれたらなあ、
と思って書いた、彼の独り言。
あやまらないといけないのは、自分の方です。
おかげで、今まで無事故で過ごせています、ありがとう。
いつか、天国に行ったら、会いたい人がたくさんいるけど、
『ブロラン号』、お前にも、会いに行くからな。
ハンドルを握って、清里の思い出話でもしようや。
『ブロラン号』を、思い出したきっかけの記事があります。
junkichi_s さんの、「夜空に輝く黄色い愛車」という素敵なお話し。
「モノには魂が宿る」これ、けっこう信じてます。
そして、見守ってくれているということも。
junkichi_s さん、ありがとうございました。
夢と目標!応援します。
さて、自分も前に進まねば^_^/
FLH