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待ってください! 「粋」過ぎじゃあ、ござんせんか? (その弐)

こんにちは、
時計の話は置きましての、月イチのいっぷく記事でございます。

野暮な前説は抜きにいたしましょう。


あれ?
この、前振り文句、前にも書いたような・・


はい、
「粋」に出会った、お話し、その弐。
師走も終盤、お忙しい中、こんな噺でいっぷく、くださいまし。^^




もう、十数年前の出来事なのですが、
決して忘れられない、いや、忘れてはいけない、
ツレとの待ち合わせで入った、立ち飲み屋でのお話しです。


○飲み屋のじいさん

夕刻、繫忙時間、
客でごった返す、立ち飲み屋。


先に着いた自分が、カウンタ前のひと場所を確保、
左手は、小ざっぱりした、じいさんが一人で飲んでおり、
右手は、空いてたのですが、どんどん客が訪れ、埋まってしまい。

『これじゃ、あいつが来ても、飲めないな。』
『来たら、出るか。』
そう思いながら、黙ってビールを飲んでいると、
店の外で、自分を見つけたツレが、手を振りました。


まあ、しようがない、と、
ジョッキを飲み干して、鞄を手にしたところ、

突然、
左手のじいさんが、
さっと、自分の手をつかみました。


びっくりする、自分。

すると、じいさんが、
「兄さん、」
「俺が出るんで、相棒、ここに呼びな。」
と、ひと言。

『???』


じいさん、
微笑みながら、そっと耳打ちします。

「こういうことすると、」
「コレ(店主を小さく指差して)から、一杯奢ってもらえるんだよ。」

「ありがとな。」

『???』



じいさんが、去って、

ツレが、入ってきました。
「遅れてわりい、なにかあったか?」

『いや・・ べつに・・』


『・・・』



ツレと乾杯した後、
なにかが、心の底から、ジワジワと、込み上がってきて・・   

ツレに言いました。


『あのじいさん・・、 「粋」過ぎねえか?』


~~~

○あんな、じいさんになりたいもんです

ちょうど帰ろうと、思っていただけかもしれませんが、
それにしても、
なんとも、しびれる、場の譲り方!

"俺が出てくのは、あんたのためじゃねえんだよ。"
"俺のためなんだよ。"
と、言わんがごとく、
自分に、お礼を言わせない、捨てゼリフ!

逆に、礼まで、言うなんて。


思い返すと、
情けないことに、
自分、あのじいさんに、いっさいの言葉を発せてませんでした。

じいさん、店を出る前に、
店主とアイコンタクトしたような気がするのですが、
じいさんの言葉が、本当かどうかは、わかりません。

もし、気を使わせない言葉だったら、なおさら、しびれます!
飲み屋としても、こんな常連は、気持ちがいいでしょうね。


綺麗な飲み方だなあ。
思い出すたびに、ホレボレします。

自分も、もうじき、じいさんになります。
あんな、じいさんになりたいと、思い出す度に思う話でした(笑)。


○ひとつの疑問

実は、このシーン、ひとつ疑問があるんです。

飲み屋の入り口と、カウンタは背中合わせ。
けっこう、離れてもありました。


自分は、
ツレを見つけるために、チラチラと入口を見てましたが、
じいさんは、
一度も振り向いたり、自分を見たりしたことはなかったような。


隣の仕草だけで、隣り人の心を読み取ったんだとしたら・・


すげえ!! かっけーぞ!


じいさーん!! 
「粋」過ぎますって!!


○後口上

飲み屋で会ったおやじの、「粋」なお話し。
十数年前の出来事でしたが、
ときどき、こういう出来事が拾えるだけでも、
世の中、捨てたもんじゃないですね!


では、前回(その壱)と同じように、
「粋」な口上で、本日を〆るといたしましょう。
せっかくなので、飲み屋のお話しおば。


お江戸下町の界隈で、
一杯行くか!と、仕事帰りの二人の会話。


「おい、あの蕎麦屋、”いちげんさん、お断り” って紙、貼ってやがらあ。」
「汚ねえ店構えで、ずいぶんとお高くとまってやがる。」

『お前は、相変わらずの早とちりだねえ。』(笑)
『よく読みねえ、”いちけんさん、お断り” だよ。』

『こいつは、粋、だねえ。』

『よし、決めた!』
『1軒目はここにして、2軒目にくりだそうじゃねえか!』



ココ、1軒だけの飲みは、お断り!
「ここだけじゃ終わらせず、次の店も行ってくださいよ。」って、いう、
「粋」な、飲み屋の気の配り。

こんな店が、繁盛しないはずが、ござんせん!
きっと、旨い酒とつまみが出たことでしょう(笑)。


さて、
この ”おやじの左手note” も、”いちけんさん、お断り” 。^^

是非、このあとも、
たくさんの素敵なnoterさんの記事を、見に行っていただきたく、
気が向いたら、帰って来てくださいませ。
お待ちしております。m(_ _)m


Merry Xmas & Happy New Year!
「粋」な Xmas、そして「粋」な 新年をお迎えください。


○その壱

待ってください!「粋」過ぎじゃあ、ござんせんか?

FLH