19. 紳士の素敵すぎる腕時計の話・・
こんにちは。
おやじの左手です。
趣味のひとつとして、1960年代の国産手巻き実用腕時計を集めては
こつこつと修理をしています。
記事の趣旨は、「自己紹介」をお読みいただければと思います。
これからの話、noteで、ココ一番の時に、
書こうと思っていた、自分にとってのとっておきの話なんです。
今が、ココ一番ではないのですけど、投稿です。(笑)
○ 7年ほど前のことです。
会社の社外コンサル主催の、コーチングスキルアップ講座のような、
セミナーがありました。
自分、年齢立場から、参加するつもりも、必要もなかったのですが、
クライアントからのお願いで、参加をしました。
30名ほどの参加者で、案の定、マネジメントのスキルアップをしたい、
40代らしき方々が多く、
自分のような50代以上は少なく、少し浮いてしまう講習会でした。
ですが、運が良く、自分の右隣りに座られた方が、
自分より、6っ7っくらい年上の、グレーヘアーのナイスミドル。
ひとことで言うと、まさに「紳士」のようなお方でした。
クラシカルな雰囲気の綺麗めのスーツで、押し出し感は無く、
筆記用具は万年筆。
姿勢が良く、テキストにさらさらと書き込む姿が様になっていました。
こういうセミナーって、適時、グループワークがあると思います。
この会もそれに倣い、2時間に1回くらいでグループワークがありました。
その中の最初のひとコマ。
講師:ではこれから、”褒める”ワークをします。
お隣りと向い合せになり、5分間、第一印象で褒め合ってください。
自分、その紳士と向い合せになります。
お互いに頭を下げ、自己紹介後、「では、私から、」とワーク開始です。
自分:お見受けしたところ、すっとした姿勢で、とてもいい印象がします。
ご自身、だれもが、憧れるのではないでしょうか。
紳士:いえいえ、もう、じいさんですよ。
自分:実は、左手の腕時計、気になっていたんです。
それ、キングセイコーじゃないですか、それも相当に古い。
紳士:おお、おわかりですか。
たしか、1966年製と聞いてまして、今でも使っています。
自分:66年ということは、KSKと呼ばれる時計かと!
後ろにあるメダリオンを、見せて頂いてもいいでしょうか。
紳士:よく、ご存じで、どうぞ見てください。
自分:綺麗に、盾が残ってますねえ。
文字盤も、とても綺麗ですね。
・・・
こんなんで、あっという間に5分が終了(笑)。
順番交代です。
紳士:○○さんの時計も、おしゃれですね。
自分:いやあ、キングセイコーには敵いません。
スカイライナーっていう手巻きなのですが、これも1965年製でして。
紳士:ずいぶん、綺麗に使ってらっしゃる。
自分:1965年3月製で、自分の生まれ年と生まれ月まで一緒なんです。
だもんで、愛着がありまして。
紳士:それは、めずらしい。 年と月までわかるのですか?
自分:はい、見方は、 キングセイコー、もう一度、見せて頂けますか。
ここに、・・・
気がつけば、軽く5分オーバー。
ある意味、褒め合いです(笑)。
このような出会いから、
お互いに、気軽に話せるようになり、
自分にとり、予想外の楽しいセミナーになりました。
○ 紳士のKSK
ここからが、とても素敵な話なんです。
10分ほどの、短いお話しだったのですが、
この時に、このキングセイコーについて、紳士が話してくれたことを、
少しだけ背景に色をつけて、小説風に書かせていただきます。
~~~
僕が、目標の大学に受かったことを、叔父さんに電話で伝えた。
叔父さんは、とても喜んでくれて、
「来月に日本に帰るので、その時に、横浜に来い、祝杯を上げよう。」
と、僕を誘ってくれた。
僕の叔父さんは、海外航路の大型旅客船の一等航海士。
いつも、忘れた頃に、父のところに遊びに来てくれて、
僕が小さい頃から、優しく声をかけてくれる、叔父さんだった。
一か月後、
約束とおり、叔父さんとホテルのロビーで待ち合わせをした。
背中から叔父さんに声をかけられ、「おめでとう!」と握手をされ、
「さあ、行こう。」と、レストランに案内される。
食事中、叔父さんは寄港先の話をたくさんしてくれた。
まるで、世界は、こんなに広いんだよと、伝えたいみたいに。
僕は僕で、こんな世界があるのかと、思ったと思う。
食事も終わりが近づいたころ、叔父さんが、僕に言った。
「クルーズカードを知っているかい、客船内外で自由に使えるカード。」
「大学ってのは、クルーズカードみたいなものだ、」
「君は、長い航海の中で、期間限定のクルーズカードを手に入れた。」
「たくさん使え。 卒業してからその価値に気がついても遅いからな。」
そして、
叔父さんは、僕の目の前で、左手にしていた腕時計を外し、
「おめでとう、これからだぞ。」と、その腕時計を僕に渡した。
~~~
なんと、
話は、続きがあります。
紳士殿、あのあと、
叔父様からもらった腕時計に、願をかけたそうです。
「僕が、ある程度の地位になるまで、待ってて欲しい。」
「その地位になってから、使わせて欲しい。」
と。
それから、紳士殿、
その叔父様の影響か、卒業後、貿易関係の仕事に就かれ、
独立もされたそうです。
このお話しの最後を、
左手の腕時計をなでながら、
「15年くらい前に、やっと、使うことができましたよ。」
と、笑いながら、締めくくりました。
この話、
なにもかも、素敵すぎませんか!(そう思うの自分だけ?)
自分、紳士の話す言葉の、ひとフレーズ、ひとフレーズ、
どれもに、大声を上げそうになりました。
(セミナー中だったので、こらえました:笑)
引き継がれた腕時計が、キングセイコーというのも、
意志の重みがあって、とても素敵です。
目の前で、左手にしていた腕時計を外して渡す、叔父様!
夢が叶うまでの願をかけ、それが、今、左手にある紳士!
まるで、ドラマのようなお二人。
素敵な話すぎて、強烈に印象に残っています。
もう、悶絶モノです!(笑)
今でも思い出すと、こみ上げてくるモノがあります。
いやあ、腕時計って、ホントに、物語がありますね。
しかも、聞いて、じーんと来る話ばかり。
こういうエピソード、心から大好きです!
○次回のお話し
話が長くなってしまいました。
紳士との会話の中に、自分のスカイライナーの話がありました。
紳士の話には、足元にも及ばないのですが、
次回は、このスカイライナーの話ができればと、思います。
あのとき、
紳士に、KSKの写真を撮らせて欲しいと、頼めばよかったなあ。
セミナー中だったことと、大人げないと思ってしまったため、
頼めませんでした。
この話を思い出すたびに、ちょっと悔やんでいます。^_^;
立花とけいてん様のサイトの
44KSを貼らせていただきます^_^/
FLH