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26. 時間の言い方失踪事件・・

こんにちは。
おやじの左手です。
趣味のひとつとして、1960年代の国産手巻き実用腕時計を集めて
こつこつと修理をしています。
記事の趣旨は、「自己紹介」をお読みいただければと思います。


No.23 の記事、
『23. 昭和の「What time is it now?」』

を書いたあと、ちょっと、気がついたことがありまして、
リサーチして、掘り下げてみました。

2,900文字ほどの、長いドラマになっています。
お時間あるとき、お楽しみいただければと思います。 m(_ _)m



~〜〜



○プロローグ

数週間前、なにげに、No.23 の記事を読み返してみたところ、

記事の中の写真の文言、

じいさんの時計、たぶん、こんな時計じゃないかと。
「今、何時ですか?」
『午後6時前ですよ。』


んっ?

『午後6時前ですよ。』

書いたときは、気にならなかったが、

人に、時間を伝えるときに、
「6時 ”前” 」なんて言葉、今じゃ、言わないんじゃなかろうか?


大きな、疑問が沸いて来た・・


○時間の言い方失踪事件 特別捜査本部

似たような言い回しに、
「*時 ”過ぎ”」「*時 ”ちょっと前”」「*時 ”ちょっと過ぎ”」「*時 ”半”」
などもある。


例えて言うと、

5:57 や 5:58 くらいを、6時前や、6時ちょっと前
6:02 や 6:03 くらいを、6時過ぎや、6時ちょっと過ぎ
6:30 前後を、6時半
5:50 くらいを、6時10分前、6:10 くらいを、6時10分過ぎなんかも

ここのところ、耳にしていないような?

「今、何時?」なんて、人に聞くことも無いので、
耳にする機会が、減っただけなのだろうか?


「*時前、過ぎ」「*時ちょっと前、ちょっと過ぎ」「*時半」
彼らは、
まだ、生存しているだろうか? 
もし、消されたとならば、その主犯は誰なのか?


これは、大事件だ!(?)

自らが、捜査本部長になり、
「時間の言い方失踪事件 特別捜査本部」
を、立ち上げた!


○聞き込み捜査

さっそく、捜査員(?)を会社に派遣する。

腕時計をしていない、若い連中、
(男:2人、女:1人/20代中半から30代前半)に、
時間を聞いたら、どう答えるか?
聞き込み捜査だ。


ランダムに、10:55など、
0分の5~3分くらい前を見計らって、
「今、何時?」と、聞いてみる。

すると、3人とも、スマホを見て、
「*時、55分です。」
「*時、57分です。」
などと、答える。

期待する言葉は無い。
次に、


数日、間をおいて、
14:05など、0分の3~5分過ぎあたりを見計らって、
「今、何時?」と、聞いてみる。

すると、皆が、スマホを見ながら、
「*時、3分です。」とか、
「*時、5分です。」
のような、答え。

同じだ。
じゃあ、これは?


そのうちの一人に、
15:30に、「今、何時?」と、聞いてみると、

「3時、30分です。」との、答え。
いぶかしげに、
「○○さん、スマホ、忘れたんですか?」
とさえ、言われてしまった。


結果、彼らから、ひと言も、
「*時前、過ぎ」「*時ちょっと前、ちょっと過ぎ」「*時半」
の言葉たちは、出て来なかった。


○捜査本部会議

捜査員から、聞き取り捜査の報告を受ける。

やはり、もはやこの世に、生存しない言葉たちなのか・・
会議室に、落胆の雰囲気が漂う。


『もう一度、聞くが、彼らは何を見て時間を言ったんだ?』
捜査員に問うと、
「彼らは、スマホを見て、時間を伝えています。」

「スマホ?」
会議室が、ざわついた。


『彼らは、スマホの何を見て、時間を伝えているんだ?』
さらに問うと、
「スマホの時間を見ているようです。」
と、捜査員。


自分は、バン!と、机を叩き、スマホの画面を指差す!

『これだ! 犯人は、スマホの画面のデジタル表示だ!』


○本部長の推論

捜査員たちに向かい、ゆっくり話し始める自分。


『人に時間を聞かれたら、普通、すぐに答えねばならないだろう。

すぐに答えるにあたり、デジタルなら、その数字を、
わざわざ、「前」や「過ぎ」や「半」のような、あいまいな言葉で
くくる必要はなく、そのまま言った方が、早く伝わるわけだ。

もっと言うと、それら、あいまいな言葉は、不必要だ。

ただ、それは、意図して排除されたのではなく、
デジタルになったことで、時間の伝え方自体が変わっただけで、
ある意味、自然淘汰なのかもしれんな。


デジタルが、悪いわけじゃない。
新しい時代が、彼らを葬ったのかもしれない・・
よく言えば、使命を終えたと言うことか。

「*時前、過ぎ」「*時ちょっと前、ちょっと過ぎ」「*時半」
彼らは、もう、この世にはいないのだろう。
無情な世の中になったものよ。』


会議室が、感傷的なムードに包みこまれ、
特別捜査本部の解散を宣言しようと、席を立ったところ、


「本部長、待ってください!」
「本部長は、大事な部分を見落としています!」

ベテラン捜査員が、手を上げた!


○ベテラン捜査員の主張

「本部長!」
「本部長は、大事な部分を見落としています!」

「「*時前、過ぎ」「*時ちょっと前、ちょっと過ぎ」「*時半」って、」
「自分たちは、アナログを見て、言ってるんじゃないですか?」

「針表示だと、すぐに正確な分数まで読み取れないっすよね、」
「「前、過ぎ」「半」って、読み取れないところを、早く伝えるための、」
「便利言葉じゃないですかね。」

「お~っ!」
会議室が、再び、ざわつき始めた。


イスに座り直す自分。
『インプットが違えば、アウトプットも変わるってことだな。

「*時前、過ぎ」「*時ちょっと前、ちょっと過ぎ」「*時半」
彼らは、消されたわけじゃなく、
デジタルの波で、すみっこに押しやられただけで、
まだ生きているかもしれない、ということか!』


『よし! アナログの線で、洗い直しだ!』
自分は、捜査員たちに号令をかけた!


○再びの、聞き込み捜査

捜査対象者を、アナログ時計をしている若者に絞り込む。
もちろん、スマートウォッチは論外だ。

アナログの腕時計をしている若者は、時間を、
 どう、読むのか?
 どう、言うのか?


在宅勤務者が多く、参考人の捜索が難航したが、
ひとり、クロノグラフを左手にしている若者を見つけることができた。

「忙しいんです。」
と、逃げようするところを、何かしらの理由をつけ、必死に取り押さえ、
12:55に、尋問だ!


ピッ、ピッ、ピッ、ポーン
12:55

消されたか? 生きているか?  クライマックスが来た!

「今、何時?」 しれっと、聞いてみる。





そしたら、そいつ!


○エピローグ

そしたら、そいつ!





スマホを出して、時間を見た!!

そして、「12時、55分です。」との、答え。

まさかの動と言に、愕然とする、捜査員。


時間の言い方以前に、大きな壁があった。
もはや、時間の確認は、
スマホが、牛耳っている・・

デジタル表示が、犯人?
いや、その背後にもっと大きい黒幕がいる。

スマホ・・


「*時前、過ぎ」「*時ちょっと前、ちょっと過ぎ」「*時半」たちの、
生存を確かめるには、

この、強大で圧倒的な力と、戦うことになるのか!?

自分に、戦慄が走った・・


○次回予告

ベテラン捜査員、
「本部長!」 
「壁掛け時計なら、スマホの力は、まだ及んでいないはずです!」

自分、
『その手があったか! よし、壁掛け時計前で、一斉張り込みだ!』


この捜査、
まだ、続くんかい >_< ;

FLH