7,000円の持ち手
お金。
それは年齢と共に徐々にインフレしていくもの、自分の中での価値が薄まっていくもの。
飲み会では3000円台だと安いな、と思うような年齢になってしまった。
中学生当時の僕は、塾の授業中によく、妄想にふけっていた。それは釣具の、スピニングリールの、持ち手のハンドルノブと言われる部分に対しての妄想。
中学生男子の妄想力は凄まじい。アクリルとアルミとボールベアリングで構成された工業製品を、50分間飽きることなく妄想していたのだ。その握り心地、回転性能、感度…。釣りをしている人にとっても、当時の佐藤少年に共感することのできる人は稀だと思う。
今、そのノブを買おうと思うか?飲み会2回分。今なら、買わないと思う。
しかし当時の自分を励ましたり、勇気づけてくれたのは間違いなくそのノブをはじめとした魅力的な工業製品であり、あの頃のときめきは間違いなく僕の血肉になっているはずだ。
そんな仕事をしたいと思った。