2/5 日食なつこであって日食なつこでない新曲「風、花、ノイズ、街」

日食なつこの新曲「風、花、ノイズ、街」が2/5にリリースされた。
昨年放送した1期ローカル編の主題歌"appetite"に続き、ドラマ「こんなところで裏切り飯」の2期全国放送編のOPとなっている。



第一印象で「かなりバンドだ!」と感じる。
ミドルなビートは歌詞の景色のようにドライブに合うこと請け合い。
またいい曲が増えたなーアルバムが楽しみだなーなんて軽く考えていた。

しかし重大な違和感に気付いてしまったのだ。




イントロのはじめにピアノがない。

しめて8小節分、17秒までピアノが入らない。

これはえらいことですよ。



日食なつこの楽曲はほとんどの曲で最初の音からピアノが鳴る。
ピアノ弾き語りアーティストとして名刺代わりの音だし、そもそもピアノだけでギターとベースの役割をこなせてしまうので、水流のようにピアノとドラムのみの構成を行える。

もちろんある程度までピアノが入らないのは「環礁宇宙」などもあるが、ギターリフやビートが刻まれる中ピアノだけが入らないのはこの曲しかない(はず)。

前述したように、バンドサウンドが鳴る中でピアノが不在なのは今までからすると明らかに異質。



この曲は「日食なつこ的アジカン/くるりロック解釈」と感じた。

ミドルビートとリフの雰囲気からしてこの2バンドなのかなあと思って検索したら、答え合わせかのようにJ-Wave"TOKYO UNITED"の名物カバー企画で両バンドを候補にしていたのを見つけた。



これがイマの日食なつこのモード、それが色濃く表れた曲と思う。

それを理解するには「日食CREW」のこと、ならびにこの曲に名前がつく前"k"と呼ばれていた頃を記して補助線を引きたい。



2023年のライブツアー「蒐集大行脚」より、盟友ドラマーkomakiに加え、Eveやウカスカジーをはじめとした様々なアーティストのレコーディング/ライブに参加するギタリスト沼能友樹、そしてマスロックにおける孤高の存在"downy"のベーシスト仲俣和宏の、のちに「日食CREW」と名のつく4名でのバンド構成が固まった。

そこからエリア未来・エリア現在までこのバンド編成を深化させてきたが、それにあたって大きな役割を果たしたのが「エリア未来」。


『蒐集大行脚』から「エリア現在」までの2年くらいの中で、一番考えたことが日食CREWという形態をどうしていくのか、ということでした。(中略)あの3人と一緒に音を出すのが凄く楽しくて、もうちょっと深めるために何をしようと考えた時に、本当にその辺のスタジオでいいので、4人だけで集まって一から新曲をやってみたら何かが起きる気がしたんです。それで始めたのが、「エリア未来」で演奏する楽曲のアレンジ作業だったんです。

https://realsound.jp/2025/01/post-1909009.html



全て未発表の10曲のみで構成された、15周年企画にしてその先の未来を見せるライブ「エリア未来」。水流もログマもない、本当にこの10曲だけ。

そして披露される曲には、完成した順番にa,b,c...と仮初の名が付けられていた。
今回タイトルがついた"k"はアルファベット11番目。
「エリア未来」を準備するにあたり"i"が暗すぎてライブ向きじゃないために急遽作られた、つまりライブを意識しつつ日食CREWとしての化学反応を最大化させた最新曲だ。


ふたつの補助線を引いてみると、この曲の違和感がすっと解消されて、日食CREWとしての歩んできた道のりを感じることができた。

バンドとして日食CREWを作り上げた2年間がこの曲に大きく現れている

イマの日食なつこだから、この違和感すらも日食なつこだと飲み込めた。

そして、次作のアナウンスにて言及された「一念発起」の先の景色が少しだけ見えたようにも思えた。




5月にリリースされる新譜「銀化」は、ベストアルバムに収録された"0821_a"と「風、花、ノイズ、街」を含む、エリア未来にて披露された10曲が収録される予定だ。


これから放たれる曲はエリア未来から更に進化、いや「銀化」していると本人は話している。


銀化ガラスってなんだろうと思って調べたら、地中とか海底に凄く長い時間埋めてあったガラスは、化学反応を起こしてガラスの中が層になって複雑な光を反射してプリズムみたいになるらしく、それを「銀化」というみたいなんです。それが「エリア未来」で一度世に晒した楽曲を、もう1回アルバムに入れて出すという今回のアルバムコンセプトに合うんじゃないかと思ってつけました。

https://realsound.jp/2025/01/post-1909009.html


かくいう自分も"k"として聴いた頃には、このようなバックグラウンドを感じさせる曲になるとは思いもしなかった。これが「銀化」か。



エリア未来にて見せた姿がどのように「銀化」しているか、特にエリア現在最終公演でも披露された"h"はどうなるのか。

5月が待ち遠しいが、まずはこの曲とともに春の訪れに備えたい。

いいなと思ったら応援しよう!