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○俺を俺を俺を

ことさらにせまいへやにとじこもって
黒い粒のような文字を念写している
だれも、
彼じしんもが永劫にかえりみることのない
それはかなしい紋様だ

彼はそれを免罪符のようにおしいただき、
値と値のあいだにうずくまる者をわらう
そんなところにおるのが飲み込めず 
その呼吸の根をすら埒外という
彼がこそその鉛の肺で絶え絶えでもあるが
その重さでもって辛うじてこの日々にむすびついてもいる

もとめておくれちいさな木っ端の上
ふみぬくような、愛しいわが家
もとめておくれ木っ端の上
この身が黒く壊死(ネクローゼ)するまで

ちいさな時計台の螺旋を
こつこつとのぼる烈火の脳
細い階段でけずるぶちのあし
赤子もおんなもいっしょくた
おしろいの白をはたきこみ
背嚢のポケットにぎゅうと詰め、
もとめているもとめているもとめている



20160720_f34

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