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○記憶



とおいとおいむかしのはなし
きみとぼくとのくべつもないころ

ほしはひかり
地にふりそそぎ

ぼくらは

いかりともよろこびともつかぬ、
つよいつよい  ふきでるような流動体を

空間いっぱいに  放ちつづけていたろうか

そのすべてをときはなって
この身のうつわはうらかえり
それでもなお
銀河のごとく
放ち続けていたろうか


われわれそのものが星のように
われわれそのものが星のように

銀の砂子をまいて

脈みゃくと  なみうっていたろうか

大地のちからをその身に交通し、
落涙のひとつゆのようなうたを
ひそひそと鳴らしていたろうか

地下のいかりのように、
あかくくろくもえる陽動を、
腹にひそめていたろうか

つよくつよくとんで、
あとあしのちからでもって

ふりかえることなく

駆け抜けていたろうか


われらのからだはわれらのものではない

このうつわに、
あらゆる瞬間を召喚し

投影する

踊り子である


大地をつかみ

太い腰をゆらし、

時と時とをゆききして

境界など理解せぬまま

熱を帯び

とある全体の一部となって

踊り子たちは
慶びの声をあげる

たからかに

たからかに


2011_f34

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