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○ 詩音

29
からだの奥から来たことばを連ねてみています。
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2021年12月の記事一覧

○ひかる

○ひかる

あめあがり深夜

この
あおくふくらんだ木々の葉を
くちびるにはんで

わたしは

この未熟にかたまった喉を
よぞらにひらき

わが内部の

きらめきであるとか
ガラスくずなんかを
いっさいがっさい
おおやけにして

だれのものでもない
なにかおおいなるもののいちぶ
として

せいめいの
祝福のうたをうたう
まぼろしをみる

そういうふうに不可分に所属し
不可分にあなたを愛することができたなら

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○花の咲くえだ

○花の咲くえだ

このえだに
このえだに花を

幹が欲している
この枝にそそぎこまれることを

痩せたなりにあまいこの土壌で
綿ぶとんのようなひびを過ごすなら

かりかりと細るやなぎの枝が
そらのすべてをうめつくすだろう

小骨のごときそのとげを
くる日もくる日ものどもとにさしたてて

けれどもそれをねんごろに
私はかき抱くポーズをとるのだろう

荒波を渡る舟の
決定的な櫂!と眼をつむりさけぶのだろう

このえだに

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○夜の街の

○夜の街の

お酒にほろよい
夜道を帰る

くうきは凍り

ほほも凍り

喉は冴え

耳先はとがる

「眠らない街」といわれる場所もあるけれど

この街は眠る

夜には眼をとじ
ことばをとじて

あおいシーツで
夢をみる

家の子は家におかえり と
棟々に
あかいあかりをともす

見上げれば金銀の星ぼし
幾光年のしろい光

その空にのどをむけて

鎮静のくうきを肺の房におろせば

きみの声がおもわれ

きみの掌

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