マガジンのカバー画像

○ 詩音

29
からだの奥から来たことばを連ねてみています。
運営しているクリエイター

2021年10月の記事一覧

○20191015

○20191015

深い海の底、また底
しろくかがやく糸をひきあげている

結晶は歌い、珊瑚虫の手足ははらはらと散る

ほんの小さな契機かもしれない

針の穴ほどのさかい目が瞬いた

確かなものがそこにあると

私の名は、冬

20191015_f34

○20160924

○20160924

雨はあがり、薄曇り
この歪ましくもなお「標準」であるくらしのなかで
ある朝コウモリが死んでいた
コウモリはこちらにつるりとした背中をみせ
灰色で黒い

細い背骨が浮き出した背中
アスファルトが濡れた朝
彼は死んだ、死んだのだ

私が望んだこと
私がおそれていること
その表裏、細い脊椎

彼は技術であり、及第点だ。

望んで殺した
来るべき時がきた
否が応でもここにある日々の中で、
彼は死に、始まり

もっとみる
○俺を俺を俺を

○俺を俺を俺を

ことさらにせまいへやにとじこもって
黒い粒のような文字を念写している
だれも、
彼じしんもが永劫にかえりみることのない
それはかなしい紋様だ

彼はそれを免罪符のようにおしいただき、
値と値のあいだにうずくまる者をわらう
そんなところにおるのが飲み込めず 
その呼吸の根をすら埒外という
彼がこそその鉛の肺で絶え絶えでもあるが
その重さでもって辛うじてこの日々にむすびついてもいる

もとめておくれち

もっとみる