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○ 詩音

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からだの奥から来たことばを連ねてみています。
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○海を灼く

○海を灼く

誰のためでもない 海がみたい
誰のためでもない 海をやきたい
誰のためでもない 

血脈のあかぐろの
うすぐらくて すこしにおう

みどりの葉ふねを流してみたが
みるみる濁り しんでゆく

あの海をやきたい
この血肉を 忘れるように

燃え上がるに 火照り
炭のように 黒く
ただれのように 膨張し

みにくい粘膜を見せて 
わらう
ひかる

20230926_ f34

○さもなくば変態として

○さもなくば変態として

もしかしたら
私にも
深く考えずに生きることが許されているのかもしれない

もしかしたら
変態して生きること
それそのものが私かもしれない

張り子の中で
どろりとにごる粘弾物質が
私の正体を駆逐する

粘弾物質それそのものが
私自身となり焦土をみる

カラカラに渇いた樹脂のような経営理念が
この世の真理のようなテーマパーク

信じる者だけがお得に買いものできますよ

あかるい窓辺で
静かに冴えた

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○20220818

○20220818

周波数、蝉

茶けた紫陽花

葉脈の網

ルリシジミの飛行音律

ただれた眼に幻惑するような

さびれた夏だ

20220818_f34

○20181025

○20181025

私の日々は小さい
やや起伏に富んでいる

私の日々は小さい
季節の匂いが少しする

私の日々は小さい

となりあうひとがおり

愛しているひとがいる

20181025_f34

○20211006

○20211006

よこしまなこころを 
あるがままとおりすぎ

白い磁器のような
たいらかな日々

しろいうつわにあそぶ
ちいさな鳥のように

音はとまり
風が窓辺の布をゆらし

鳥はてん、てんと
拍子をふんで

嬉しくて踊る
嬉しくて踊る

20211006_f34

○20191118

○20191118

街は破片でいっぱいだ
からだは破片でいっぱいだ
風がつよくて、ちりぢりになる
耳を塞いでしゃがむけれども
尖ったかけらはここにあり
暮らしのルールは遠くラジオの向こうでくぐもっている

生存確認、生存確認
生存確率、適合確率

街には破片がいっぱいだ
積もる話もあるようだ
からだは破片でいっぱいだ
風がつよくてちりぢりになる

20191118_f34

○雨あびてもゆる

○雨あびてもゆる

くろいなまずの
ごむびきの
あまぐつ
草に ぬぎすてて

露に濡れたる
あしうらに
きっ、と踏みしむ青草の

むうむうと草の呼吸はたちあがり

露に濡れたる
てあしや草や、
枝やてあしや葉脈や

ないまぜになるみどりのにくの

むせて鳴くよな喉のおと

すずなりのしずく肩に落ち耳殻にとりつき

そのしゃん、

しゃん、とつめたく

はねとぶようにわらい

(ああ、
そのらんぼうで気高い、
みどりの

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○20210706

○20210706

くらしの風景
それらはうつくしい
うつくしい、と感じて居る

しかしにんげんを人間として受けていない
かたまりであり物体である
せいぜい動くということくらい
いたみがあるやら
怒りがあるやら
よくぼうがあるやらは
ぷいと忘れてうっかりする

いやついぞ忘れないのかも知れぬ
つねづねに腹にあって、
しんに恐れていて、
現実になるをこばむあまりに
認するのをかたく受けないのかも知れぬ
この自身のからだ

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○20210707

○20210707

鏡面を乗り越えたこちらで
曼荼羅を汲み上げているわたし
しずかで確固
日々の質実

とりおとしたり
おどけまわったり
そのうちにも組み上がる船やミュージアム
高く果てない天井から落ちるくうき
みえない館長の顔

積み上げられた罪
灼ききられたロープ
陳腐の棚でひからびる

底の奥底の清水
しろく透きとおる吸気
構築物の隙間を縫うworm
くろがねの?
しろがねの?
白濁の?
水のしたたる?

鏡面

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○20190707

○20190707

あめのふるひ 
ちんでんするくうき
わたぶとんのようにせまく
こきゅうきにのしかかる

あさい、あさい
浅くて鉛
Rクニテキョウブガ鉛

闇迫り
浅くて鉛

雨夜の粒子
方舟の一室
深く沈み
浅くて鉛

20190707_f34

○20190112

○20190112

しずかな雨だ

あたたかい雨だ

灰色だが、空はあかるい

枝えだは黒く硬いが、やがて濡れ、膨らむだろう

窓についた荒い滴の痕跡は

これは今日のものではない

やがて洗い流され、光るだろう

光るだろう

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○20200719

○20200719

ひかるアスファルト

足の向こうにさかさまの私

足の向こうにさかさまの街

その

音の無い

時の無い

私だけの街を

古い魚が泳いでいく

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○20180205

○20180205

何もかもをわるくちにしたわたしは
固く古びたレーズンの姿
きたなくしおれたレーズンの背骨
何もかもをわるくちにして嘆くひとの声をあびれば
吸い殻のごとく黄色の唾液にまみれてにごる夕方

走りだしたいような、こごみたいような鉛の防具
化学薬品で即席にうすいハッピータイム
どうでもよいことにあたかも嘆息するような表情
時計の針にはたくさんの髪の毛がからまっている
ああ、万事が年中無休で休す

その時 

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○20210304-2

○20210304-2

ねぎらいの日々を
皆がくれた

集まるひとたちは
うつくしくも
いびつであり
あたたかだった

誰のためでもない
自分のためだけのおんがくを

いつか
耳そばだてて
熱心に聞いてくれたのだ

歌ってもよく
寝そべっていてもよく
うららかなじかんが
わたしを包んでいた

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