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「まことに小さな国」ではない日本の次の道筋を考える

最近、NHKの坂の上の雲が再放送されています。明治時代から日露戦争での日本海海戦の勝利までを描いたとても内容の濃い良い番組だと思います。ただ、「まことに小さな国が,開化期を迎えようとしている。」という表現が冒頭にでてきます。ですが、実際の日本はそんなに小さな国ではなかったので、そこの認識を変えるとこからこの文書を書こうと思います。

歴史的に見ても強い日本の経済力

日本は歴史的に見ても、決してGDPが小さな国ではありません。西暦1000年頃の世界のGDPランキングにおいて、日本は世界6位に位置していました。この時期、世界の経済は中国(宋)とインドが主導しており、両国が全世界のGDPの約6割を占めていましたが、日本もビザンティン帝国やアッバース朝、コルドバ・カリフ国と並ぶ経済力を持っていました。

確かに、地理的な面積では大国とは言えませんが、文化的、経済的、技術的な影響力においては世界の中でも重要な地位を占めてきました。なので、「まことに小さな国」という表現は、事実ではなく好きではありません。
特に明治維新以降、急速な近代化と産業化によって発展を遂げ、戦後の高度経済成長期には人口ボーナスを活かしながら飛躍的な成長を実現しました。現在、日本は人口減少の時代に入っていますが、これは新たな可能性を生み出す機会でもあります。

長期の世界でにおける国の力では、日本は決して小さな国ではなかった

日本の人口動態と未来への展望

日本の人口は過去1000年間で大きく変動してきました。西暦1000年頃の平安時代中期には、人口は約600万人程度と推定されており、江戸時代には2500万人ほどに増加しました。明治初期(1868年頃)には人口は約3000万人に達し、近代化とともに急速に増加しました。現在の日本の人口は約1億2000万人ですが、今後は減少傾向が続き、2100年には8000万人程度になると予測されています。これは明治初期の約2.5倍に相当し、依然として世界有数の経済大国であることには変わりありません。

「下山の哲学」を取り入れた新たな運営へ

人口減少を迎える日本にとって、これまでの「成長型経済」から「持続可能な質の高い経済」へと転換するのが良いと思います。登山に例えるなら、今は今から山を登る発想ではなく、計画的に美しく下山する時期に差し掛かっています。増田俊男さんが「下山の哲学」という形で考えを述べられているのに共感しています。すなわち、人口が減少するからこそ、限られた資源を最大限に活用し、一人当たりのGDPを高めることで、より豊かで快適な社会を実現する方向へ舵を切るべきです。

日本の人口は、たとえ8000万人程度に減少したとしても、それでもなお世界有数の経済規模を維持することが可能です。明治初期の人口が約3000万人であったことを考えれば、3倍近い人口を持つ未来の日本は、適切な戦略を取れば世界でもトップレベルの生活水準を維持することができるはずです。

大前研一氏が述べているようにスイスのようなクオリティー国家を目指せると良いと思うのですが、日本はまだGDP全体の大きさを拡大しようとしていると思えます。

未来に向けた適正な人口構成と地域再

人口減少を単に「人が少なくなる」と捉えるのではなく、社会全体の構造を再設計する機会とし、地域ごとに濃淡をつけ、平均的な人口密度の低下をただ受け入れるのではなく、戦略的に配置することが必要です。

具体的には、廃市、廃町、廃村を計画的に実施し、社会インフラを効率的に縮小することが求められます。例えば55都道府県の維持ができなくなるだろうという話もでているようです。 鉄道、道路、橋、トンネル、水道などの公共インフラを適切に整理し、維持すべきエリアと段階的に縮小すべきエリアを明確にすることで、行政コストを削減し、持続可能な地域運営を実現できます。もちろん、これは住民や関連している業界から多くの反対がでてくるでしょう。でも明治初期には3000万人でやっていたし、高度経済成長前には山林だった場所だったところに街をつくったけれど、人口減少するなら逆に山林に戻すという流れしか無いように思えます。
 人口が減る以上、現状を維持することはできないので、やめること、捨てること、閉じること、廃止すること、組織も設備も制度をなくすこと、つまり「登山」や「成長」ではなく、「下山」をしっかり見据えて意識と行動を変える必要があります。 これは右肩上がりの成長を前提としてきた今までと全く考え方を変える必要があります。

さらに、高齢者がまだ移動可能なうちに、医療・福祉・商業機能の充実した中核市へと移住を促すことが必要です。これにより、孤立する高齢者を減らし、生活の質を維持しながら、インフラの維持負担を軽減できます。

ただ、人口減少の根本原因はその本質を総括しておく必要があるでしょう。若者の経済力が高まらないこと、子育てとの仕事の両立の話もあると思いますが、なぜ子どもを持たないのか、という本質に切り込んだ議論や、一方、中絶数(令和3(2021)年度の人工妊娠中絶件数は126,174件、前年度+3.3%)の増加もしっかり検討すべき内容だと思います。

未来志向の戦略
人口の減少は新しい仕組みを創り出すチャンスでもあります。
国全体のGDPの規模を諦め、一人ひとりの豊かさを追求する姿勢が求められます。経済の質を向上させ、持続可能な成長を実現することで、世界に先駆けた新しい価値観を発信できると良いです。
次に、どの産業を伸ばし、どの分野を革新するのかを明確にし、止めるものを決め、戦略的な産業育成に舵をきる。今あるすべての産業を維持しようとするのではなく、特に競争力のある分野に力を注ぎ、創造力と技術力を備えた人材の育成を強化すべきです。

安易な移民受け入れは長期の課題を生み出す
人口減少を補う手段の一つとして、外国人の受け入れが議論されています。これを単なる労働力の確保とすると、既に米国や、欧州で顕在化して政治問題化している移民問題を引き起こします。
どうしても受け入れる場合は、政府が日本語教育や日本の生活文化を学ぶプログラムを1〜2年間提供し、その後に適正な評価を経てビザを発行する制度を導入することが必要ではないでしょうか?これにより、日本社会への適応がスムーズになり、多様な人材が日本に貢献できる環境が整います。
さらに、外国人による土地や不動産の取得については、外国人土地法(1925年に制定:外国人・外国法人の日本における土地の権利に関する規定)がきめられましたが、100年たった今、長期的な視点で国益を守る政策を整えることが求められると思います。

日本の価値観を未来へ
 毎日食事ができ、寝る場所があり、安定した仕事や医療、教育があれば、「変えたくない」「維持したい」という考えを持ち易いのですが、今からは変化を必要とする時代なのだろうと思います。
そのために、国家戦略として、産業の選択と集中、地方の活性化、先進国を追いかける形の100年前の教育システムの改革を進めることが不可欠です。

まとめ
日本が輝く国となるためには、単なる人口維持や経済成長ではなく、従来の価値観を見直し、持続可能で活力ある社会を築くための「下山の哲学」への意識改革をしたいです。計画的な社会インフラの縮小、地域の再編、教育の見直し、我々の子孫が安全に生きていけるような変更をリードしましょう。

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