
罪と母 - 母親は息子の殺人にどう関わったのか? -
☝︎ この記事は、上の記事を加筆修正したものとなります。
よろしければ上の記事も読んでいただけますと嬉しいです。
考察をお読みになる前に
この文章を読んでくださりありがとうございます。
ここで書いているものは、あくまで私の考えを述べたものとなります。
決して「絶対にこうだ」と押しつけたり、
他の方の考察を否定したりするものではありません。
ひとつのエンターテイメントとして、
楽しんでいただけましたらと思います。
まえがき
こんにちは。みなさん。
日本の冬はまだまだ寒いですね。
わたしの周りではインフルコロナ報告をするひとが後を絶えません。
あんまりにも寒いので長ねぎのお味噌汁を片手にこのまえがきを書いております。
みなさまもお体に気をつけてお過ごしください。
そうそう。
待ちに待ったMILGRAM第三審がもうじき始まろうとしていますね。
「スーパーヘル」と謳われた第三審、どうなるのでしょうか。
カウントダウンも始まったので緊張が走ります。
なんとかして乗り越えていきましょう。
それでは、本題に入ります。
監獄ミルグラムの囚人番号1番・櫻井遥さん。
彼の罪を紐解くうえで『お母さん』は無視できない存在ですね。
そんな彼の『お母さん』は、作中でとある少女に代わります。
その少女とは囚人番号4番・楠夢羽さん。
どうしてムウさんがハルカさんの母親となり得たのでしょうか?
これらの疑問を解消するため、
「実の母親」と「新たな母親」との比較を通じて、
『お母さん』がどのようにハルカさんの罪に関わっていたのかを考察していきたいと思います。
かなり長編となりますが、最後まで読んでいただけますと嬉しいです。
1. 実の母親
まえがきでも書いた通り、
ハルカさんの曲や尋問中で語られる言葉の端々に登場する、
「実の母親」の存在は重要となっています。
この章では、
①実の母親の容姿
②実の母親の言動
③実の母親が息子に与えた影響
この3点について書いていきます。
あっそうだ。
「実の母親」は少し堅苦しいので、
ここから先は「お母さま」と表記しますね。
よろしくお願いします。
① 容姿

上の写真の人物は、ハルカさんのお母さまと思われる女性です。
この写真を見てみますと、
お母さまの外見は、特徴として以下の6つの点が挙げられます。
① 茶髪のボブヘア
② 困り眉
③ 垂れ目
④ 平行二重
⑤ 青みがかった瞳
⑥ 左側に流れる前髪
いったん、息子のハルカさんと見比べてみましょうか。


似てますね。
すっごい似てる。
具体的にどの辺がハルカさんと似てるかというと、
先ほど挙げた特徴6選の、②③④⑤⑥(①以外)です。
やはり親子ですね。
血の繋がりを感じます。
② 言動
ここでは「弱肉共食」「全知全悩」の2曲から考えられるお母さまの言動について書いていきますね。
ただし、お母さまは、MVやハルカさんの話の中でのみ登場する人物であるため、正確な言動は分からないのでここで書くことはすべて推測となります。
決してお母さまに対するヘイトコントロールの意思はないので、
そのことを念頭においたうえでお読みください。
第一審「弱肉共食」
弱肉共食(日本語歌詞)
どうして はなれてくの?
ねえどうして ぼくのせいなの?
言おうとした言葉が 「ひきょうだね」ってぼくをわらう
どうして こわれてくの?
ねえどうして 変わらないでよ
言おうとしてやめたら 「ダメだね」っておこるくせに
だれでもできること ぼくにもできたらな
ちがってたハズの未来は 不平等にこいをした
悲鳴をしていた 悲鳴をしていた
愛される弱者になりたかった
否定をしていた 否定をしていた
どうしても確かめてみたかった
あっはっは ぼくに気付いて
あっはっは だれか気付いてよ
間ちがっていたのはぼくだった
そう、ぼくだったんだ
いいよ ぼくのせいだ
もういいよ ハズレだから
昨日をくり返して あきらめって大事だけど
いいよ よくないけど
もういいよ 思ってないけど
知ろうとしたところで またイヤって顔をするなら
くるってるって ほめてくれた
ありがとうがんばるよ
どれくらい続けたらぼくはヒトになれる?
ぎせいをしていた ぎせいをしていた
ぼくのこどくは望まれていたんだ
下降をしていた 下降をしていた
スタート位置がちがうまま始まった
あっはっは ぼくに気付いて
あっはっは だれか気付いてよ
間ちがっていたのはぼくだった
そう、ぼくだったんだ
ひとつふたつ重ねたって またすぐくずされて
いないもの いらないもの どこかで生きてるの?
悲鳴をしていた 悲鳴をしていた
愛される弱者になりたかった
否定をしていた 否定をしていた
どうしても確かめてみたかった
ぎせいをしていた ぎせいをしていた
ぼくのこどくは望まれていたんだ
下降をしていた 下降をしていた
スタート位置がちがうまま始まった
あっはっは ぼくに気付いて
あっはっは だれか気付いてよ
間ちがっていたのはぼくだった
そう、ぼくだった
あっはっは ぼくに気付いて
あっはっは だれか気付いてよ
間ちがっていたのはぼくだった
そう、ぼくだったんだ
弱肉共食(英語歌詞)
Tell me, why are you drifting away from me?
Tell me, why do you say it’s my fault?
The words I tried to say were “You’re unfair”, and those words thought how pitiful I am
Why is it breaking?
Tell me why? Please don’t change
If I tried and couldn’t say it, you would get angry at me and say “You’re hopeless.”
If only I could do what anyone else could do
The right future unfairly chose the wrong me
I cried, I screamed
I wanted to be a pitied and loved weakling
I was in denial, I was in denial
I just had to make sure
Ahaha, Please notice me
Ahaha, Someone please notice me…
I was wrong
Yes, it was me
It’s fine, it’s all my fault right?
It’s enough, I am a “disappointment”
I am always repeating yesterday, though it’s important to know when to give up
It’s fine, though it’s really not
It’s really fine, though I don’t really think so
When I tried to understand it, you’ll make that disappointed face again
You praised me by saying “You’re crazy.”
Thank you, I’ll do my best
How many more times do I have to do this so I can be human?
I’ve become a victim, I’ve become a victim
My loneliness was desired
I was falling, I was falling down
My life started in a wrong spot
Ahaha, Please notice me
Ahaha, Someone please notice me...
I was wrong
Yes, it was me
Even if I keep trying it, it’s broken right away
The things that aren’t here, and the unneeded things
Is it still living somewhere?
I cried, I screamed
I wanted to be a pitied and loved weakling
I was in denial, I was in denial
I just had to make sure
I’ve become a victim, I’ve become a victim
My loneliness was desired
I was falling, I was falling down
My life started in a wrong spot
Ahaha, Please notice me
Ahaha, Someone please notice me...
I was wrong
Yes, it was me
Ahaha, Please notice me
Ahaha, Someone please notice me...
I was wrong
Yes, it was me
(英語歌詞の文字に何故か色がついてしまっていますが、お気になさらないでください)
「弱肉共食」の歌詞を見てみますと、
お母さまは以下のような行動を取っていたと推測できます。
◎ ハルカさんとの間に距離をおく
◎ 何らかの出来事(詳細は不明)をハルカさんの責任だと言う
◎ ハルカさんに対する態度が変化し、それまでの優しさが失われる
◎ ハルカさんが「不公平だ」と言いかけてやめると、それを受けて「ダメだね」と叱責する
◎ ハルカさんが何か(詳細は不明)を知ろうとすると、再び失望したかのような顔をする
◎ ハルカさんの何らかの行動(動物殺害?)を「狂ってる」と評する
日本語歌詞には「言おうとした言葉が「ひきょうだね」ってぼくをわらう」とあります。
この部分について、母親がハルカさんに対して「卑怯だね」と言ったようにも読めますが、
英語歌詞では“The words I tried to say were “You’re unfair”, and those words thought how pitiful I am”と記されており、
「卑怯だね」はハルカさんが自分に向けたものであると解釈できます。
そのため、上記の項目には含めていません。
第二審「全知全悩」
全知全悩(日本語歌詞)
置いていかないで 側にいたい
ぼくはどうしてぼくになったんだ 痛みを数えて
「期待はずれ」と 口ぐせみたいに
名前を呼んでくれやしない
ちがうだれかと くらべられていた
ぼく以外には 優しくするのにな
またふり向かせなきゃ
間ちがいじゃないよ 間ちがいじゃない
デキソコナイだとわらわないで
ねえいつかのようにぼくをだきしめてほしい
置いていかないで 側にいたい
ぼくはどうしてぼくになったんだ 痛みを数えて
期待はずれになりたくなかった
このなみだはだれのせい?
ボタン一つで生まれ変われたら
次はあなたの当たりになれるかな
またふり向かせなきゃ
死にたくないよ 死にたくない
夢食われないように生きたほうが
うばうことであたえられるほうが
これしかないの これしかない
ぼくはどうしてゆるされたんだ
ママ見て ほらぼくすごいでしょ
「なでなでしよう、イイコだね」
大きく羽ばたく遥かな夢を ぼく、かなえるからね
間ちがいじゃないよ 間ちがいじゃない
デキソコナイだとわらわないで
ねえいつかのようにぼくをだきしめてほしい
置いていかないで 側にいたい
ぼくはどうしてぼくになったんだ 痛みを数えて
間ちがいじゃないよ 間ちがいじゃない
ボタン一つで生まれ変われたら
次はあなたの当たりがいいな
全知全悩(英語歌詞)
Don’t leave me alone, don’t leave me
Why was I born like this? Why does it hurt so much?
Instead you kept calling me “hopeless”
You never called me by my name
You were always comparing me to someone else
You were always generous, except towards me
I will definitely make you love me again
I wasn’t wrong, I wasn’t wrong
Please don’t say that I am a loser
Hug me again as you once did
Don’t leave me alone, don’t leave me
Why was I born like this? Why does it hurt so much?
I just wanted to be your good boy
Why am I crying again?
If with one click, and I can reset everything
Can I be your favorite this time?
I will definitely make you love me again
Don’t wipe me out, don’t wipe me out
I just want to be your good boy
I will keep on killing to be a good boy
I can’t stop, I can’t stop
Am I still INNOCENT?
Mommy, look,
I’ve done great
“There there, my good boy!”
I promise to make my dreaMU come true
I wasn’t wrong, I wasn’t wrong
Please don’t say that I am a loser
Hug me again as you once did
Don’t leave me alone, don’t leave me
Why was I born to be me?
Why does it hurt so much?
I wasn’t wrong, I wasn’t wrong
If with one click, and I can reset everything
I want to be your favorite
(英語歌詞の文字に何故か色がついてしまっていますが、お気になさらないでください)
「全知全悩」の歌詞からは、以下の行動を取っていたと推測できます。
◎ ハルカさんを1人にする、置いてけぼりにしていた
◎ 日常的にハルカさんに対し「期待はずれ」という言葉を投げかけていた
◎ ハルカさんの名前を呼ばない
◎ ハルカさんを他の人物と比較し、劣っていると感じさせる発言や態度を取っていた
◎ ハルカさん以外の人物には優しく接していた
◎ ハルカさんに「デキソコナイ」と直接的に否定的な言葉を向けていた
◎ かつてはハルカさんを抱きしめ、愛情を示していた時期があった
「弱肉共食」に比べて、より具体的に鮮明に描かれていますね。
「期待はずれ」「デキソコナイ」といった否定的な言葉を日常的に受けたことは、ハルカさんの自己肯定感に深刻な影響を与えたと考えられます。
実際に、ハルカさんは尋問中の態度や紙尋問に書いた内容から自己肯定感の低さを窺えます。
さらに、名前を呼ばれなかったり周りの人物たちと比較されたりした経験は、彼に存在を否定されているかのような感覚を強く植え付けたといえるのではないでしょうか。
かつてお母さまは、ハルカさんに愛情を注いでいたと思われる描写がいくつか「全知全悩」以外にも存在します。
この愛情の喪失が、現在の態度との対比を際立たせ、ハルカさんがその変化に対して混乱や傷つきを感じているといえるのではないでしょうか。
③ 櫻井遥に与えた影響
第二審ボイスドラマ「弱者の変貌」の中で、ハルカさんは、殺害動機について、次のように語っています。(2分30秒辺り)
ずっと不安だったんです。
僕は僕みたいな価値のない人間が注目を集めるために人を殺した。
きっと、僕より価値と未来のある人間を。
別の場面では、「お母さんの大切なネックレスを盗んでも見向きもされなかった」「お母さんの世界から僕は消えた」ともおっしゃっています。
これらの発言から、お母さまへの強い執着心が一連の犯行の根底にあったと考えられます。
さらに、「弱肉共食」「全知全悩」の歌詞を通じて、ハルカさんがお母さまに認めてもらうために動物虐待や殺人を犯したことが読み取れます。
「弱肉共食」では「くるってるってほめてくれたありがとうがんばるよ」という歌詞があり、
「全知全悩」では、「うばうことであたえられるほうが(I will keep on killing to be a good boy)」という歌詞が綴られています。
これらは、先ほども書いたように、ハルカさんが良い子になるために罪を重ねたことを物語っているといえます。
2. 新しい母親
まえがきでも書いたとおり、作中でハルカさんの『お母さん』は、楠夢羽さんに代わっています。
この章では、
①ムウさんの容姿
②ムウさんのハルカさんに対する言動
③ムウさんがハルカさんに与えた影響
この3点について書いていきます。
① 容姿

ムウさんの可愛さは挙げれば挙げるほどキリがありません。
しかし、ここではお母さまのときと同様に、外見の特徴を挙げていきますね。
① 日本人離れしていて透明感がある
② 短髪
③ 桃色?ブロンド?の髪
④ 翡翠の瞳を持つ
⑤ 困り眉
⑥ まつ毛が長い
⑦ 吊り目気味
⑧ 二重
②⑤以外は、ハルカさんのお母さまと特徴があまり合致していませんね。
このことから、少なくとも、ハルカさんは容姿でムウさんを『お母さん』と言ったわけではないと考えられます。
② 言動
ムウさんのハルカさんへの言及は、紙尋問でもボイスドラマ内などでも多くあります。いっしょに見ていきましょう。
第二審ボイスドラマ「Queen B」
〖エス〗
そういえばハルカとずいぶん仲が良いようだな
〖ムウ〗
……? うんミルグラムの中では1番仲良しだよ
(中略)
〖ムウ〗
ハルカくんはとっても優しいんだよ。何言っても許してくれるし言うこと聞いてくれるし。ムウにとってとっても居心地がいいんだよ。
〖エス〗
それは友達なのか?
〖ムウ〗
なんで? 友達だよ? ハルカくんもそれで喜んでくれてるわけだし、お互い良いことしかないもん。
〖エス〗
友達がいない僕には分からんが、それはていのいい搾取ではないのか?
〖ムウ〗
搾取………? ちょっとよく分かんないけど、ムウだって服選んであげたりしてるしこの前いらなくなったヘアピンお下がりであげたし、どちらにしてもムウもハルカくんも看守さんが赦したことなんだし、なにか文句言われる筋合いもないと思うなー
(中略)
〖ムウ〗
あっでもムウを赦さないとハルカくん死んじゃうからやめた方がいいよ
〖エス〗
…………!!
(鐘の音)
〖エス〗
お前も把握済みかあの妄言を
〖ムウ〗
ハルカくんがムウに言ってくれたの。だから安心してくれって。嬉しかったなー。友情を感じたよ。
〖エス〗
知っていながら止めないのか? ハルカを……
〖ムウ〗
なんで? ハルカくんがそうしたいっていうんだから仕方ないんじゃない?
〖エス〗
友人だというのに。
〖ムウ〗
友達だからでしょ。友達がしたいってことをさせてあげるのが友達でしょ? そんなの友達じゃないーとかって言いたいの? じゃあどんなのが友達? お互いが良いことがあるから一緒にいるんでしょ?
〖エス〗
ハルカに良いことがあるというように思えない。
〖ムウ〗
そんなのハルカくんにとって良いことなんて看守さん分かることじゃないでしょ。
〖エス〗
……手強いなお前
〖ムウ〗
よく分かんないよ看守さんが言ってること。ハルカくんが何をしようとハルカくんの自由だし。ムウは悪くない。ムウがお願いしたわけじゃないし。
〖エス〗
なるほどね。そうなんだろう。お前は何も言わない。ただそうあるだけで。周囲が意思を汲んで行動してくれる。そうか。つまり生まれながらの女王。あ、いや言葉ではなくフェロモンで周囲を操る、さながら女王蜂か。
紙尋問



MILGRAM公式サイトのボイス(第二審の03)
「前はとっても怖かったけど、今はとっても気が楽だよ。それに……ハルカくんが優しいんだよ。なあんでも言うこと聞いてくれるし。」
これらをまとめると、ムウさんはハルカさんに以下のような行動を取っていたことが分かります。(決してムウさんにもヘイトコントロールの意思はないので、そのことを念頭においたうえでお読みください)
◎ ミルグラムの中で1番仲良くしている
◎ ハルカさんの服を選ぶ
◎ ハルカさんにいらなくなったヘアピンをあげる
③ 櫻井遥に与えた影響
第一審において、ハルカさんとムウさんのお二人は「赦す」という判決を受けます。
この判決は、両者の心理状態や関係性を大きく変えていくこととなります。
ハルカさんは、自己肯定感が高まり被支配欲求が表面化するようになり、ムウさんは、第一審で抑圧されていた生来の気質を取り戻します。
この両者の関係は、ジャッカロープさんによって「需要と供給」「女王と奴隷」と表現されています。(4分00秒辺り)
また、ハルカさんにとってムウさんは、褒めて見つめて自分を必要としてくれる『お母さん』であり、ムウさんを喜ばせることを最優先に動くようになります。
一方でムウさんは、ハルカさんを「何でも言うことを聞いてくれるお友達」としてハルカさんを慕うようになります。
一見するとちょっぴり仲が良すぎる友人関係のようにも見えますが、その実は、互いが互いの足りないものを埋め合うことで成り立っている、歪んだ共依存関係なのです。
やがて、この二人の結束力は強度を増し、ハルカさんは「ムウさんを赦さないと死ぬ」と看守に迫るようになります。
さて、
ここまで膨らんでしまった共依存関係ですが、
ムウさんはハルカさんに何を与えたのでしょうか。
先ほど、「②言動」の項目で述べたように、ムウさんはハルカさんにお洋服やヘアピンを挙げていたとおっしゃっています。
それとは別に、ハルカさんはムウさんから大切なものを与えていたと考えられます。それはいったい何なのでしょうか。
第一審の判決を経て、ハルカさんにとってのムウさんは「お母さん」となり、彼女の存在がハルカさんに存在意義をもたらすこととなります。
それまでは自分に価値を見出せなかったハルカさんですが、ムウさんが見つめて褒めて必要としてくれることによって、自信を持つようになります。
これによって、ハルカさんは第一審とは打って変わって明るく振る舞うようになります。
ムウさんがハルカさんに与えたものそれはすなわち、「自己肯定感」ではないでしょうか。
変化は彼の筆跡にも現れるようになります。
以前は字の薄さが目立っていましたが、第二審では濃くなっています。


文字の量に注目すると、第一審では平均して9.53文字書いており、第二審では約2倍の21.4文字書いていることが分かります。
このように変化したのは、ムウさんとの交流を通じて、ハルカさんが内面を言葉にする力を得たためだと考えられます。
ムウさんの影響力はこれだけではありません。
全知全悩の中に“I promise to make my dreaMU come true”という歌詞があります。
なんということでしょう。
ムウ(MU)さんが歌詞の中に入っています。
また、“I just want to be your good boy(夢食われないように生きたほうが)”と似たような英語歌詞に“I just wanted to be your good boy(期待はずれになりたくなかった)”があります。
一見すると同じ歌詞ですが、よく見ると1単語だけ違います。探して見てください。
はい。
“wanted”が“want”になっています。
これはおそらく、ミルグラムでの出来事が現在起きていることだと考えると、『お母さん』がお母さまからムウさんへ変わったことによって、「ムウさんの良い子でいたい(I just want to be your good boy)」となったのではないかと考えられます。
このことからも、ハルカさんの中でのムウさんの存在感の強さが分かります。
3. なぜ楠夢羽は櫻井遥の母親となり得たのか?
ハルカさんは、弱者の変貌でムウさんについてこのように語っています。
そうか……そうか。
お母さんは1人しかいないもんな。
僕を見てくれなかったお母さんは、お母さんじゃなかった。
(中略)
ムウさんは僕を褒めてくれるんです。
ダメな僕を褒めて認めて見つめて、そして必要としてくれる。
今の僕があるのはムウさんのおかげなんです。
ここからハルカさんの求める母親像が、
「自分を褒めて認めて見つめるだけでなく必要としてくれる人物」であることが分かります。
外の世界から見てもらえなかったハルカさんにとって、ムウさんはハルカさんが心の底から求めていた存在であり、だから、「ムウさんはお母さんなんです」と言ったのだと考えられます。
4. 母親は息子の殺人にどのように関わったのか?
さて、ここでタイトル回収です。
お母さまはハルカさんの殺人にどのようにして関わっていたのでしょうか。
まずはハルカさんの殺害動機について見ていきましょう。
ハルカさんは弱者の変貌の中で動機についてこのように語っています。
〖ハルカ〗
はい。ずっと不安だったんです。
僕は僕みたいな価値のない人間が注目を集めるために人を殺した……
きっと僕よりも価値と未来のある人間を。
でも、やっぱり僕は何も間違ってなかった。
あの子を殺したのは間違いじゃなかった。
何も不安に思うことは無かったんです。
(中略)
〖ハルカ〗
間違いな訳ない!
だって、ああでもしないと僕は誰にも見てもらえなかったんだ
〖エス〗
注目を集めたくて人を殺した
誰にも愛されなかったお前が
〖ハルカ〗
そうだよ!
だって、僕がただ出来の悪い人間のままだったら興味を持ってくれないんだから
〖エス〗
だからって人を……!
〖ハルカ〗
僕だけ不公平じゃ無いか!
僕だけ生まれた時から何にもできなくて、周りと同じことができなくて、
お母さんは僕を諦めて、お母さんの世界から僕はいなくなった。
〖エス〗
そのことが人を殺すことが正しいと思っているのか?
〖ハルカ〗
知らないよ!
どうすればよかったっていうんだ。
お母さんの大事なものを盗んだって興味すら持ってくれなかった。
僕は僕を諦めたままいればよかったっていうの!?
僕だけ損すればよかったって言うのかよ……
ハルカさんは、殺害動機として「注目を集めるため」であったと語っています。
また、全知全悩の英語歌詞の中に“I just wanted to be your good boy(期待はずれになりたくなかった”“I will keep on killing to be a good boy(うばうことであたえられるほうが)”というものがあります。
殺害動機としては「注目を集めるため」だけではなく「良い子になるため」も入っていると考えられます。
しかし、不思議なお話です。
一般的に、「良い子」と「殺害」は相容れない関係であるはずです。
どのようにしてハルカさんの中で「良い子になること」と「殺害」が結びついたのでしょうか?
今から考えられる仮説を書いていきますね。
ここから先は、一種のエンターテイメントとして読んでいただけますと幸いです。
よろしくお願いします。
~「良い子」と「殺害」が結びつくまでのステップ~
① 見てもらうために努力を重ねるが、お母さまは振り向かない
② 自己肯定感が下がり、自信を失うようになる
③ ハルカさんにとって良い子とは「自分にできないことを何でもこなせる存在」と思うようになる
④ なでなでするくらい大好きな犬を殺すことは、その当時のハルカさんにとって到底できないことだった
⑤ 今の自分にはできないことをできれば良い子になれるのではとないかと考える
⑥ 犬を殺害してようやくお母さまを振り向かせることに成功する
尋問で「僕だけ生まれた時から何にもできなくて、周りと同じことができなくて、お母さんは僕を諦めて、お母さんの世界から僕はいなくなった」と語るように、どれほど努力をしてもハルカさんは「お母さまの良い子」になれませんでした。
頑張りを否定されるたび、ハルカさんの自己肯定感は低くなります。
そして、だんだん「お母さまの良い子」とは、自分にはできないことを何でもこなせる存在であり、遠い存在と思うようになります。
そんな幼いハルカさんにできないことの一つとして「生きものを殺すこと」があったとします。

笑顔で触れ合うぐらい大好きな犬を殺すことは、「優しい」彼には到底できないことです。
しかし、「お母さまの良い子」であれば、そんな行為も平然とやってのける。
幼き日のハルカさんは「それ」を実行し、思惑通り、お母さまを「振り向かせる」ことに成功します。
見てくれたということは、良い子になれたという証。
「狂ってる」という評価はハルカさんにとっては褒め言葉も同然になります。
彼はそう考え、この行為を繰り返していくこととなる……。
このような流れから、ハルカさんの中で「良い子=生きものを殺すこと」という歪んだ思考が形成されていったのではないかと考えられます。
5. おわりに
まとめ
ここまでお疲れさまでした。
これまでに述べた内容をまとめていきます。
はじめに、「お母さんは良い子でないと自分見てくれない」という考えが、一連の惨劇に繋がります。
「弱肉共食」「全知全悩」の歌詞、第二審ボイスドラマでの発言から、お母さまはハルカさんに対して無視や拒絶のような態度を取ることが多く、さらに「期待はずれ」や「デキソコナイ」といった言葉を投げかけていたことが推測されます。
そして、「お母さまに見てもらいたい・認めてもらいたい」という欲求が、彼の行動をエスカレートさせたと言えます。
動物虐待や殺人といった行為は、本来「良い子」とは結びつかないものですが、母親無しでは生きる手段が限られていたハルカさんにとっては、命綱として機能してしまっていたといえます。
ハルカさんは、自分では成し遂げられないと思う行動を敢えて実行し、「狂ってる」という母親の評価を得たことで、ようやく注目されたと感じ、この行為を繰り返していったのではないかと考えられます。
お母さまとハルカさんの罪は密接に関わっているといえますが、お母さまが彼に犯罪をするように命じたのではありません。
お母さまの行動と過度な緊張下で作られたハルカさんの焦りが、罪を作ったと考えられます。
あとがき
突然ですが、加筆修正していく中で思い出したことがあったので共有させてください。
以前FFさんとスペースをした際に、ハルカさんのお母さまの話が出ました。
そのFFさんはこう語ります。
「この世には2種類のお母さんがいる」
(決してローラ●ドさんの前フリではございません)
そのFFさんがおっしゃる2種類のお母さまとは、
①優しく全肯定してくれるお母さん
②厳しくも正しい方向へ導いてくれるお母さん
前者はムウさん後者はもしかするとお母さまではないかとその方は語ります。
私ははじめ、お母さまは心理的虐待に近しいものをしていたのではと考えておりました。
しかしながら、ミルグラムの心象風景は囚人さんから抽出されるものになります。
もし事実と異なって映し出されていたら?
みなさまはお母さまをどのように考えていらっしゃいますか?
よろしければコメント欄などで教えてください。
最後に、もうじき第三審が始まろうとしていますね。
果たして第三審で真実はすべて明らかになるのか。
そしてその真実は私たち自身の力で見極めなければならないのか。
緊張はずっと続きそうです。
長くなりましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。
それでは。