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今話題の自主作成映画『侍タイムスリッパー』を観てきた

安田淳一監督の自主製作映画『侍タイムスリッパー』

2024年8月に池袋シネマ・ロサの1館のみで上映が始まった映画『侍タイムスリッパー』が大ブレイク。いまや上映映画館が全国326館に拡大しています。そんな話題の映画をご縁があって鑑賞してきました。メガホンをとったのは、安田淳一監督。「拳銃と目玉焼」「ごはん」に続く3作目のインディーズ映画(自主製作映画)です。

スッキリした

映画を観終わった感想を一言で言うと「スッキリした」です。フリーランスになって人と会わず、ほとんどの時間をPCの前で過ごす私は、しばらく感情を大きく揺さぶられる機会を喪失していました。これでは人生寂しいと、2025年の目標に「来年は月1回の映画鑑賞をするぞ」と自分に課したそのタイミングで𝕏仲間のみんみんさん( @am1n0n0 )にこの映画を紹介してもらったのです。むちゃくちゃ熱心におすすめされたので、ついついその気になってしまいました。どれどれいったいどれほど感動させてくれるのかな、と近所の映画館へ(2日後)。上映していたのは満室で100名強が収容できるスクリーン、およそ20人の観客でした(平日火曜日の朝の上映)。ストーリーは山口馬木也が演じる主人公の会津藩士高坂新左衛門が江戸時代から現在にタイムスリップするという、まるでバックトゥザフューチャーを想起させるあるあるの展開かと思いきや、笑いあり、涙あり、人情あり、人生訓ありの感情デパート地下1階。味わい深いお惣菜(感情)を堪能させていただきました。

笑いあり

ストーリーの随所にお笑い要素が仕掛けてあります。現在にタイムスリップした高坂新左衛門が生まれて初めて口にするケーキ、その時見たテレビに感情を奪われ涙する姿(鼻にケーキが…)、陣師関本(峰 蘭太郎)に弟子入りしたものの「斬られ役」になりきれずに師匠を知ってしまう高坂新左衛門、「斬られ役」の師匠関本が見事に「切られて」しまうシーンなど。

涙あり

高坂新左衛門が台本で、会津藩が新政府軍に完膚なきまでに叩きのめされたことを知り涙する姿、そして(この映画のクライマックスにもなっているのですが)高坂左衛門と風見恭一郎の決闘シーンが終わった直後に一発ビンタをくらわした山本優子助監督(沙倉ゆうの)が高坂にいった一言。まるで母親がヤンチャな子どもに言い聞かせるような助監督山本にキュン。
オジサンならこの感覚わかってくれるはず。

人生訓

いま私がだいじにしていることは目の前の仕事に一生懸命になること。ネット社会の現在では目移りしがちな情報に満ち溢れています。映画の中で風見恭一郎が教えてくれたのは「互いの想いは違えども、一生懸命生きたことには違いがない」。昨年以来フリーランスとして生きる覚悟を決めた58歳の私にこれほど勇気を貰える語りはあろうはずはないのです(イチロー風)。

なんだ?この共感は

高坂新左衛門は不器用で実直、こだわりが強く、使命感にかられた使命感に駆られた中年男性。現在へのタイムスリップを転機に武士から時代劇の「斬られ役」として新たな人生を歩み始めます。観ていて気がついたのは自分のキャリアとの親和性。バブル世代の会社員として真面目に仕事に打ち込んで57歳の時に早期退職して新しい人生に舵を切った自分と激しく共鳴しました。まさに充実のセカンドライフを実現しようとする男の姿です(ご興味のある方は私の運営するサロン『早期退職研究所』へ)。

限られた資産を言い訳にしない

安田監督は、この映画を製作するに当たって、自家用車を売却し、2,000万を自腹で支払い、文化庁の助成金を使って2,600万円を調達し、結果、自分の銀行口座の残高はわずか7,000円だったそうです。何もない状況で、総勢10名ほどのスタッフで制作、安田監督は車両手配からチラシ作成・パンフレット製作まで11役以上を1人でこなしたという。助監督役で出演しているヒロイン役沙倉ゆうのも『侍タイムスリッパー』で助監督。キャスティングも有名とは言えない(失礼ながら)の俳優陣でそろえています。勝因は「脚本力」物語前半に仕込まれた伏線を終盤までに見事に回収してくるところ。モノがなければ頭で勝負。いやいや、自らを反省させられます。

なるほどの脚本

脚本で一番唸ったのは、宿敵山形彦九郎が大物俳優風見恭一郎として高坂新左衛門と再会するところ。同時に雷を打たれた後、30年の間を空けて現在にタイムスリップしています。「なるほど、そういうこともあり得るわな」。次々明かされる伏線回収に私の「スッキリ」感が満たされます。
最後のクライマックスも驚きの展開、故郷の民の無念を晴らすべく高坂新左衛門が振り下ろした真剣が風見恭一郎を切りつける。その場で倒れ込む恭一郎、ほとばしる鮮血.…。「え?真剣で本当に切ってしまったのか??」。それまでの流れでマジで切ってしまっても不思議ではない展開。その時、住職夫婦が映画鑑賞を終えた場面に切り替わります。そういえば、陣師関本は「竹光で本身を振っているようにみせるのが本当の演技だ」と言っていたよな。実際の演技では竹光を使っているけれど、見ているこっちは真剣勝負。「竹光で本身を振っているようにみせるのが本当の演技だ」の伏線回収です。迫真の演技力にありがたく騙されさせてもらいました。

あらすじ

時代は江戸時代の後期。佐幕派の会津藩士高坂新左衛門(山口馬木也)が討幕派の「長州藩士を討て」との密命を受けていた。闇夜に紛れ、宿敵山形彦九郎(冨家ノリマサ。後に風見恭一郎役として再登場)と正に剣を交えようとしたその時、雷鳴がとどろき高坂新左衛門は現在の時代劇の撮影所にタイムスリップしたのである。高坂新左衛門は撮影所でドラマ撮影をしていた助監督の山本優子(沙倉ゆうの)と出会い、住職夫妻に世話になる。戸惑いながらも殺陣師関本(峰 蘭太郎)の弟子になり時代劇の「斬られ役」としての職業も得た。そんな折、高坂新左衛門に大物俳優風見恭一郎から自身が主演する映画のキャスティングのオファーが来る。風見恭一郎は10年前に時代劇のトップ座に立っていたものの突然時代劇から身を引いた人物。現在の時代劇の衰退を憂い、再度時代劇に復活することを決意したのである。高坂新左衛門は風見恭一郎の正体を知り愕然とする。
続きは映画館にて。

公式サイトより引用





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