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『四月一日さん家の』がめっちゃ楽しみだという話。

2019年4月19日、あるドラマの放送が始まる。
タイトルは、『四月一日さん家の』

『四月一日さん家の』とは、テレビ東京系列ドラマ25枠にて、2019年4月期に放送されるシチュエーションコメディ・ドラマである。
東京江東区門前仲町にある四月一日家を舞台に、長女の一花、次女の二葉、三女の三樹の四月一日三姉妹の日常を描いた作品だ。
主演は、ときのそら、猿楽町双葉、響木アオの三名が務める。
三名とも、 バーチャルYouTuberである。
『四月一日さん家の』は、史上初の「バーチャルYouTuberが主演する」ドラマ作品である。


私はこの作品に、非常に大きな期待を抱いている。『四月一日さん家の』の放送を心から楽しみにしている。
楽しみすぎて居てもたってもいられず、こうして文章を書いた次第である。
『四月一日さん家の』の何がどうすごいのか、説明するので聞いていってほしい。

Vtuberの「ドラマ」

「四月一日さん家の」は、ドラマ作品である。バーチャルYouTuberが主演するドラマ作品である。

ピンとこないという方もきっと多いのではないだろうか。
「Vtuberのドラマ? アニメじゃないの?」と。

アニメではない。
「四月一日さん家の」は、アニメではなくドラマとして作られる。そこが肝心なのだ。

ドラマなので、「役」があり、「役者」がいる。
「役」は、四月一日三姉妹だ。
四月一日一花、四月一日二葉、四月一日三樹。この三人の「登場人物」がいる。
そして、それを演じる「役者」が、ときのそら、猿楽町双葉、響木アオの三名である。

もう一度言う。「役者」である。
Vtuberであるときのそら、猿楽町双葉、響木アオが、「女優」として出演するのである。
Vtuberが、女優として、地上波に出るのである。
それが、Vtuberという文化にとって、本当に大きな意味を持つのだ。

Vtuberは、アニメではない。単なるアニメーション・キャラクターや3Dモデルデータでもない。
そこに生きて、活動している。心があり、命がある。


少なくとも私はそう考えているし、Vtuberという文化はこの一年、そういう認識の下で発展してきたと思っている。
しかし、この認識はまだ完全に浸透しきったとは言えない。
Vtuberというものは、アニメと同列に扱われることが非常に多い。アニメキャラクターと同様に「中の人」がいて、声を当て、演じる。そういった「フィクション」の存在と見なされることも、まだまだ多いのが現状だ。
実際、Vtuberを知らない人から見れば、3Dや2Dの見た目で動いているVtuberの姿は、ぱっと見てアニメのようなものとして映るのである。それがバーチャルな存在たちにとっての身体、生身であるとは、理解されにくい。

だからこそ、「四月一日さん家の」をドラマとしてやることに、意義がある。
Vtuberを、演じられるキャラクターではなく、演じる役者として扱う事。
フィクションの存在ではなく、フィクションを制作する側の存在として扱う事。
「声の出演」ではなく、「女優としての出演」である事。
私たちが普段テレビで見る、生身の俳優たちと同じ位相の存在として扱う事。
Vtuberが役を演じるドラマを作るということは、そういう事なのである。

「四月一日さん家の」は、徹底してドラマとして作られている。
情報公開の翌日、2月21日には、主演のときのそら、響木アオに、制作プロデューサーの五箇公貴氏(通称:ごかP)、広報担当のおかめさんを交えての特別生放送が行われた。

この放送の中で、「四月一日さん家の」の制作についての話にも触れられている。
ドラマ分野で活躍する脚本家が脚本を書き、ドラマのスタッフが参加し、スタイリストが衣装を担当する。
スタイリストがつくことは非常に象徴的であろう。
実写作品と同じように、劇中の人物や場面に合わせた衣服を、専門のスタイリストがコーディネートすることで、作品にいっそうのリアリティが生まれる。


実写のテレビドラマのスタッフで、実写のテレビドラマと同じように制作していくことが語られ、主演の三人が確かに女優として扱われていることが伝わってきた。

そして、何度もくり返し、「四月一日さん家の」がアニメではなくドラマであるということを強調していた。
この制作陣は、ちゃんと分かってくれている。
Vtuberがアニメではないということも、Vtuberがアニメだと見なされがちなことも、理解してくれている。その上で、「Vtuberが主演するドラマ作品」を作ろうとしていると強く感じた。
それが何よりも、「この制作陣は信頼できる」と思わせてくれた。

Vtuberたちが、テレビで役を演じるその形態を指して「ドラマ」と定義する。
「ドラマ」と「Vtuber」の常識が、塗り替わる。
そのために本気で作られた作品。それが『四月一日さん家の』である。


「シチュエーションコメディ」というジャンル

『四月一日さん家の』がドラマであることは今述べた通りだが、ただのドラマではない。『四月一日さん家の』は、シチュエーションコメディドラマである。

シチュエーションコメディというジャンルについて軽く説明をすると、登場人物の置かれた状況、シチュエーションによって笑いを生み出す形式のコメディである。
有名な作品を挙げると『フルハウス』『奥さまは魔女』などの海外ドラマ、国内では『やっぱり猫が好き』などがある。
シチュエーションコメディの特徴としては、次のような点がある。
・登場人物がほぼ固定。
・舞台となる場所もほぼ固定。
・基本的に一話完結。
『四月一日さん家の』は、ドラマの中でもこのシチュエーションコメディというジャンルで制作されるのである。

先ほど、『四月一日さん家の』では、Vtuberを生身の俳優と同じように扱われるということを述べた。しかし、実際のところVtuberは、完全に生身の人間と同じとは言えない面も確かにある。バーチャルという性質上、どうしても違いというものがある。
例えば、Vtuberは基本的に、そのままリアル世界に出て来ることができない。モニターや端末、VR機器などを介する必要がある。
これがドラマ撮影において何を意味するかというと、ロケが非常に困難なのである。
実写風景に出て、そのまま撮影するということができない。可能だとしても、映像の編集には高い技術力と手間がかかり、30分もののドラマで行うのは現実的ではない。
かと言って、3Dモデルのセットを使うにしても、何十通りものセットを一から制作していたのではコスト面で見合わない。
『四月一日さん家の』はあくまでも、テレビ東京のドラマ25枠で放送する、ひとつのテレビドラマにすぎない。無尽蔵にコストや予算を使えるわけではないのである。
そういった製作面での制約に目を向けた時、シチュエーションコメディというのは非常に良い選択であるように思えた。
先述した通り、シチュエーションコメディは基本的にひとつの舞台のみで話が進んでいく。『フルハウス』にせよ、『やっぱり猫が好き』にせよ、撮影に使われるのは、家のセットのみである。
『四月一日さん家の』も同様に、四月一日家のセットひとつを作れば、それで事が足りる。そもそも必要なセット数が少ないというシチュエーションコメディの特性がここで活かされるのである。

また、『四月一日さん家の』が「史上初のバーチャルYouTuberドラマ」と銘打たれているとおり、Vtuberのドラマをつくるということ自体が初の試みである。
Vtuber側からすれば、ドラマでの本格的な演技経験はまだまだ不足しているし、ドラマ制作の現場からすれば、Vtuberと組んで仕事をするというノウハウが未だ確立されていない現状である。双方から見て、「不慣れ」なことであることは否めない。
そういった点からも、キャストと舞台がある程度固定化されるシチュエーションコメディは、双方にとって助けになる。構造がシンプルなぶん、制作現場でお互いの不慣れな部分を、丁寧にすり合わせていくための余裕が生じるのである。

ここまでは制作面から、『四月一日さん家の』がシチュエーションコメディであることの利点を述べてきたが、次は視聴者側の視点から語ってみよう。
『四月一日さん家の』が「史上初のバーチャルYouTuberドラマ」であるということは、制作陣はもとより、視聴者側にとっても「これまで見たことのないもの」であることに他ならない。特に、これが地上波で放送される以上、普段からVtuberの動画や配信を見ている層だけでなく、全くVtuberのことを知らないという人が見ることにも留意しなければならない。
そういった「そもそもVtuberというもの自体に詳しくない」視聴者を考慮する際も、シチュエーションコメディの特性は利点となる。
まず重要な点が、シチュエーションコメディはドラマ、つまりフィクションであるという点である。
私は先ほど、Vtuberはフィクションではないと主張した。ただ、Vtuberが出演している『四月一日さん家の』というドラマ作品はフィクションであり、四月一日三姉妹は架空の人物である。四月一日三姉妹と、それを演じるときのそら、猿楽町双葉、響木アオは別の存在であるという点が重要なのだ。
この点がどう作用するのかというと、『四月一日さん家の』を見る上で、主演のVtuberたちのことを知らなくても問題なく楽しめるのである。
フィクション作品としての『四月一日さん家の』を楽しむのに、役者の情報という予備知識は特に必要ない。Vtuberを知らない人も、同じ条件で見ることができるという点は、新規の視聴者を引き入れる上での強みと言えるだろう。


また、シチュエーションコメディの特徴として「一話完結型」であることが挙げられる。連続したストーリーで視聴者を引き込むのではなく、軽妙な会話劇を楽しむタイプのドラマである。『四月一日さん家の』も、全12話を通じての大きな話の流れはあれど、基本的にはごく普通の三姉妹の日常と、そこで起きるささやかなトラブルを描くことに重点を置いている。
この点もまた、Vtuberに詳しくない視聴者にやさしい作りになっている。


この一年でVtuberの知名度は格段に上がり、活躍の場は着実に増えつつあるとはいえ、まだまだVtuberが世間一般にまで完全に浸透しきったとは言い難い。
Vtuberを知らない人にとっては、バーチャルな存在たちが動いたり、話したりしている光景そのものが見慣れない、異質なコンテンツなのである。急に「バーチャルYouTuberが出演するドラマです」と言われても、どういう状況か理解できずに困惑させてしまう恐れがある。
まずはVtuberが役を演じているという状況そのものに慣れてもらう。そのためには、ストーリー面での複雑さのないシチュエーションコメディというジャンルは効果的であろう。

このように、シチュエーションコメディというジャンルは、「Vtuberのことを知らない人」にも安心して薦められる。史上初のVtuberドラマ『四月一日さん家の』には、まさにうってつけなのである。

まとめ

長々と語ってしまったので話をまとめる。

『四月一日さん家の』は、Vtuberが「役者」として出演する、まぎれもない「ドラマ作品」である。
また、シチュエーションコメディというジャンルであるため、Vtuberファンにはもちろんのこと、Vtuberを知らない人にもお薦めできる作品である。

Vtuberが、ドラマに出る。
それは、本当に革新的なことなのである。
2019年のドラマには、Vtuberが出演する。
Vtuberが地上波のドラマに出る時代が、ついに訪れたのである。
バーチャルとリアル、二つの世界の距離がまた少し、近づいた。
「Vtuberドラマ」という新たな世界が拓ける瞬間を、どうかその眼で見てほしい。
きっと、面白いものが見られるはずだ。


ちなみに。


『四月一日さん家の』はテレビ東京系列で放送されるほか、民放のテレビ番組の公式配信サイト「TVer」にて、無料でネット配信される予定である。
テレビ東京が映らない地域に住んでいる人も見られるので、ぜひ見てほしい。

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