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シカのお肉はヴェニソンと言います

先日レシピを公開したこともあってローストがやりたいというお客様の声もちらほら聞かれるようになりました。

そんな話をされるときについうっかりというか、皆さんどうしても「ローストビーフ」が頭に出てきてしまうので「ローストビーフ… いや牛肉じゃないからローストディアーか」と言い直したりされています。beef ビーフはもちろん牛肉という意味なのでシカ肉で作る場合にビーフというのは誤りなのですが、実はローストディアーという言い方も間違いです。

deer ディアー は生きている鹿を指す言葉なので食べ物に使うときはvenison ヴェニソンという言葉になります。あんまり聞き馴染みのない言葉ですよね。それだけシカ肉はあまりお店や食卓には並ばないお肉だったということになります。

せっかくなので、英語で動物を指す場合の言い方の違いを表にまとめてみました。

一つだけ異質なチキン

食肉の名称だけやたらフランス語っぽいことに気づかれた方もいるかもしれません。これは偶然や気のせいではなくニワトリ以外は全部フランス語由来の言葉だからです。
なぜそんなことになってるかというと、11世紀にイギリスイングランドがフランスの貴族に征服されたということが関係あります。フランス出身の人がイギリス国イングランド王になったのでイギリスイングランドの貴族階級はみんなフランス語を話すようになり、もっぱら食べる方がメインの貴族の皆さんがそれぞれのお肉をフランス語で言うのでそのまま定着したということだそうです。逆に家畜や狩猟などで育てたり解体するのは庶民なのでそっちは英語のまま残ったということです。
(2025.2.13注記 イングランドをイギリスと書いていたので修正しました。現在のイギリスは元々4つの国に分かれておりそのうちの一つがイングランドですね。サッカーに詳しい人はご存じだと思います)
下記リンク先の「ウィリアム一世がもたらしたもの」の項が詳しいです。

https://www.japanjournals.com/feature/survivor/18041-william-first-2.html

ところで鶏肉だけ生きてても食材になっても同じチキンで変わらないことに気づかれたと思います。これは鶏がどちらかというと庶民の食べ物だったということが関係あるようです。貴族の食卓に並ばないのでフランス語で言う必要がなく、食べる場合も言葉はそのままということですね… ちなみに鶏のフランス語はpoulet プーレ(若鶏)とかcoq コック(雄鶏)、poule プー(雌鶏)と言うそうです。

まぁ言葉としては生きてるニワトリを指すものもありrooster ロースター(雄鶏)とかhen ヘン(雌鶏)とか言うようですが英語圏の人がわざわざ使い分けるということはなく、食べようが生きてようがまとめてchickenで通じるということだそうです。

ジビエを扱ってる身として食文化とか歴史的経緯なども興味があるので今回のようなマメ知識ネタも時々書いていきたいと思います!