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トレイルデザイン-Appendix I

IMBA”排水の逆転劇”

トレイルビルドにおけるRolling Contour TrailのノウハウはIMBAから来ていることが分かりました。では、IMBAではどのようにしてトレイルビルドのノウハウを確立してきたのでしょうか?

そこで「アメリカの林地利用の調整における利用者組織の役割」(平野、2018)から、IMBAとトレイルの歴史を見てみましょう。そこにはマウンテンバイクコミュニティの努力による、見事な逆転劇があったのです。

MTBブーム

1980年代、アメリカでマウンテンバイクブームが始まりました。そして、これはどこの世界にもある話ですが、例えばスキー場におけるスキーヤーとスノーボーダーのように既得権者と新参者の軋轢が生まれます。つまり、ハイカーや乗馬による利用者(既得権者)との軋轢が生まれました。特にマウンテンバイクはスピードが圧倒的に違うため危険であり、自然環境を破壊する要因となるとみなされたのです。

保有と利用の禁止

1985年には国有林におけるウィルダネスエリアにおいて、「自転車の保有と利用」が禁止されます。日本の国立公園においても車馬の乗り入れ規制がありますが、保有までは禁止されていません。つまり自転車を担いで規制区域に入る分にはOKということになります。しかし当時のウィルダネスエリアでは担いでいるだけ違法になったわけです。

IMBA

「このままでは自分達のフィールドが失われてしまう」とマウンテンバイクコミュニティは危機感を抱きました。そこでカリフォルニアのいくつかのマウンテンバイク団体が一緒になり、1988年にIMBA(International Mountain Bicycling Association)が設立されました。自分達の遊び場を守るため、彼らは「責任のある利用」を掲げ、マウンテンバイク利用のルールの啓発を行うとともに積極的にトレイルの整備に関わるようにしました。

Trail Solutions

さらに、建設や林業に従事しているメンバーを集めて「Trail Solutions Staff / Team」を結成します。設立後の10年の間に1,600kmに及ぶトレイルを整備し、20万時間にも及ぶボランティアが実施されました。

そして2004年、こうして得られたトレイル整備のノウハウが詰まった『Trail Solutions』が公刊されました。今では世界中のトレイルビルダー達のバイブルとされています。

Trail Construction and Maintenance Notebook

そして2007年、U.S.Forest Serviceの『Trail Construction and Maintenance Notebook 2007Edition』に『Trail Solutions』のノウハウが取り入れられました。1985年にはトレイルから締め出されようようとしていたマウンテンバイクコミュニティでしたが、2007年にはU.S.Forest Serviceがそのノウハウを取り入れるほど、トレイルの管理・整備には欠かせない存在となったのです。


IMBAの事例は、協働による自然資源の持続的な管理運営に多くの知見を与えてくれています。高齢化や人材・資源不足を抱える山岳団体や、トレイルランナーやMTB愛好家の方々には是非参考にして頂きたいと思います。




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