トレイルデザイン-Appendix E
(2020/12/16)修正・加筆
Evolution of the Trail Building
この「トレイルデザイン」ではJMTを例に出しつつ、アメリカのトレイルビルドのノウハウを紹介しています。主に参考にしているのはU.S.Forest Service(合衆国森林局)から出ている『Trail Construction and Maintenance Notebook 2007Edition』です。
しかし、実はこれはちょっとおかしな話です。なぜならJMTが作られたのは1917年〜1938年の間だからです。いかにもJMTでもHalf RuleやGread Reversalsに代表されるRolling Contuor Trailの方針に沿った作りをしているかのように話を進めていますが、果たしてこれらは1915年当時から確立されていた知見なのでしょうか?
そこで、アメリカのトレイルビルドの歴史ついて、現段階で把握できている事をまとめていきたいと思います。
■1890s
Forest Service が国有林内にてトレイルを作り始める。ただしこの当時はレクリレーションの為ではなく、森林火災防止や移動のためのものだったようです。
■1872 Yellowstone National Park が制定される。
■1876 Appalachian Mountain Club 設立。
■1890 アメリカ政府が「フロンティア消滅」を宣言
■1891 Yosemite National Park が制定される(州立公園から)。
■1892 Sierra Club 設立される
■1905 U.S Forest Service 設立される。
■1914 自然保護の父・国立公園の父、Jonh Muir 亡くなる。
■ 1915
Forest Serviceから『Trail Construction on the National Forests』(1915.ver)が出る。ここではHalf RuleやGread Reversalsなどの記述は見られません。
またこの年にトレイルを「main trails」、「secondary trails」、「branch trails」の3つに分類したそうです。
■1916 National Park Serviceが設置される。
■1917
Sierra Clubなどの提唱でカリフォルニア政府が資金を出し、JMT工事が始まる。
■1921 Appalachian Trail(AT)が発案される。
■1922
Forest Serviceがトレイルを目的別に「Fire control」、「administrations」「grazing」、「recreation」に分類する。ここでトレイルがレクリエーションの場として明確に定義された感じでしょうか。
■1923
Forest Serviceから『Trail Construction on the National Forests』(1923.ver)が出る。ここにきてGread Reversa的な方法論が登場する。
■1933
フランクリン・ルーズベルト大統領の失業対策としてCCC(Civilian Conservation Corps)市民保全部隊が組織され、国立公園や国有林の整備、トレイルビルドが行われた。
■1937
NPSから『Construction of Trails』が出る。
この時すでにアウトスロープやフルベンチのやり方が登場している。
ATが全線開通!
■1938 JMT完成!
■1964 Wilderness Actが制定される。
■1968 National Trails System Actが制定される。
■1969 National Environmental Policy Act(NEPA)が制定される。
■1970 最初のナショナルトレイルシンポジウムが開催される。
■1978
アメリカのお隣のカナダにて、国立公園を管理する”Parks Canada”から『Trail Manual』が出る(後に1985年版が出る)。
■1988
IMBA(The International Mountain Bicycling Association )が成立。トレイルに整備や管理に関わるとともに、建設や林業に携わっている人たちで「Trail Solutions staff / team」を結成。トレイル作りも行う。
■1982
『Appalachian Trail Design, Construction, and Maintenance 』の初版が発売される。内容は分からない。
■1992
Forest ServiceよりDVD『Surface Water Control Techniques for Trail Maintenance』が出る。
※公式かどうか不明だがYouTubeはこちら
■1994
Forest ServiceよりDVD『Trails in Wet Areas』が出る。
※公式かどうか不明だがYouTubeはこちら
■1995
IMBAから最初のトレイルバイブルとなる『Trail Development & Construction for Mountain Bicyling』が出る。
Forest ServiceよりDVD『Basic Trail Maintenance』が出る。
※公式かどうか不明だがYouTubeはこちら
■1996
最初の『Trail Construction and Maintenance Notebook』が登場。
『Lightly on The Land(1st)』発刊。
■1998
Forest ServiceよりDVD『Handtools for Trail Work』が出る。
※公式かどうか不明だがYouTubeはこちら
■2000
『Appalachian Trail Design, Construction, and Maintenance 2ed』が発売される。Coweeta DipやDrainage Dipという名称で排水方法が出てくる。
■2004
現在のトレイルビルダーのバイブルともいえる『Trail Solutions IMBA's Guide to Building Sweet Singletrack』発刊。
『Trail Construction and Maintenance Notebook 2004Edition』登場。内容は2007Editionと共通している部分が多いですが、なんとここでもHalf RuleなどRolling Contuor Trailの概念は出てきません!Out SlopeやFull-Benchは出てくる。
■2005
『Lightly on The Land(2nd)』発刊。
■2006
『Building Mountain Bike Trails: Sustainable Singletrack(DVD)』登場。大まかな内容は『Trail Solutions...』のもので、Forest ServiceとIMBAの共同で作った模様。
※公式ではなさそうだがYouTubeに上がっている
■2007
『Trail Construction and Maintenance Notebook 2007Edition』登場。
ここで『Trail Solutions IMBA's Guide to Building Sweet Singletrack』からHalf Ruleなど、サスティナブルなトレイルに関するノウハウが採用された模様。
IMBAの『Trail Solutions...』をさらにブラッシュアップさせた、『Managing Mountain Biking: IMBA's Guide to Providing Great Riding』発刊。
以上のことから、Rolling Contuor TrailはIMBAのTrail Solutions Teamによって(おそらく2004年以前に)確立されて、後にForest Serviceに採用されたものである可能性が高いということになります。
今の分かっているところでは、アウトスロープの初出はNPSの『Construction of Trails』である。ということはCCCあたりで確立されたのか?
参考
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