【登山道学勉強会】土、水、空気、風の草刈り #24
前回までのおさらい
ここまでの「土・水・空気」シリーズでは、まず持続可能性には土と水と空気の「循環」が重要なのではないか?という仮説のもとに、地面の中の循環を担う「水脈」の存在をご紹介しました。今回考えていきたいのが地面の上の循環です。
そこで、参考にするのが前回に引き続き『大地の再生実践マニュアル』です。地面の上の循環に関連する要素はいくつかありますが、今回は「風の草刈り」を取り上げていきます。
風の草刈り
風の草刈りとはいったい何なのか?ざっくりというと草刈りの仕方ひとつで風の流れ方は変わりますよ、というお話になります。まずは一般的に想像される草刈り方法と風の草刈りの違い比べてみましょう。
①草を刈ろうと思った時、普通に考えると草の根元から刈り取った方が良いと思いますよね。でも、風の草刈りではそれは間違いです。ではどこで刈り取るかと言うと風で揺れる位置だそうです。
②また、伸びている草の全てを根元から刈りたくなってしまいます。しかし、これも風の草刈り的には間違いで、草がブロック状に残るように刈るのが正解。木の根元や風の通り道となる場所は根元からかり、それ以外の部分は高刈りにするそうです。
③さらに、その側面は直線的にするのではなくカマボコ状にします。
一見すると、これらのやり方にどんな意味があるのか素人には分かりませんね。「たかが草刈りでいったい何が変わるのだろうか?」と思ってしまいます。次に、その理由を見ていきましょう。
風の流れを作る
基本的な考えとして風の草刈りでは風の流れをつくるために草を刈ります。邪魔な草を刈るという一般的な草刈りとは根本的に発想が違うわけですね。
①まず、草を刈る位置でどのような違いが生まれるのでしょうか?根元から刈った場合は地上部も地下部も勢いよく伸びようしてしまいます。しかし風で揺れる位置で刈ると、地上部では分岐やわき芽がたくさん出てきくる形になり、根も細いものが発達します。結果として、こちらのほうが作業量も少なくて済むとのことです。
②高刈りといっても全て同じ高さで刈るのではなく、①で見たようにその植物が風で揺れる位置で刈ることが基本となります。その中に、根元から刈りとって風の通り道を作るようにすると、停滞しがちな空気が対流しやすくなります。また、泥ボコリも消えていくそうです。
なお、風の通り道は地面が少し低くなっているところにします。そこは雨が降った時に水脈となりますが、水脈の上は風の通りをよくするのが基本だそうです。
③側面をカマボコ状にする理由は、その方が風が均等に流れて草の中に風が入っていきやすいからだそうです。
いかがでしたでしょうか。植物や空気力学などの専門ではないので、正直「なんでそうなるの?」「本当にそうなるの?」といった疑問も浮かびます。今回はその辺りの疑問はいったん傍に置いておいて、これらの考え方が登山道においても活かせるかどうかを、今後探っていきたいと思っています。
ササ刈りと登山道
ただ、草(ササ)の刈り方よって登山道の維持管理に違いが出てくると言うのはすでに事例として存在しています。それが白山でのササ刈りの事例です。このnoteでもすでに取り上げましたので、そちらも参考にしてください。
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