近自然工法について知りたければ。
近自然河川工法とは
「近自然河川工法」とは、もともとスイスやドイツで行われていた河川工事の工法で、英語では「Neo-Natural River Reconstruction Method」、独語では「Naturnaher Wasserbau」 と呼ばれていたものです。これが日本に持ち込まれる時に「近自然河川工法」と訳され、略して「近自然工法」とも呼ばれていました。その後、日本では「近自然」という言葉が分かりづらいということで「多自然工法」や「多自然川型づくり」、「多自然川づくり」と呼ばれるようになってきました。
英語では「Reconstruction」となっているように、画一的な河川工事で生態系が崩れてしまった河を「直す」・「戻す」といったニュアンスが含まれているようです。ドイツでは「近自然工法の原則」というものがあるそうで、その中身は次のようになっています。
近自然工法とは
福留先生が屋久島で「登山道は川である」ということに着目し、「近自然河川工法」の思想や理念を取り入れて登山道整備に携わり、「近自然登山道工法」というものも誕生しましたが、これは日本独自のものです。
これは個人的な考察ですが、日本ではもともと沢を道として利用していた歴史があったことと、登山道が山頂へたどり着くことを目的に作られているため「近自然河川工法」が登山道にも応用されたのではないかと思います。欧米では、山頂ではなく別の目的で移動するために歩道が作られていることと、そもそも川にならないように歩道を作られるため、こういった発想は生まれなかったのだと思います。その代わりに「Sustainable Trails」という考えが確立されています。
ちなみに、福留先生が最初に掲げた「近自然登山道工法」の基本原則は次のようになっています。
「近自然登山道工法」も略して「近自然工法」と呼ばれるようになり、本家の「近自然河川工法」が「多自然川づくり」と呼ばれるようになってしまったため、「近自然工法=登山道の工法」みたいな感じになってきました。こちらは「多自然登山道づくり」にはならないのでしょうか?
昨今、近自然登山道工法も試行錯誤が行われ、各地で試みられているのは良いことだと思いますが、当初の基本原則からは遠ざかり「近自然とはいったい・・・うごごご!!」と感じるものもあります。
いずれにしましても、もともとは河川工事の工法ということは理解しておきたいところです。ということで、「近自然河川工法」を知るための資料をまとめました。
近自然河川工法の計画視点
著者:福留 脩文 発行日:1994年
近自然工法と環境保全
著者:福留 脩文 発行日:1998年
近自然河川工法適用に関する問題点
著者:岸田 憲和 発行日:1999年
国際河川における河川工法の動向
著者:足立 考之 発行日:2001年
ドイツ・スイスにみる近自然工法 : 新しい川・新しいみちづくり
著者:土谷 富士夫 発行日:2003年
思想と技術に着目した近自然河川工法及び多自然型川づくりの導入過程に関する研究
著者:坂本 いづる, 福島 秀哉, 中井 祐 発行日:2017年
近自然工法とは何か
-スイス・ドイツ・オーストリアの川、眺め歩記-
著者:孫田 敏
多自然川づくりとは何だったのか?
著者:祖田 亮次, 柚洞 一央 発行日:2012年
令和元年 欧州近自然川づくり調査報告
著者:欧州近自然川づくり調査団 発行日:2020年
多自然川づくりによる河川改修が行われた木戸川と都市河川駒込川の水生動物群集の比較
著者:辻本 翔平, 竹澤 亮, 内田 和希, 西廣 淳 発行日:2023年8月