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トレイルデザイン-Knicks

水溜り

平らなトレイル上に水溜りができてしまうことがあります。実はこの水溜り、トレイルを侵食する要因になってしまいます。土が水分を含むことによってトレイルの表面や法面が弱くなってしまったり、水溜りを避けようとするハイカーがトレイル外を歩くことで、侵食が進みます。そのため、水溜りはできないようにトレイルを作ることが、サスティナブルなトレイルにつながります。

そこで、平らなトレイルでも水を排除できる方法としてニックと呼ばれる方法があります(なぜKnicksと呼ばれるのかはよく分からないのですが・・・)。

Knicks

これは半円形状にトレイルを谷側に掘り下げて、傾斜によって水を排出する仕組みです。大きさは直径2m〜3mくらいで、15%(約8.5度)の角度で谷側に掘り下げます。

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Figure 14(Trail Construction and Maintenance Notebook 2007より)

もちろん平らな場所に限らず、グレードリバーサルなどど組み合わせても良いでしょう。地面を削るだけで、木や石などの資材を必要としないため、ウォーターバーより少ない労力で設置できます。また、余計な人工物がないので景観を損なう可能性も低いというメリットもあります。

Rolling Grade Dips

また、ニックの応用編として「ローリンググレードディップ」があります。「ローリングディップ」とも言われるみたいです。ニックが基本的に勾配の無い箇所で使われるのに対して、ローリングディップは主に傾斜のある所で使います。

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Figure 16(Trail Construction and Maintenance Notebook 2007より)

まず、傾斜のあるトレイルにニックを作りますそしてニックの下側のトレイルに、大体3m~6mに渡って土を盛って短い登りの傾斜をつけます。傾斜の角度は、トレイルの傾斜が7%(約4度)の時は3%(約1.7度)と紹介されています。既存のトレイル にグレードリバーサルを作るといった感じでしょうか。

二次侵食

しかし、あまり極端に傾斜をつけたり、流れる水量の多い場所に作ってしまうと、「二次侵食」を起こす可能性があるため注意が必要です。二次侵食とは、侵食を防いだり直そうとしたことで、さらに侵食が拡大してしまったり、新たな侵食を産んでしまうことです。これはニックに限った話ではありません。

「登山道が歩きづらいので一生懸命階段を作ったら、余計に侵食が広がって、更に歩きづらくなってしまった!」という悲しい事が実際によく起きています。この辺りが登山道整備をより難しいものにしている要因です。二次侵食を起こさないためには技術だけでなく、積雪や雨量な登山者の数など、その土地の状況をよく知っておく必要があります。

参考

Trail Construction and Maintenance Notebook 2007

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