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トレイルデザイン-Volunteers

アメリカは、他の国に類を見ない長大なトレイルを持つ国です。その長大なトレイル維持するためには土地の管理者(Land Manager)の力だけではなく、多くのボランティアの力や寄付(Donate)による援助が欠かせません。その証拠に各地のトレイル管理団体のホームページを見ると、必ず「Volunteer」や「Donate」の欄が見られます。

日本でも古くから山岳会や山小屋の方々のボランティアによって登山道の維持がされてきましたが、一般参加によるボランティアはアメリカほどは普及していないと感じます。ただ、最近は協働型による管理運営が推進されていることもあってか徐々に増えてきているように思います。

日本でボランティアへの参加が広まり始めたのは、1995年の阪神淡路大震災がきっかけで、この年が「(災害)ボランティア元年」と言われています。その後も、いくつかの災害を経験してきた日本ですが、その都度多くのボランティアが現地に集まるようになりました。

被災地に善意による多くのボランティアが集まるのは、大変心温まる話ではありますが、その一方で、現場でボランティアを適切に運営することはとても難しいことです。現地に集まったボランティア、送られてくる支援物資、病院や行政など多くの関係者を上手に取りまとめる必要があります。

このことは、山岳地域におけるボランティアも例外ではありません。

現場・・・
資金・資材・時間の不足、継続性がない
ボランティア・・・
気持ちはあるが空回り、初心者は知識・経験がない、自分勝手な人もいる
行政・・・
現場が見えない、数年で担当者が変わるので過去経緯やノウハウの蓄積がされない協力団体・・・
考え・方針が合わない場合もある

そこで、今回はアメリカのトレイル上ではボランティアがどのように運営されているのか、その一部を見ていきましょう。


Appalachian Trail Design, Construction, and Maintenance

『Appalachian Trail Design, Construction, and Maintenance』によるとボランティアを継続させる秘訣は「Fun」「Teamwork」「Partnership」「Safety」「Teamwork」の4点とされています。

■Fun
■Teamwork
■Partnership
■Safety

ボランティア活動はまず何より「楽しい」活動にすることが大切です。頑張るあまりに辛いものとなってしまっては長続きしません。また、参加者が「協力」しあうことも重要となります。特定の人だけが頑張ってしまったり、中には張り切り過ぎて全部自分だけでやろうとしてしまう人もいます。一人だけで動いている人がいたら要注意です。「負担が大きくて次は参加したくない」「せっかく参加したけど自分は役に立たなかった」という思いをしないように配慮が必要です。

さらに、トレイル上では多くの人や団体が関わり合っています。土地の所有者や管理者だけでなく地元の山岳会といった民間団体もいるでしょう。そういった関係者と「連携」して、できることなら一緒に活動することも、ボランティアを長続きさせる上では重要となります。

最後に、なんといっても「安全」には最大限の注意を払いましょう。万が一参加者が怪我をするなどの事故が起きてしまうと、参加者にとっても不幸となりますし、活動そのもの継続が困難になります。とくに各種道具の安全な取り扱いについて、作業前にレクチャーを行いましょう。ボランティアは必ずしも道具の扱いに慣れているわけではありませんし、張り切り過ぎて周りが見えなくなってしまうことも多々あります。


Using Volunteers to Maintain Trails in Parks

次に American Trails の Webinar 『Using Volunteers on The Trailsから、全ては紹介できませんが一部を紹介します。ちなみに、こちらの Wabinar はストアから無料でダウンロードできます。

■Using Volunteers on The Trails

まずボランティアによるトレイルの維持管理の強み弱みを確認しておきましょう。

Advantage
・自分たちの力を補うことができる
・自分たちでは出来ないことも出来るようになる
・プロジェクトを安いコストまたはコストをかけずに行える
Disadvantages
・決してタダではない
・参加者を管理する必要がある
・いろんな人がいる(自分勝手な人、いなくなってしまう人など)
・参加者に対して責任を負うことになる


■Types of Volunteers

ボランティアにはいくつかの種類があって、それぞれ強み弱み得意不得意があります。

一般の個人参加
一般の個人の参加者を募集する場合は、主催者の意図や考えを伝えやすく、融通を効かせやすいという反面、きちんと責任をもって管理する必要があります。また、いろいろな人がいたり定着しづらいのが難点です。あまり難しい作業は不得意なので、メンテナンス(枝払い、笹狩り、路面の整備)などの作業が向いています。

地域の団体など
例えば地元の山岳会などすでに組織化された団体は、個別に募集をかける必要がなく、すでにある程度統率が取れているため、管理は比較的楽だと言えます。その反面、あくまでもその団体に所属している人たちなので、自分たちが好き勝手にできるというわけではありません。しかし、その土地に精通していたり、技術を持った人もいるので、難しい作業も可能となります。

エピソディック・ボランティア
比較的最近使われるようになった単語で、一般には聞き慣れない言葉ですが「エピソディック・ボランティア」とは、どちらかというと自分の楽しみや自己実現のために単発・短期間で行うボランティアのことを指すようです(エピソディック・ボランティアに関係する論文はコチラ)。オリンピックのボランティアなんかはこれに近いのかもしれません。トレイルのメンテナンスの他、遊歩道の造成など多く人手で大きな仕事を行うのに向いています。やる気や情熱を持った人が多いのも特徴です。ただ、プロジェクトが完結するまで継続してくれるとも限らず、いろいろな準備に時間が必要とされます。


■Increase your chances of using volunteers successfully

これから新たなプロジェクトでのボランティア活動を成功させようと思ったら、次のような点に注意しましょう。

・小さく、成果が目で見えやすいものからスタートする
・ボランティアに何をして欲しいかを明確にする
・ガイドラインやルールを決めておく(安全第一、楽しく過ごす、仕事を完了させるための)
・現場を理解しているリーダー役を用意しておく
・感謝の気持ちを忘れない

■Identify your Human Resources

では、そんなボランティアとなって協力をしてくれる人たちはどこにいるのでしょか?次ような場所がないか探してみましょう。

・まずあなたの身の回りに力になってくれる人はいませんか?
・近くにハイキングやマウンテンバイクコミュニティはありませんか?
・ボランティアを登録している団体はありませんか?
・ボーイスカウトや山岳部はありませんか?
・アウトドア関連のお店はありませんか?

■Identify Materials and Equipment Needs

そして、あなたがやろうとしているプロジェクトに必要な資材や道具を見積もりましょう。

・資材のお値段
・必要な道具
・誰が何の費用を負担するか
・それをどこに保管しておくか

■Why have an episodic project as your firs one ?

いきなり長期的な大掛かりなプロジェクトを行うことはお勧めしません。まずは単発のプロジェクトから計画してみましょう。そうすることで次のような効果が期待できます。

・まずコミュニティとの接点を持つ足がかりになる
・ボランティアの可能性(人数・体力・技術など)の確認になる
・リーダーを担ってくれそうな人材を探せる

■Recognitions

ボタンティアは一般的に無償で行われるものと思われています。とは言え、何かしらのリターンがあった方がモチベーションになりますし、うまく使えば満足感や一体感を高め、ボランティア活動を長続きさせることにも繋がります。そこで、一例を紹介します。それぞれ、誰(個人or団体)に送るのか、かかるコストや効果に違いがあります。ちなみに☆印は比較的実施しやすく効果も高いのでお勧めです。これらをうまく活用してみてください。

■Food
・懇親会を開く
・セレモニーを行う
■Gift - small
・ステッカー、マグネット
・ポイントカード(○回参加したらプレゼント)
・ワッペン
■Gift - large
Tシャツ
・帽子
・ベスト、ジャケット
・道具(のこぎりとか)
■Written
・感謝状
・メディアへの記事
地図やパンフレット、本に名前を掲載
■Visual
・ポストカード
・修了証
・バッジ
・トレイル上に署名
写真
・ポスター
■Named awards


参考


■トレイルデザイン実践ガイドTOPページ



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