トレイルデザイン-Maximum Sustainable Trail Grades
次は「Maximum Sustainable Trail Grades(マキシマムサスティナブルトレイルグレード)」です。直訳すると「持続可能なトレイルの最大斜度」となるでしょうか。すでにここまで読まれた方は「最大斜度?それはハーフルールで決まっているんじゃないの?」と疑問に思われるかもしれません。
確かにハーフルールや10%ガイドラインなどのルールもありますが、これはさらにその場所のコンディション(地質や利用形態など)によって"あらかじめ"「最大斜度」を決めておきましょう、というものです。ではその「最大斜度」はどうやって決めるのかというと”その場の状況に応じて決めるしかない”のですが基本的には 15%-20% が妥当とされています。
Maximum grade
その「最大斜度」を決めるために考慮すべき項目は次のようなものがあります。
Half Rule
まず基本となるのはハーフルールです。つまりサイドスロープの半分を基準として、以下の項目によってはさらに低い斜度に設定していく必要があります。
Soil Type
土壌の質は大きく「シルト」「クレイ」「サンド」に分けられますが、それぞれ浸食に対する抵抗力が変わってきますので、土壌の質も考慮します。
(土壌について詳しくは「Understanding Soils」をご覧ください)
Rock
つまり岩場です。岩場にトレイルをつくる場合は急峻になりがちで、また岩と岩の間の土は水の浸食を受けやすいので注意が必要です。
Annual Rainfall Amount
地形や地質だけでなく、気候も重要な要素なります。特に雨は侵食の主たる原因となりますので、年間の降雨量なども考慮します。その他、風や降雪、雪解けなども考える必要があるでしょう。
Grade Reversals
詳しくは「Grade Reversals」を見てもらうとして、急なところほどグレードリバーサルを設けると良いでしょう。
Type of Users
日本ではイメージしずらいかもしれませが、諸外国(特に欧米)のトレイルは人が”歩く”ためだけのものではありません。トレイルランナーもいればマウンテンバイカーもいますし、さらに乗馬やモーターバイクなどの利用もありますので、利用形態も考慮します。
Number of Users
どれくらいの利用者がいるのかによっても変わります。基本的に利用者の多い場所は低く設定することで、利用による浸食を軽減できるでしょう。
Difficulty Level
トレイルは優しければ良いというものではありません。ある程度困難が伴う(つまり傾斜が急な)トレイルも必要でしょう。しかし、あえて傾斜を高くする場合は高度な技術が必要となります。そういった場合はグレードリバーサルを随所に設けると良いでしょう。
Trail Difficulty Rating System
では、参考までに実際に事例を見てましょう。ここでは IMBA の「Trail Difficulty Rating System」を見てみます。小さくてわかりづらいですが、トレイルの難易度が5つに分けれています。その難易度によってそ「MAXIMUM TRAL GRADE」が設定されていることが分かります。
トレイルと登山道②
アメリカでは、このようなレーティングシステムが IMBA だけでなくナショナルパークなど各団体でも作られています。それぞれ、利用形態や難易度によってトレイルの斜度や幅が決められています。
最近は日本でも北アルプスや大雪山など、グレーディングをしている地域もでてきました。どちらかというと遭難や事故防止のための難易度の設定という意味合いが強いように感じます。大雪山では利用体験も含めているという点では、一歩進んでいますが、登山道の斜度や幅というところまでは行っていません。そう言う意味ではまだまだ発展の余地があるのではないでしょうか。
参考
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