【登山道学勉強会】登山道パターンの調査方法に関する検証 #3
第3回 登山道学勉強会
前回は、登山道の勾配について調べました。北海道の29の山をサンプルとして調査したところ、平均勾配は18.6%でした。持続可能なトレイルで基準とされる10%を大きく上回る結果でした。
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次に気なるのは「登山道のつき方のパターン」です。これは平塚晶人さんの『2万5000分の1地図の読み方』に出てきた話で、登山道はおおよそ①尾根の上を通る、②沢に沿って稜線までツメ上げる、③沢に沿ってツメ、途中から尾根に乗る、④トラバースする、の4パターンに分けらるというものです。また、登山道の8割は尾根に付けられている、とも書かれていました。今回はこの登山道のパターン、つまりどこに道がつけられているのか、ということについて考えてみたい調べたいと思います。ここで問題となるのはどうやって調べるのか?という点です。
調査方法
いろいろ考えた結果、山の地形を「尾根」と「沢」、尾根と沢の間の「斜面」、どれにも当てはまらない「平地」に分類して、それらを国土地理院の地形図(電子版)の距離を測ることのできるツールを利用して、おおよその割合を調べてみることにしました。調べる対象は前回登山道の勾配を調べた29座の山とします。
結果
調査した結果から言うと、
尾根:35.1% 沢:11.3% 斜面:50.6% 平地:3.0%
となりました。なんとなく「尾根」が一番多いのではと思っていましたが、実際に調べてみると意外にも「斜面」が半分以上を占めていました。ただ、山によってばらつきが大きく、カムイヌプリや遊楽部岳は「尾根」が9割以上を占めています。反対にピヤシリ山や緑岳、黄金山、塩谷丸山は斜面が9割以上となっています。
登山道のパターンと標高や勾配、歩行距離などと何らかの関係があるのでしょうか?例えば「標高が高いと沢が多い」、「距離が長いと尾根が多くなる」、「火山性の山は斜面が多くなる」といったものです。サンプルが少ないせいかもしれませんが、それらしいものは見当たりません。
つまり、登山道のパータンはその山の山容や登山口の場所など様々な要因によって決まると考えられます。
問題点
実際にやってみて分かったことは、この調査方法にはいくつか問題があるということです。まず尾根や沢の定義が曖昧という点です。尾根といっても、切り立ったやせた尾根もあれば広い尾根もあります。広い尾根だと、どこまで尾根とするのかという問題もありますし、痩せた尾根の場合でも左右に交してる場合も判断が難しいです。また、尾根をジグザグに登っている場合は「尾根」とカウントするのか「斜面」とカウントするのかという疑問もあります。そのため、今回の調査はかなり主観的に計測したものとなります。
また地形図自体が実際の登山道とは違う場合もあります。これは間違いや誤差の時もあれば、見やすさを優先させるためにわざとずらして記載していることこともあります。
推測
せっかく調べたので何かしらの傾向を見いだしたいところです。そこで、少し見方を変えてみることにします。尾根・沢・斜面・平地と4つに分けて調べましたが、尾根と沢は表裏一体と考えて「尾根と沢」と「それ以外(斜面と平地)」で集計するとどうなるでしょうか?その結果が次です。
この様にするとどうでしょうか?次の様に大きく3タイプに分けることができるのではないでしょうか。
①尾根・沢がメインの山
②斜面がメインの山
③尾根・沢と斜面が半々の山
例えば尾根・沢が7割以上を占める山は利尻山、カムイヌプリ、ウペペサンケ山、芽室岳、カムイエクウチカウシ山、神威岳、楽古岳、遊楽部岳です。これらの山は尾根と沢の山容がはっきりしている山です。逆に斜面が7割以上占める山は、尾根がはっきりしない山に多いように感じます(尾根がはっきりしないということは、尾根を通りようがないので、当たり前と言えば当たり前ですが・・・)。
このことから、尾根・沢がはっきりしている山容の山は尾根と沢に登山道がつくられる傾向がある、という推測ができるのではないでしょうか。
結論
今回は北海道の山だけでサンプルも少ないのではっきり明確なことは言えませんが、「登山道は尾根につけらることが多い」というのは必ずしも正しくないということが分かりました。また、尾根や沢がはっきりとしている山容の山は、尾根や沢に登山道がつけられる傾向があるのではないか?という推測が生まれました。今後は他の山域の山も調べてみたいと思います。
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