凡庸な蝶々。 2020.11.12
大輪の花が咲いてから寄ってくる蝶々は、炯眼を持ち合わせない凡庸なる蝶々である。巡航する豪華客船に目を奪われるのは、平凡な乗客でしかない。青虫の時にその羽根を想像できなければならない。図面が引かれている新型船のアイデアに興奮しなければならない。
そんなものだよ、と言われれば、まあそうかも知れないと思わないでもないのだが、それでもなかなか素直に首を縦に振れない。未知のアイデアで組み立てられるプロジェクトが立ち上がるとき、助けとなる賛同者は極めて少ない。それが形を表し、全容が見え、自走が始まると、さまざまな人たちが賞賛の声と共に集まってくる。これまで度々経験した滑稽。
アマチュアならそれでもいい。しかし、プロフェッショナルの看板を上げるなら、もっと先を見て欲しくなる。クリエイターもメディアも、すでに実った果実を集めるばかりなら哀しすぎる。そんなことは、子どもでもできる。新種を見つけ、苗木を育てるセンスと気概こそ重要なのだ。誰も味わったことのない甘い蜜を知る、世にも希な蝶々でいたいものだ。