アオバズク幻想。 2020.5.19
夏が始まる頃、陽が落ちると、神社の方から聞こえてくる。ホーホー、ホーホー。少しくぐもった規則正しい啼き声。アオバズクだ。最初はフクロウかと思ったが、調べてみるとアオバズクだった。しかも、渡り鳥。初夏にやって来て、ひと夏を過ごす。今年もようこそ。
神社には樹高30m以上になんなんとする何本もの大木がある。彼らはそのどこかに住み処を見つけて、太陽が西の空に沈む頃になると、毎日律儀に声明が始まる。ここ周辺は、夜は真っ暗になるので、その闇の上空から啼き声は降りて来るのだが、この風情はなかなかで、月など出ようものなら、月光に森の影が浮かび上がる中、その聲は胸の奥に優しく響く。
夜半、目覚めることがある。早い時間なら、もう一度酒を飲む。家族も、集落も寝静まっていて、僕は本を開いたり、PCを触ったりするのだけれど、そんなときもずっとアオバズクは啼き続けている。どこかの木の枝か、幹の虚か、きっと眼をキョロキョロ動かしながら、夜空に向かって啼いているのだろう。それに押されるように、僕の思考はまた深くなる。
しばらく空を見上げることもある。心が喜んでいる。