ザ・ラスト・インプロヴァイザーズ
「三分は長すぎる。二分」
告げられた残り時間。今、額に強く押し付けられた銃口から、弾が発射されるまでの。
この大口径の拳銃なら頭の上半分が軽く吹っ飛ぶだろう──額に銃口の痕がつくかもなんて心配、普通なら間違ってる。
でも鏡でその結果を、再び自分の顔を見るまで生きたいと俺は思う。
「……せめて、銃を離せ」
かすれ声でも、まだ喋れるのは上出来。二日半、食物も水も与えられなかったことを加味すれば。
拳銃の持ち主──額に横一文字の傷跡が走る中年男は、ふんと笑い数歩後ろに下がった。もちろん照準は俺の頭から外さずに。
「では、今から二分だ」
中年男の言葉に、俺はうなずく。
そしてまず左手を開き、手のひらを真っ直ぐ奴のほうに突き出した後。
──右手で、己の左手の中指を根元から思い切り後方にへし折った! ペキッ!と勢いよく!
これが第一音──俺の!
二分後の世界に生き延びるための、俺の演奏が始まる。
【続く】