妄想癖

約束の時間を過ぎても相手が来ない。

電車でも止まったのか。
いや、もっとすごいことかもしれない。

「地下道は占拠した。こいつは人質だ」
爆弾を抱えた悪人が笑う。

もちろん人質は彼だ。

ヒーロー登場! 死闘を繰り広げる。

「早く行け!」
「えっ、でも……」
「お前には待っている人がいるだろう。私がヤツを引き止めている間に走れ!」

こうして彼は、涙を堪えてダッシュする。
後ろから爆音が響く。

「十分遅刻しちゃった、ごめん」
「いいよ」

私だけは、彼の秘密の冒険を知っている。

【短文バトル5】お題「遅刻」
#短文バトル

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