見出し画像

大竹伸朗展 富山県美術館

WIREのTシャツを着て颯爽と展示会場に現れた。
「せっかくだから、5分くらいやるか」と、代表作である、ダブ平&ニューシャネルを演奏し始めた。
初めて間近で見る氏は、イメージ通りでありながら、当たり前だが67歳の1人の人間で、しかしながら、眼差しから殺気と優しさを感じた。
なんといっても、WIREのTシャツである。

東京、愛媛、富山と続いた大竹伸朗展
2006年に東京都現代美術館で開催された全景展から16年ぶりの大回顧展である。
自分は、2006年にはまだ大竹作品には出会っておらず、全景展の熱量を知れば知るほど、当時出会えていなかったことを後悔していた。

そこで、今回の大回顧展。
東京へ行くタイミングもあったが、隣県の富山に来るということで、二日目と最終日に足を運んだ。最終日は、音楽評論家の湯浅学氏を迎えたトークセッションもあり、両氏の作品や書籍から少なからず影響を受けている自分にとって、特別な1日になるであろう日であった。

文章冒頭のシーンに戻る。
実際に動く、ノイズの重なりから感じるもの、そこにあるのは、時間、熱量、好奇心である。
ダブ平に限らず、大竹伸朗が創ってきた作品(作品にならなかったものも想像して含む)に根底で通づるもので、その、時間、熱量、好奇心に我々は圧倒されるのであろう。
今回の凡そ500点の展示作品からも、その時間、熱量、好奇心を受け取った。

湯浅さんとのトークは、大竹さんが影響を受けた音楽をかけながら、大竹さんの作品への影響や時代性、音楽とは関係なくご自身が感じていることを語りながら進み、節々から刺激をもらった。

自分にとっての別海は?
そんなことを想いながら、展示やトークを鑑賞していた。大竹さんは、美大生時代に一時休学をして、北海道の別海町の牧場に身を寄せて、アートはアート以外のところで生まれるという確信を、体験を持って得ている。

どこに身を置いて、何をするのか。
どこにいたって、何をしてたって構わない。
一音でも一本でも今日残す。
毎日詰めてやっていないと良い出会いはない。
労働とはコツコツやるものなんだ。
ふと、遠藤賢司と重なった。
ちゃんとやれ、エンケン、そして、俺。

最後に大竹さんがどうしても伝えようとしていたこと。
旧友のラッセル・ミルズとの会話の中で、
「1番好きな単語は何か?」という大竹さんからの質問に、「erode」と答えたというエピソードであった。
どんな石でも、一点に一滴ずつ水を落とし続ければ、必ずへこむ。erode(侵食)する。

大竹伸朗は、承認を拒否する。
自分に固執しろ
いいねなんて、0でいい
でも、やるんだよ。

いいなと思ったら応援しよう!