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Lay It Down / Al Green * 2008 Blue Note


 これはドえらい事ですよ。例えるならJ.B.が墓から飛び出してオリジナルJB'sと新作を作って、その驚きでハレー彗星が地球にブチ当たったような衝撃です。もぅあまりの事に気が動転してフルチンで町内5周です。(←ちょっと控え目に表現してます) ベテランが新作を出すからには往年の輝きを維持しつつ、今のシーンからもリスペクトされる作品を出さなければ意味がありません。そういった意味ではチャカ・カーン、アレサなどはやっぱり凄い存在ですが、今回のアル大先生。真打ち登場って感じです。今まで辿った道のりが素晴らしすぎる故に、現在の旬のクリエイター達から歩み寄られるという理想的な制作状況と相成りました。フィリー勢の、ソウルからHip-Hopまで実によく分かってらっしゃる要人がこぞって制作に参加。クエストラヴに、ジェイムス・ポイザー、リチャード・ニコルズというアル先生をリスペクトしまくる連中がHi サウンドを奥の奥まで研究し尽くし、現在の空気感まで注入したコレ以上ないという傑作が誕生です。"Let's Stay Together"や"Call Me"あたりの全盛期Hiサウンド愛好者も、ディアンジェロウータン一派好きの最近のブラック・フリークまで皆納得の驚異的な音の塊りが目の前に突きつけられました。
 まず1曲目「Lay It Down」を聴いて胸一杯に。前2作でのHiの巨匠ウィリー・ミッチェルとの再コラボ以上に、ウィリー色が濃いそのサウンドは近年も繰り返される素晴らしきHiサウンドの安っぽい模倣に絶縁状を叩きつける意気込みさえ感じる2008年決定版Hiサウンド。MFSBの生き証人ラリー・ゴールドの手掛ける絶妙のストリングスも完璧すぎて、もし車で聴こうものなら涙で視界が遮られ間違いなく危険です。続いてファルセットも交えた緩急つけたアルの歌唱も冴えまくる「Just For Me」、Anthony Hamiltonもディープに交わる「You've Got The Love I Need」と、クエストラヴ一派が最高でハワード・グライムズとホッジズ兄弟が演ってるのかと間違いなく勘違いする至福の展開。そして名作「Tired Of Being Alone」を彷彿させる「No One Like You」、RZA好みのHiテイスト炸裂の「What More Do You Want From Me」とマジ完璧です。中盤もあちこちでマジック爆裂です。大健闘Corinne Bailey Raeがパートナーを務める悶絶スロウ「Teke Your Time」、またもやラリー・ゴールド仕様の弦が染みまくる「Too Much」、J.ポイザーのハモンドもグッと効く中でJohn Legendが参戦の「Stay With Me」と休む間無し。そして感動の終盤も愛の伝道師として面目躍如で「All I Need」、「I'm Wild About You」と快調に突き進みます。正直デュエット・パートナーも霞むほど、衰え全く無しの虹色ソウル・ヴォイスを今の時代に誇示してくれたアル大先生には感謝感激です。気になるのは、本当に要らぬ心配ですが星になる前のシナトラやレイ・チャールズがそうであったように、その直前に若手と名コラボをしていたってことを想起させることくらい。でもこの勢いやと数十年はバリバリで演ってくれそうで安心です。あぁそやけど、来日してくれんやろか。もう、たまらんです。
「愛と情熱も捨てたもんやおへん。凄まじき化学反応の結晶に拍手喝采です」

Lay it Down

What More Do You Want From Me







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