人におすすめされた映画を見た。

次の日、彼女に会うのが楽しみになった。
その映画のサムネイルは有名俳優の顔のアップで、映画の雰囲気や内容が伝わるものではなく、正直見たところで、どうかなあ、と思っていた。しかし、橋本環奈は人におすすめされたものは次会う時までに必ず見ておくらしい、というのが頭にあり、それに倣って見てみようと思った。そのサムネイルの俳優の演技は、非常に良かった。私の中では彼の演技は15年ほど前に見た学生向け恋愛ドラマで止まっていたので、申し訳ない気持ちになった。今まで勿体なかったとも思った。どうしても、国内で"イケメン俳優"と持て囃されバラエティにも出ていたりするタイプの有名俳優は、その人本人に見えてしまうのではないかと思ってしまっていたのだ。演じているなと思う瞬間もなかった。表情を作っているなとも思わなかった。その俳優の演技は、斜に構えて見ずにすみ、作品に没入させてくれるものだった。
作品自体も面白かった。展開のときどきに"いやいや、そこでそうなるかい?"とは思いつつも、結びが、自分にとって"こうはならないでほしい"と思ったものであった。とても残酷なエンディングだと思ったし、他の物語を描くこともできたはずでは?と眉を顰める気持ちもあったが、思っていた以上に嫌な終わり方をしていたのだ。この結末にならないでほしい、と思ったその画に、もうひとつ含みを感じるような流れが組み込まれており、グロテスクとしかいいようのない映像だった。
観た後に誰かに"この映画見たことある?"と話したくなる映画だった。
ラストはもっと救済のあるものでもよかったよね?とか、あのシーンは胸が痛かった、とか。
自分が感じたことと、他人が感じたことを比べっこしてみたい。
有難いことに、自分にはこの映画を教えてくれた人がいる。おすすめしてくれた彼女に、見たよ、と早く言いたい。面白かった、ありがとう、と伝えたい。あそこさあ、と話を振ってみたい。
人におすすめされた映画が面白かったとき、おすすめしてくれた人のことを好意的に捉えるのだということを初めて知った。また彼女のおすすめの映画を一本、教えてもらおうと思った。

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