精神科医が考察する NeverEnding Nightmares④ キリスト教と精神医学を繋ぐ

こんにちは。譲葉エミルです。
今日もNeverEnding nightmaresをプレイした考察をしていこうと思いますが、大先輩の名越康文先生が解説しておられるので、正直緊張しています。

 Twitterで実施したアンケートでは少なくない票が入る知名度のあるゲームです。気合い入れてやっていきたいと思います。

 発売から日が経っていることもあり、いきなりネタバレありでいきます。
未プレイのみなさんはお気を付けください。また、血糊がとぶような描写もありますので、苦手な方は先に進まないようにしてください。

 

#2 "In Somnis Vetaris" ――「夢に本性が現れる」

ステンドグラスの下のほうに「In somnis veritas」と書かれている。
こういった美術では、十字架の上に「INRI」と銘板を書くのが定番といえば定番。

 ラテン語で「Somnis」は「睡眠」、「Vetaris」は「真実」です。たとえば「In vino veritas」は「ワインに真実あり」という直訳ですが、「酒に酔うと本性が現れる」ということわざです。これにならえば、「In somnis vetaris」は「夢に本性が現れる」となるでしょう。
 エンディングで夢から覚めたとしても、このゲームを通じて描かれるのはトーマスの夢です。ですから、このゲームで描かれる大部分はトーマスの本性なのです。
 たとえば、彼が望んでいる妹との関係性や、自分への攻撃性です。

結局、襲ってくるのは自分や妹なのである。
それは己の攻撃性や、妹に対する欲動の裏返しでもある。


#3 抑圧と監視

 このゲームを通じて描かれているのは、抑圧と監視です。

花柄の壁紙に不釣り合いな男性の絵がベッドを睥睨している。

このゲームの中では強い男性らしさの痕跡が描かれるものの、母親のような保護的な女性はほとんど描写されません。母親の役割は妹に移り変わっており、妹は母親の代理なのです。
強い男性らしさ――男性性の誇張は、「もっと男性としてマッチョになるべきだ」「男性として自己を実現せよ」という強迫です。
親との関係性の悪さと抑圧が精神疾患につながるとされていた時代もありました。(明言されていませんが、ちょうどこの作品の舞台になるくらいでしょうか)

「In somis veritas」に従えば「全てを嘘にしたい」のである。
夢こそが、トーマスの本性で、それは抑圧されているのだ。


#4 自分への攻撃性

妹のことを散々書いてきましたが、トーマスの娘の存在にも触れておきたいと思います。「終末への転落」に登場する肖像画です。

左上にかがげられた肖像画には娘が描かれている。いくつものビンがみえる。
アルコールの濫用があったかもしれない。

はっきり「娘を失うのがつらかった」と書かれています。床や机には酒瓶とおぼしきボトルが見えます。酒瓶であればアルコールの濫用とみてよいでしょう。「娘を失った」ことによってアルコールに走った結果、ガブリエルが出て行ったとも想像できますが、ここまで、彼がゲーム中で見せてきた自分への攻撃性を思い返してみましょう。

「崩れた夢」では病院で目を覚まします。

両腕から出血している。
直達牽引など、見える範囲では明確な下肢損傷の痕跡はない。

高所からの転落――自殺企図の痕跡と捉えることもできます。これ以外にも、ゲーム中にはいくつか自傷そのものが描かれたシーンもあります。

#5 おわりに

 Nevereinding nightmaresの考察はこれでおしまいです。次回からは小ネタを用意しています。どうぞまたよろしくお願い申し上げます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?