ソーシャルファイナンス
事業の社会性に注目した
「ソーシャルファイナンス(社会的金融)」
について、概要を解説する
現在、社会的な課題解決や目的の達成にどの程度寄与するか」という視点で、社会的価値・社会的リターンを実現する新しい金融のあり方、事業の社会性に注目した「ソーシャルファイナンス(社会的金融)」が注目されている。
〈目次〉
1. ソーシャルファイナンスとは
2. ソーシャルファイナンスの要点
3. 「社会的リターン」とは
4. 「社会的投資」の現在
5. インパクト投資
6. まとめ
1.ソーシャルファイナンスとは
「ファイナンス」と言えば、一般的にはまず「コーポレートファイナンス(企業財務)」を思い浮ぶだろう。これは、企業財務に携わった経験のある方ならご存知の通り、営利法人である株式会社の企業価値を最大化するためのファイナンス手法が中心となる。
これに対して、今、「ソーシャルファイナンス(社会的金融)」という、対象を営利法人である株式会社に限らず、より幅広く、NPO法人、学校法人、財団法人などの非営利法人も含め、事業の社会性に注目したファイナンスのあり方が注目されている。
ソーシャルファイナンスは新しい金融の分野である。そのため、現時点、確立した定義がされていないが、一般的には「社会的リターンを実現するための金融」と言うことができる。
2.ソーシャルファイナンスの要点
ソーシャルファイナンスの要点を4つあげる。
①社会的(非金銭的)リターンを生み出すことを目的としたファイナンス手法である。
②社会的リターンの追求(社会的課題の解決)と社会成果の測定と評価が特徴である。
③寄付や助成金だけではなく、インパクト投資などの一定期間後の資金回収を想定する、資金循環の持続可能性のある手法が出てきている。
④社会起業家に資金を提供する新たな手段として注目されているが、世界的なスタンダードは、まだ確立していない。
3.「社会的リターン」とは
「社会的リターン」とは、「社会的な課題解決や目的の達成にどの程度寄与するか」という社会的価値実現の視点からリターンを見るものである。
金銭的な価値の実現だけでリターンを見るのは簡単だが、「社会的価値」については誰もが合意できる分かりやすい基準がないため、この統一的な理解をどう形成していくかということが世界中で議論されている。
4.「社会的投資」の現在
〈日本における事例〉
多摩大学 社会的投資研究所は、具体的な社会的事業の支援を通じて、国内のソーシャルファイナンス、その中でも特に、収益性(経済的価値)と社会性(社会的価値)を同時に追求する新たな投資手法である「社会的投資」の普及を目指す、日本初のシンクタンクである。
社会的投資研究所は、おカネが社会の中で好循環することで、社会がより良い方向に変わっていく未来を構想している。コーポレートファイナンスは、グローバルな資本市場(株式市場、債券市場等)をバックに、営利法人である株式会社がどのように企業価値を上げていくかに焦点を当てたものである。
しかしながら、今やどの企業でも行っているCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)活動だけにとどまらず、 CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)、ESG(Environment, Social, Governance:環境、社会、ガバナンス)、SRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)など、社会性や持続可能性に配慮しなければ、社会から受け入れられなくなりつつある。
5.インパクト投資
GIIN(※)の定義によれば、インパクト投資とは、「財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資」のことである。
GIINでは、インパクト投資の4つの中核的な特徴を、以下のように定義している。
①明確な意図をもって、投資を通じて、財務的なリターンと並行し環境や社会にポジティブなインパクトをもたらすことに貢献していること。
②エビデンスやインパクトデータを活用して投資戦略を設計すること。
③インパクトパフォーマンスの把握を通じて投資をマネージしていること。
④インパクト投資そのものの発展に貢献していること。
(※)
GIIN(Global Impact Investing Network)
インパクト投資の活性化を目的に投資家により創設されたグローバルなネットワーク。社会的・環境的なインパクト評価指標の標準化を目指している。
6.まとめ
現在、日本を含め世界的に社会問題が進展している。このような状況において、事業の社会性に注目した「ソーシャルファイナンス(社会的金融)」が大きな期待を集めている。
以上