【インタビュー記事】多言語を使いこなし、サハラ砂漠で超人的に働く先住民の話
モロッコのサハラ砂漠のキャンプをアテンドしてくれた砂漠の民=ベルベル人のかたと、語る時間がありました。このnoteはインタビュー記事です。
メルズーカ@モロッコのはずれの砂漠の入り口から、ラクダの背に乗って辿り着いたサハラ砂漠。
(連れてきてくれたラクダ。おとなしいが背の上は結構揺れて怖い。)
サハラ砂漠。
そこは、ただただ広がる太陽と砂漠。
こんな過酷な環境の下、観光客向けのキャンプで、世話人として超人的に働く先住民のかたと話をする機会がありました。
彼の話は「人間の本来持つパワーとは、こんなに凄いのか!」と驚くことばかり。日本で暮らし育った自分にとって、興味深い内容だったのでnoteに文章として残しシェアします。
はじめに、砂漠の民のかた=ベルベル人について紹介します。
ベルベル人って?
ベルベル人(ベルベルじん)は、北アフリカ(マグレブ)の広い地域に古くから住み、アフロ・アジア語族のベルベル諸語を母語とする人々の総称。北アフリカ諸国でアラブ人が多数を占めるようになった現在も一定の人口をもち、文化的な独自性を維持する先住民族である。形質的にはコーカソイドで、宗教はイスラム教を信じる。
一般的な外見はこんな格好です。
*お世話になったかたは、写真より若い20代後半のかたです。ベルさん(仮名)とします。
(以上、wikipedia より引用させていただきました。)
ベルさんを一言で表すと、陽気で屈強なおとこです。
グラップラー刃牙に出てくる刃牙のような感じ。しかし驚くことに多言語を使いこなし、キャンプに来た外国人の世話をテキパキこなしてきます。
ベッドメイキングだけでなく、料理キャンプファイヤ、音楽に至るまで。
あまりの超人っぷりに非常に興味がわき、話をはじめました。
しんの:色んな国の言葉が話せますね。何か国語くらい話せるのですか?
ベルさん:英語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、日本語、、、中国語と韓国語は難しいね。
しんの:どうやって覚えたんですか?
ベルさん:この仕事(観光客のアテンド)の仕事で会話の基礎を学んで、その上で街に出て短期間学校に通って覚えたんだよ。基礎を作った上で勉強したら覚えられるんだ。
しんの:キャンプファイヤーの燃えてる炭、手で持ってましたよね?
大丈夫なんですか?
ベルさん:砂漠でラクダを操る仕事をしているからね。屈強なんだよ。
特に手が強いんだ。楽器の演奏からラクダ、炭まで何でもござれさ。わたしの手を握ってみて。
ここで手をギュッとされて
しんの:イタタタ! ギブアップです! スゴイ握力! とんでもなく体が強いんですね。
ベルさん:サハラ砂漠生まれで育ってきたからね。
過酷な環境に思うかもしれないけれど、これが普通さ。2日間は不眠不休で働けるよ。実は目も良いよ。ただし、前は10km先まで見えたんだけど、スマホ使い始めて3kmまでに衰えたね。街に住む人は、夜の光を見てるから目が悪くなってるんだと思う。
どう考えても、超人的な人にしか見えないベルさん。
少しずつ過去のことを語ってくれた。
しんの:ずっと砂漠に住んでいるのですか?
ベルさん:生まれも育ちも砂漠だよ。もちろん、ずっとサハラ砂漠というわけではないよ。ブラックデザート(火山だった平原地帯)で伝統的なテント生活さ。まだ家族は、ブラックデザートに住んでいる。
もちろん、お金が出来てから、モロッコ中を旅したり学校にも行ったことあるけれどね。スマホもパソコンも使うよ。
(ブラックデザート&げんざいもここに住む、ベルベル人のかたのリビング。サハラ砂漠のあと、観光ツアーで連れてきてもらいました。)
しんの:年はまだ30になってない(見た目も若い!)とお聞きしたのですが、 何歳から働いていたんですか?
働き始めたのは6歳からだよ。
貧しかったからね。生きるためには働かないといけない。
ブラックデザートの化石が取れるところで、父親と化石堀をしたよ。
他には、サハラ砂漠で地下水が取れるところを掘ったね。15m掘らないといけない。砂漠の砂ってサラサラでしょ? 崩落したら生き埋めになっちゃう。凄い危ないんだ。
父親は未だ化石を掘る仕事をしているよ。厳格な性格だから、わたしが稼いでスマホを渡しても興味がない。そもそも教育も受けてないからね。
スマホの「Galaxy」渡したところで、「Galaxyってなに?」って。そこからさ。
でも、父親にとって砂漠と自然、労働。それが全て。
貧しくても関係ない。教育を受けてないからね。それでも幸せなんだよ。。
そう言ってベルさんは、お父さんの写真を見せてくれた。
たくまし過ぎる腕。どうみても「グラップラーバキに出てくるオリバー」にしか見えない。
しんの:ベルさんは、自身はスマホも使いこなすし語学の教育も受けられていますよね。キャンプファイアのときの、音楽も凄かった。どうやって今の状態になっていったんですか?
ベルさん:15年ほど前かな。モロッコ側の砂漠の終わり(メルズーカ)に家が建ち始めて。それが徐々に大きくなって、やがて観光客が来るようになったんだ。それで、観光客向けのサハラ砂漠ツアーの仕事が生まれたんだ。
観光用のラクダの世話や、サハラ砂漠のキャンプのアテンド。
そして、サハラ砂漠に泊まる人向けに食事を作ったり、伝統的な音楽を演奏したりする仕事が生まれた。
(ベルさんが朝食に作ってくれたベルベル風オムレツ。トマトとスパイスが効いていて美味しいかった。)
この仕事は、砂漠で過酷な労働をするよりも稼ぎが良い。
この稼いだお金を元手に、モロッコ中を見て回ったり、語学を勉強して、話せるようにしていったんだ。
砂漠で生まれ、育った知見を生かして、オーナーに砂漠のテントの提案もした。部屋を広めにしたから、寒暖差も緩やか。昼間は涼しいでしょ。
お陰でオーナーから重要な存在として評価して貰ってる。給与も良いんだ。
(ベルさんが監修したというサハラ砂漠のテント、快適でオシャレでした。)
しんの:街へ出て行こうとは思わないんですか? 語学も堪能だし、料理も楽器の演奏も一流だから、もっと稼げそうな気がします。
ベルさん:思わないよ。サハラ砂漠は静かで良い。砂漠に空に、自分。
とても静か。街は人が多いしうるさくて好みじゃないんだ。
それにモロッコには、ベルベル人とアラブ人がいるんだけどね。
もし、アラブ人と日本人はじめ、観光客が争っていたら警察は助けに入る。
けれど、俺らベルベル人とアラブ人だったら無視さ。
特にアラブ人がマフィアだったら、警察の方が逃げてくんだ。
俺は砂漠の男だから体の屈強さには自信はあるけど ・・・
気分の良いもんじゃないよね。
でも、日本には行きたいよ。数年後、日本に観光に行く予定なんだ。
すごく楽しみにしてる。日本語も話せるしね。
しんの:日本はお好きなんですか?
ベルさん:日本人は、好きだよ。基本的に礼儀正しくすごく接しやすい。
ただもっと自己主張した方が良いね。砂漠育ちからすると、それではご飯にも有りつけないよ。シャイだと生きていけないね。
もっと主張した方が良いよ。
しんの:いろいろお話を聞かせて貰い、ありがとうございました。
以上が、ベルさんから聞いたお話です。
まとめ
サハラ砂漠という「必死に生きなければ死ぬ」という過酷な環境のなかで、かえって「命」を燃やすベルさん。
超人的な体と頭脳をもち使いこなすベルさんを見て、「文明に囲まれて豊かな暮らしをするというのは、一方的にメリットを享受しているだけでなく、代償として視力や体力を失なうこと」にもつながっているだな、と感じました。
また、かたくなに文明を受け入れずとも、自分のルールのしたで活きているお父さんのお話が印象的でした。便利さだけが幸せにはならない。
便利な時代だからこそ、自分に軸を持ち幸せを決める姿勢は、現代人として学ぶべきところが多いと感じました
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