花粉症の季節に知っておきたいステロイド薬と眼圧(緑内障)について👀
花粉症の季節がやってきましたね!
「目の中が痒い、目の周りが痒い・・・」
眼科には毎年繰り返される症状の改善を求めてたくさんの患者さんがいらっしゃいます。
私も渡米し2年が過ぎ、家の周りがブナ科のオークという木々に囲まれている影響からか、この3月は目の痒みやくしゃみに悩まされていました。
通常のアレルギー性結膜炎では、抗アレルギー点眼薬3−4回/日で症状が良くなる方が多いです。しかし、中にはアレルギー症状が強い場合にステロイドの点眼薬や軟膏を使わないと症状がおさまらない!という方も多くいらっしゃいます。
そしてよく外来で遭遇し問題となるのは、眼科以外の科でアレルギーの内服のお薬と一緒に、眼科のアレルギー点眼薬やステロイド点眼薬・軟膏を処方されているケースです。
そこで、アレルギー性結膜炎やアトピー性皮膚炎に対して、ステロイドの点眼薬や軟膏を使っている方にぜひ!知っておいてもらいたい事を今回はお伝えします。
【局所ステロイド薬と眼圧について】
やはり一番気をつけていただきたいのは、ステロイドの使用による眼圧上昇です。医師である親戚(眼科医ではない)でさえも、眼科を受診せずに、目の痒みに対してステロイド点眼と軟膏を長年使用して気付かぬ間に眼圧が上昇してしまい、知らず知らずのうちに中期の*緑内障になっていたということがありました。
【*緑内障とは視野が欠ける病気で日本人の失明の主な原因の一つです。目の硬さ(眼圧)が病気の進行に最も関係しますが、眼圧が正常であっても緑内障と診断されることがあり、自覚症状を伴わずに進行することが特徴です】
それほどステロイドの使用と眼圧には注意を払う必要性があります(もちろん適切な使用方法で、眼科受診のもと使用する分には大丈夫です)。
ステロイド使用による眼圧上昇は可逆性のため、通常の場合は早期に発見して、点眼を中止したり回数を減らすことによりしばらくして眼圧は正常化します。
しかし、高濃度のステロイド点眼や軟膏を「眼科に受診することなく!!」使用し続けると知らず知らずのうちに眼圧が上昇して、気付いたら緑内障になっていた!というケースもしばしば認めます。
一番やっかいな点は・・・
「眼圧が徐々に上昇しかなり危ない値に達しても自分では気がつかない!」ことがほとんどだからです!よく患者さんから、眼圧が上がったら眼が痛い感じがしますか?見えづらくなりますか?といった質問を受けます。
急激に眼圧が上昇する場合を除いては、眼圧が高くなっても眼科で検査をしない限り、ご自身で気が付くことはほぼ無いといってもいいでしょう。
過去の報告では、高濃度ステロイド点眼である0.1%ベタメタゾン点眼薬を1ヶ月使用継続すると、健常人でも約30%は眼圧6mmHg以上、約5%では16mmHg以上の眼圧上昇を引き起こすタイプ(ステロイドに感受性の高いステロイドレスポンダー)がいることが分かりました。1)
そのため、すでに緑内障の診断を受けて眼圧を下げる点眼薬を使用されている方で、目の痒みに対しステロイド点眼薬や軟膏を使用する場合は担当医と相談なさってから使用してみてください。
あと注意していただきたいケースは、
「アトピー性皮膚炎とステロイド眼軟膏」
アトピー性眼瞼炎による目の周りの痒みに対しても、ストロイド軟膏を使う場合もあります。
ほとんどの方は大丈夫ですが、中には使用によって眼圧が上昇する患者さんや、ステロイド軟膏を病院に受診することなく長期的に使用し、眼圧上昇から緑内障になり、気付いたときには重度の視野欠損が生じている場合もあります。
眼圧が高い状態が長期間に及ぶほど「目の血流」も障害されて、緑内障はどんどん進行していきます。
前にもらったステロイドの目薬や軟膏がまだ沢山あまっているから、今年は眼科なんて忙しくて受診していられないよ!という方がいらしたら、考えを改めて、定期的な眼圧検査を受けるようにしてください。
まとめ 「正しく使用し、定期的な眼圧や眼底検査をしていれば問題ありません!」
1.花粉によるアレルギー性結膜炎や眼瞼炎で眼の痒みに対して長期間ステロイド点眼や軟膏をしている方は必ず眼科で定期的な眼圧検査や眼底検査をするようにしてください。
2.アトピー性皮膚炎の方でステロイド軟膏を目の周りに使用されている方(他科で処方されて)も眼科での定期的な眼圧・眼底検査が重要です。
3.最後に、免疫や間質性肺炎などの病気に対してステロイド薬を長期間内服していらっしゃる方は、副作用として眼圧上昇や白内障が生じることもあり、定期的な眼科受診をおすすめいたします。
そして、「ステロイドの点眼や軟膏も人生でこれまで使ったことなんてないよ!」という方がいらっしゃった場合、自覚症状がなかったとしても・・・
「40歳を過ぎたら一度緑内障の検査を!」3月7日-13日 世界緑内障週間
最後まで読んで頂き有難うございました。
眼科医はしりゅう👀
Twitter (@RyuyaHashimoto)
参考文献 1) MF Armaly. STATISTICAL ATTRIBUTES OF THE STEROID HYPERTENSIVE RESPONSE IN THE CLINICALLY NORMAL EYE. I. THE DEMONSTRATION OF THREE LEVELS OF RESPONSE. IOVS. 1965
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