免許取り消しの思い出 その⑪ いざ実技試験
田園風景の中で
私の通った免許センターは郊外にあります。最寄駅から免許センターまではほぼ歩いて通い、たまにバスに乗ることもありましたが、とちらも駅からまっすぐの一本道で、周りにはコンビニやレストラン、商店などが立ち並んでいたものの、それ以外の周囲の道路事情は全く知りません。
そんな具合でしたから、とにもかくにも一度路上を走って道路事情、試験の様子などを体験するしかありませんでした。
最初にその日のコースの発表があり、あとは順番を待ちます。こちらも確か自分の前の受験者の車の後部座席にのったように記憶しています。
そしていざ私の番。
免許センターを出ると、駅からの道の様子とは打って変わって田園風景をひた走る感じです。
ここで何に一番気を使ったと思いますか?
なんと制限速度の順守です。信号もあまりない、のどかな道をひたすらまっすぐはしる時間が長く、その状態で制限速度の40kmを維持し続けるのは至難の業でした。免許を持っていてそんな運転を強いられた記憶がないくらいです。
ちいさなコース内をあっち行って、ここを曲がって、次は踏切、みたいなせわしない運転、安全確認は必要ありませんでした。
とにかくスピードメーターとにらめっこです。
交差点などもありましたが、時間帯もありそう混雑している状況ではなかったので、それほど苦労せず通過することができました。
そして試験場に戻ってきました。
試験官から試験場内のある場所で一時停止するよう指示され、課題である縦列駐車か方向転換かどちらか忘れてしまいましたが、どちらかの課題に挑みました。どちらも実際に練習する機会はなかったのでYou tubeで何度も何度も教習所の動画を見てイメージトレーニングを重ね準備はしていました。そして確か本免の実技試験の前の休憩時間を利用して、縦列駐車と方向転換の場所を確認し、イメージトレーニングと重ね合わせて準備したような記憶があります。
場内での課題を終了し、車内で試験官から講評をいただきました。細かいことは覚えていませんが、かなり多岐にわたった注意事項が言い渡されたような気がします。
そして、最後に試験官からの言葉...
「合格です」と。
私は確かこの時だったと思うのですが、試験官の前で涙しました。免許取り消しから私が今まで味わった気持ち、経験、それらが全て報われたように思えたのでしょう。涙は止まりませんでした。試験官もびっくりしたと思います。いやもしかしたら彼らは何度もこういう光景に出くわしているのかも知れません。
今思えばなぜ試験官が「合格です。」の一言の前にあれこれ注意事項を指摘したのが少しわかるような気がします。その時は「四の五の言わずに結果だけ気持ちよく教えてくれればいいのに」と思ったものですが、あれは思いやりだったのでは?と。
確かに事故発生数を減らすという警察の面子もあるのかもしれません。ですが、『私に安全運転をするドライバーになってほしい。』『もう2度と免許取り消しとなるようなことは起こしてほしくない』そんな願いが込められていたと思うのです。