少女漫画、虚構と現実のバランス論②いくえみ綾先生編

第2回目、

いくえみ綾先生。
潔く柔く…全巻読んだ後「すごかった…」と思わず口にしてしまう少女漫画。当時流行りの「喪失」をテーマにした只の面白少女漫画と思いきや、2巻の、「あんぱん」なんて言われてる、地味で子供っぽいJK瑞希が後輩の男といとも簡単に体の関係を持ってしまうところなんか、そのスピード感に、一気に現実に引き戻されて背筋が伸びる。こういう子が処女を失う時ってこういう感じだし、こういうスピード感だし、こういう会話なんですよ、多分…ていうか絶対…

あなたのことはそれほど…これは本当、ドラマも素晴らしかった。ドラマは、前半完全波瑠目線で見ていて東出キモいという感情でしかなかったのに、最終回で、東出に完全感情移入して大号泣という、「主人公」とは、視点の1つでしかないのだ、ということを教えてくれる凄いドラマだった…ドラマですよ?ドラマでそれを見事にやってのけたのが凄かった…。「君が誰かに恋をしていたように、僕も君に恋をしていたことに気づかなかった? 君と同じように、僕にも気持ちがあるんだよ」って東出に言われた時、私は「私と同じように男性にも気持ちがある」って知らなかったので、なんだか罪悪感?でわんわん泣いてしまった。原作はというと、原作漫画の方が美都をいやらしく、クズ女っぽく見せていて非常に良い。何も考えずに読み進めていても、「最後にやろう」の所で震える。そして、この作品に限っては、メイン登場人物4人全員、紛れもない、痛い程の現実。いや、不倫をしたことも無ければ、不倫をしている友達も居ないので、完全に推測でしかないのだけれど。最終回、どうしようもない現実過ぎて、「ザ・ノンフィクション」かと思った。あと、この物語に、「あなたのことはそれほど」というタイトルを付けるセンス、このタイトルが、全て。

基本的にいくえみ綾先生の作品の、ガーリーメイク、ガーリーファッション、茶髪巻き髪、喋り方フワフワぶりっこな感じの可愛い女、一番現実見てる。「ぶりっこ」の人間味って可愛い、そういう話だけで簡潔させてくれないんですよ、いくえみ綾先生は…。しかし、いくえみ男子、(この場合のいくえみ男子とは、有島のような奴では無い。『プリンシパル』の和央や、『潔く柔く』の梶間、『G線状のあなたとわたし』の理人のような男のことを言っている)これは完全なる虚構。こんな男子たちは、かなり居そうで、多分、探せばどこかには居るのですが、我々の周囲三親等以内に居ますか?居ません。中身「いくえみ男子」としても外見「いくえみ男子」としても、中身と外見どっちも「いくえみ男子」なことなどは、無い。絶望。居たら教えてください。そして紹介してください。絶対に。

結論いくえみ綾先生の他、「虚構と現実の間」を描かせて右に出る者、いません。いくえみ作品、そこに「虚構と現実の間」、その全てがある。



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