可塑剤って何?プラスチックやゴムを柔らかくする不思議な物質の仕組みと種類

可塑剤とは何でしょうか?

プラスチックやゴムなどの材料に柔らかさや弾力を与えるために添加する物質のことを可塑剤と呼びます。可塑とは「柔らかく形を変えやすい」という意味です。

可塑剤はどのようにして材料を柔らかくするのでしょうか?

可塑剤は、材料の分子の間に入り込んで、分子同士の引きつけ合う力を弱めることで、材料を柔らかくします。例えば、塩化ビニル樹脂(塩ビ)は常温では硬い樹脂ですが、それは塩ビの分子同士が強く引きつけ合って形を保っているからです。ところが、これを加熱すると、分子の運動量のほうが大きくなり、分子間の距離が広がってきます。つまり、“軟らかく”なるわけです。その状態の時に可塑剤の分子を入り込ませると、塩ビ分子の接近が妨げられ、冷却して常温に戻っても“軟らかい”状態を保つことができるようになります。これが、塩ビを軟らかくする可塑剤の働きです。専門的には可塑化と呼ばれています。

可塑剤にはどのような種類があるのでしょうか?

可塑剤には、酸とアルコールから合成されるエステル化合物が多く使われています。酸とアルコールの種類や組み合わせによって、多種多様な可塑剤が作られています。可塑剤には、以下のような性能が求められます。

  • 相溶性が高く、材料とよくなじむこと

  • 可塑化効率が良く、最少量で必要な柔らかさを実現できること

  • 揮散や溶出しにくく、空気や水に影響されないこと(低揮発性、低移行性、耐油性)

  • 耐寒性、耐熱性、耐候性、耐汚染性などが良いこと

  • 電気の絶縁性が良いこと

可塑剤の種類としては、フタル酸系、アジピン酸系、リン酸系、トリメリット酸系などがあります。その中でも、フタル酸系は代表的な汎用可塑剤として広く使われており、その生産量は全可塑剤のおよそ半分を占めています。フタル酸系の可塑剤には、以下のようなものがあります。

  • DOP (DEHP) (Dioctyl phthalate) フタル酸ジオクチル

  • DINP (Diisononyl phthalate) フタル酸ジイソノニル

  • DIDP (Diisodecyl phthalate) フタル酸ジイソデシル

  • DBP (Dibutyl phthalate) フタル酸ジブチル

可塑剤はどのような用途に使われているのでしょうか?

可塑剤は、塩化ビニル樹脂(塩ビ)を中心としたプラスチックを軟らかくするために用いられ、暮らしの中の様々な場所で使われています。以下に例を示します。

  • 各種電線の被覆材

  • 壁紙、化粧フィルムなどの内装材

  • クッションフロア、タイルカーペット、ビニル床シートなどの床材

  • 自動車のコーティング材、シーリング材、インパネ表皮

  • ターポリン、防水シートなどの建築資材

  • 農業用フィルムやホースなどの農芸資材

  • 食品用ラップフィルム

  • 医療用輸液バッグなど

このように、可塑剤は私たちの暮らしに密接に関わっています。

可塑剤には何か問題はないのでしょうか?

可塑剤には、環境や健康に影響を与える可能性があるという指摘もあります。特に、フタル酸系の可塑剤には、環境ホルモン様作用の疑いがあり、シックハウス症候群の原因となったり、自動車の内装に使われている可塑剤の揮発性有機化合物が車内に籠って新車のにおいの原因となったりする懸念も示されています。また、可塑剤を豊富に含有するプラスチック製品が他のプラスチック製品と接触した状態が長時間維持されると、融合し剥がせなくなる危険性もあります。

これらの問題に対しては、可塑剤の安全性に関する科学的なデータの収集や評価が行われており、国際的な基準や規制に基づいて適切な管理や対策がとられています。例えば、食品用ラップフィルムや医療用輸液バッグなどには、低毒性や低移行性の可塑剤が使用されています。また、乳幼児の玩具には、フタル酸系の可塑剤の使用が禁止されています。

可塑剤は、私たちの暮らしを便利にしてくれる物質ですが、その一方で、環境や健康に与える影響にも注意が必要です。可塑剤について正しい理解を持ち、適切な使用や処分を心がけましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?