【備忘録】分かりやすい報告資料の作り方

 最近仕事で、社内のとある報告会に投稿を行った。なかなかに勉強になったので、今回はその中でのフィードバックを中心として考えた事などを忘備録として書く。
 この文章に辿り着く人はあまり多くないと思うが、せっかくなのでここに書く内容を実際に生かして、人に伝わりやすい文章にしようと思う。

前提

 今回僕が作成したのは技術報告のパワーポイントだ。ここで紹介する内容は、前半はおそらく資料作成全般に言えることで、後半に進むにしたがって技術資料寄りの内容になっていく。おそらくパワーポイントでなくても参考になる内容だと思う。

分かりやすい報告の作り方

わかりやすい資料とは

 今回僕が書こうとしているのは「わかりやすい資料の作り方」だが、具体的にどうであれば「わかりやすい」かというとそれがなかなか分かりにくい。
 おそらく明確な答えはないのだが、発表全体の結論がある程度伝わることを、細部の詳細な説明よりも優先することで、わかりやすく「感じられ」やすい。一部が事細かに伝わったとしても、それが全体の結論に結びつかなければ分かったことにはならない。「3p目はよう分からんかったけどまあ大体何やってたかは分かった」の方が、「3p目はちゃんと分かったけど結局それがなんやったのかはよくわからんかった」よりも良いのだ。

 (おそらくこれは、「人が何に意味を見出してどうやって納得しているか」という問いの答えの形態のひとつで、僕はまだこれを論理的に説明する方法を見出していない。しかし、聴講者側の立場で考えるとおそらく誰もが同じように感じるのではないかと思う。)

 ともかく僕は今の所天下り的にこれを受け入れている。ということで、資料作成に入る。

背景を完備することの意義

 大体の発表において最初に説明するのは背景であるが、内容に対して一番どうでもいいのも背景である。と思っていたが、今回僕はこの背景を完備することの意義を2つほど見出したので、自戒も込めて紹介する。

 1つに、背景部分を丁寧に説明して聴講者の目的意識と結びつけることで初めて、自分の内容を当事者意識を持って聞いてもらうことが出来る。その内容が、あなたにとっても私と同じ利害関係のもとに有意義であると示すことは、どうやらアジテーションという意味で有効なのだ。
 そもそもなぜアジテーションする必要があるかについては、例えば社内で行われるコンペティション的な発表会を考えてみると分かりやすい。あらゆる行為は利潤の追求のために行われるので、審査をする人たちからすればその内容が自分たちの利潤にどう影響するかが最大の関心事であり、その部分に訴求できなければ報告自体が意味をなさなくなるのだ。

 また2点目として、内容のバランスをとるのにも役に立つ。読み物として展開する場合はあまり問題にならないが、報告として行う場合には筋は一本で通っている必要があり、結論を導くのに使われない情報は可能な限り排除する必要がある。特に僕の場合は細部に踏み入り過ぎるきらいがある為、背景を完備して聴講者の目的意識を明確にすることは、聴講者がどのくらい細部を気にしているのか自分に問いかけるきっかけになった。

進行の下敷きにするものの存在

 内容の説明を進めるにあたっては、聴講者が内容を理解できるように流れを考える必要がある。そして要はこれが難しいのだが、便利な方法がある。

 一歩引いて考えると、もし聴講者が発表全体がそもそもどういう流れで進んでいくかを理解していれば、内容についてもおのずとその流れに従って理解してもらえる。さらに言えば、仮に細部の理解が抜け落ちたとしても全体の大きな流れ自体からは取り残すことなく進むことが出来るため、上で説明したような最終的な納得感を担保することにも繋がる。

 そして、この発表全体の進み方、つまり構成を理解してもらうために有効なのが、何かしらの図表やフレームワークを下敷きとして進行するという手段だ。
 例えば、発表の前半でいくつか空きのある表を見せ、この空欄をこの順番で説明しますと宣言する。そして、内容を1つずつ説明した後にその表を改めて示し、結果をまとめて紹介する。そうすれば、自分は今までこの表の空いていた部分について聞いていて、今その入れ子を脱したのだと理解できる。

 もしこういった図表が少し複雑な内容となる時には、「これは隣のとはここが違う」を視覚的に理解できるような工夫をする。人は自分から遠いものほどその周囲との相対的な関係で理解するので、隣との関係がすぐにわかると全体も理解しやすいし、口頭での説明もしやすい。
 さらに、この図表としてフレームワークを用いれば、下敷きにすると同時に検討の網羅性についての信憑性を上げることにも繋がる。

話がどう向かうかを示唆する

 先の内容に関連してもう一つ進行の助けになるのが、トピックの変わり目でその先の方向性を示唆するということだ。タイミングはトピックの変わり目の直前でも直後でもいい。
 先のセクションの1段落目の2文目に「便利な方法がある。」と書いたのが、これを実際に使ってみた例だ。

 (ビジネス書では「マインドセットの準備」というような言い方をされていると思う。僕もどこかで読んだことはあったが、実際に使ってみてようやく分かってきたこの頃である。)

 これは先の「進行の下敷き」と大きさが違うだけで、要は同じ考え方である。内容がどう進んでいくかを念頭に置いてもらえれば、あとはそこに具体的な内容をあてはめさえすればそれで理解できるのだ。
 そして、同じような方向付けはあらゆるスケールで行うことが出来る。それが全体の背景、つまり聴講者の当事者意識に結びつくと、しっかりと伝わる報告となる訳である。

個別的な表現での注意点

 ここまでは、主に報告の全体像と進行についての内容であった。ここからは、その1つ1つの表現の中で思ったこと&指摘されたことなどを書いていく。性質上、ここからはTips集のような形になるのではと思う。

単語の扱いについて

 同じ内容を別の言葉で言うと混乱を招く。(一人の登場人物に複数のライトモティーフを用意しないのと同じだ。)また、言い換える時には言い換えているとはっきり分かるようにする。ある内容について視点の転換が行われる場合には、同じ内容を別の言葉で言い換えることはむしろ有効な手段になる。

 また、ある単語をその発表の中で初めて使用する時には、それがどのような意味として捉えられるかに最大限気を遣うべきである。なぜなら、その単語が初めて登場する時の用法が、プレゼン内でのその言葉の意味を定義してしまうからだ。その単語が他の場所であまり使うことが無い単語である場合は尚更である。ここでの定義やイメージが曖昧になると、内容の理解も曖昧になるし誤解にも繋がる。

事実の扱いについて

 さらにこの辺りからは技術報告向けの内容になると思う。

 ある事実を紹介するときには、その事実が事実であるのはどこまでなのかを明確にする。事実を単に1つの事実として捉えるのではなく、どんな概念もそれを構成する様々な概念を特定の方法で取りまとめたものであるという理解を常に保持しておく。あるいはベン図のイメージを持っておくのも有効かもしれない。一言で言えばきわめて論理的に処理する必要があり、どの種の誤謬も起こり得ないような表現が求められるということだ。

例)
× ***は**によって生じている。
△ ***は**時に生じている。
〇 ***は少なくとも**の終了時には生じている。

 この例を見ると、詳細な表現はむしろ余白を生むということが分かる。3つ目の文は表現としての曖昧さはほとんど残されていないが、それにより事実の余白、未検証の領域が顕在化している。逆に1つ目の表現は、「によって」という表現の曖昧さによってかろうじて成立している。このような曖昧さも自然言語の長所の一つではあり、文脈よっては1つ目の表現も最適な選択肢となりうる。必要に応じてそのスコープを適切な曖昧さで表現する必要があるのだ。だが、技術者としては基本的に、事実に対して限りなく忠実であるべきだ。

結果の紹介にとどまらず結果系を成すこと

 単に「~~すると~~した」という事実の紹介にとどまるのではなく(曰く「そんなことは技術者じゃなくても言える」)、「~~すると~~した。したがって~~は~~である」という様に、結果を解釈してその結論(意味、メッセージ)を出さねばならない。形而上学的にいえば、事実の羅列はそれ単体では論理的体系をなさない。それが論理的体系をなすには、それぞれの事実が意味論的に相互に関連する必要があるということだ。

例)
・**が**である場合のみ**に**が発生した(結果a)。このことから、**は**により生じている(結論A)。

 また、その際にその結果の結果系における位置を明確に出来れば、全体の結論に向かいやすくなる。

例)
・~~~~(結果b)。 これにより、先の結果aによる結論Aが裏付けられた(結論B)。
・~~~~(結果b)。この結果は、~~~~と考えられることから先の結論Aと矛盾するものでないが、この結果のみから仮説Xについて断定することは出来ない(結論B)。

あとがき

 思ったよりも長くなってしまったので一旦終了するが、そのうちまた加筆していくと思う。
 前半部分は自分としては上手くまとめられたと思う。



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