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レスリー・チャンよ永遠に

4月1日は故レスリー・チャンの命日だった。
彼の死からすでに21年が経ったという。時がたつのは早いものだ。
レスリー・チャンは2003年の4月1日、自らこの世を去った。人気絶頂の香港俳優の死は、当時の映画ファンの多くに衝撃と強い悲しみをもたらした。
レスリーは人懐こくやわらかな笑顔がトレードマークだった。そんな彼を偲んで、当時の彼と香港映画に想いを馳せる。

私が初めて彼の名を知ったのは、「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」が最初だったように思う。甘いマスクと陰のある佇まいに一目で魅了された。その後「さらば、わが愛/覇王別姫」での妖艶な姿にノックダウンされ、私の心にレスリーの名は深く刻まれた。

そんな彼は俳優を始める前、アイドル歌手であった。彼のファンになり、当時の映画雑誌を漁ってそれを知ったときは妙になるほど、と思ったものだ。なにせ彼が劇中で見せる歌唱シーンはどれも本格的で、甘い歌声と安定した歌唱力が際立っていたのだ。歌って踊れる眉目秀麗な俳優。売れないわけがない。当時、周囲の映画ファンの女子たちはみなレスリーに熱視線を送っていたように思う。

あの頃香港映画シーンは本当に賑やかだった。ジャッキー・チェン、トニー・レオン、チョウ・ユンファ、アンディ・ラウ…などの超人気俳優陣のハリウッド進出も相次いた。世界規模で香港俳優の名が知れ渡る、そんな流れの中にあって、レスリーは異彩を放っていた。甘いマスクと強い影を感じる瞳。強さより弱さや儚さを演じることに人一倍長けていた彼は、今思えば演技だけでなく、彼自身の脆さ、繊細さをさらけ出して演技へと昇華させていたのだろう。当時はインターネットで情報を得ることはなかったので情報は主に雑誌から得ていた。またテレビで稀に見られる彼のインタビューなどから、彼が繊細で真面目な性格であることを伺い知ることができた。

彼の死はあまりに早すぎた。
ある日テレビのニュースで知った彼の自殺。当時は今ほど頻繁に自殺という言葉を聞かなかったせいもあろうが、ニュースを聞いて全身に衝撃が走り、言いようのない気持ちになったのを覚えている。遠い国のあったこともない俳優の死が、大人になりかけていた私に大きなショックを与え、彼の死を通して、表現者の苦悩や葛藤というものについて考えるようになった。

彼の死後、長い時間を経て再び香港映画を観るようになった。ブエノスアイレスの排他的な雰囲気に浸り、男たちの挽歌や欲望の翼の味がわかるようになった。大人になって観る香港映画はまた別格だ。それまで理解できなかった不条理や悲哀がひしひしと伝わってくる。

レスリー出演作品は数多く、きっとファンの数だけおすすめ映画もあるだろう。私のお勧めはこちら。


さらば、わが愛 /    覇王別姫

レスリーを知るにはやっぱりこれでしょう。
多くを語らないけれど、感情があふれ出す表情に感涙必至です。


ブエノスアイレス

もう一人の溺愛スター、トニー・レオン共演の珠玉の名作。
ウォン・カーウァイ監督ならではの撮影手法、ブエノスアイレスの街並みと相まってとにかく美しく、悲しい。
時がたっても色あせることない、タイムレスな作品。
この作品は題材のせいなのか、意外と観ていないという方が多いので残念。


欲望の翼

こちらもトニー・レオン共演。
ウォン・カーウァイ監督とトニーとレスリーが揃えば、それだけで素晴らしいものが生まれる気がするから不思議。
ウォン・カーウァイ監督は日本でも大人気なのに、この手の映画はなぜかいつもミニシアター。大きな映画館で観たい。いや、大きなスクリーンのミニシアターで、観たい。

男たちの挽歌

最後はこちら。キット役のレスリーは、この映画で一躍人気俳優に。のちの活躍につながる大事な映画。帝王チョウ・ユンファの大熱演も見どころです。大好きな映画ですが、見るたびに劇団ひとりさんを思いだしてしまうのは私だけでしょうか(笑)。


映画の中で見る彼は今でも変わらず、優しい笑顔で微笑んでいる。
没後21年目の今、改めてレスリーと香港映画の魅力を一緒に楽しんでいただければ嬉しい。


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