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パニック発作を和らげよう〜③腹側迷走神経系の進化と脳の発達
不定期でお送りしているシリーズ、3回目は、腹側迷走神経系の進化と脳の発達について。
前回の記事で、「ヒトは、強い不安や恐怖を感じた際、「凍りつき」と呼ばれる原始的なシャットダウン機能で、絶体絶命のピンチから奇跡的に身を守っているのだ」、と言うお話をしました。
「硬直して何も出来なくなってしまう人」と、「すぐに機転を利かせて行動出来る人」の違いは、脳の成長過程にあると言われています。
ピンチの際に、「硬直して何も出来なくなってしまう人」は副交感神経系の「背側迷走神経系」が優位になり、「すぐに機転を利かせて行動出来る人」は、同じ副交感神経系でも、前者より「腹側迷走神経系」が発達し優位に働きます。
どちらが良い・悪いということではありません。交感神経系、副交感神経系の腹側迷走神経系、副交感神経系の背側迷走神経系の3つのうち、いずれかが優位のままだったり乱高下してしまう状態だと、苦しくなるよ、というお話です。
では、逃走・戦闘するでも、凍りつくでもなく、仲間と話し合いで分かり合おうとするこのコミュ力高めな腹側迷走神経系が、どのように発達して来たのかを追ってみましょう。
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深海時代、陸上・ジャングル時代を経て、地球上に哺乳類が現れます。
哺乳類の脳が発達していることは明白ですが、その為に栄養価の高い食べ物を摂る必要がありました。
脳の為に栄養価の高い食べ物を入手し食べているとどうなるか?
当然、頭蓋骨が大きく成長し始めます。
産道を通る為、赤ちゃんは頭があまり大きくならない内に未熟で生まれて来るしかありませんが、ジャングルでは、未熟な赤ちゃんはより狙われ易い。
また、効率の悪い捕食や、不安定な生活では赤ちゃんを肉食獣から守れませんし、子孫を残すことも難しい。
そこで、より能率的かつ安全に生き延びる為に、人類は独自の生存戦略を立て、集団で交渉や助け合いをしながら子育てをするようになります。
※諸説あります。
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集団生活では、気持ちを伝え合ったり、必要なことを伝え合うことが重要になります。
この社会的な交流=コミュニケーションが、腹側迷走神経系を一気に発達させました。
腹側迷走神経系は、『安全と絆の神経系』とも呼ばれ、「安全である」と合図を出し合ったり、「安全である」と感じる時、更に活発に働きます。
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腹側迷走神経系は、妊娠7ヶ月頃から次第に発達し、生後半年でもっと発達、25才頃には十分に発達するのだそう。
つまり、子供の頃に安心して育った人は、腹側迷走神経系がより発達していて、適切に安全と危険を見分けられる可能性が高く、反対に、不適切養育により親の機嫌をうかがって育った人は、腹側迷走神経神経系が未発達の為に、「安全である」と合図を送ったり感じたりする機会が稀で、常に危険信号ばかりを探す傾向がある、と。
これが、「硬直して何も出来なくなってしまう人」と、「すぐに機転を利かせて行動出来る人」のベースにある違いです。
※先に述べた通り、どちらが良い・悪いということではありません。
※ここで鍵となる「ニューロセプション」については、今回は割愛。
では、脳の発達によって気質が決められてしまい、安全を得られないまま大人になってしまったわたし達が、腹側迷走神経系を優位にする為に、これから何をしたら良いのか?
今の自分に何が出来るのか?
次回は、敏感に傷付いてばかりのこころとからだを治癒し、「安全感」を獲得するコツについてお話したいと思います。
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