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【実録!ロマンス詐欺】Day10(2): 中の人、文学青年疑惑


このnoteでは、ロマンス詐欺により3ヶ月で3500万円をむしりとられたアラフォー女子が、この先同じ思いをする人が一人でも少なくなるよう、自身の体験を当時の心情とともに包み隠さず公開します。


昨日のnoteを投稿した時点で、私はようやくDay10までたどり着いたと一息つこうとしていた。
しかしながら、ロマンス詐欺師Carlとのその日のWhatsAppのやり取りをもう一度振り返ってみると、Day10にはまだまだツッコまなければならない部分が残っていたことを発見し、今回のDay10(2)の記録をするに至っている。

以前も書いたが、私とCarlのやり取りは少なくともDay90まであり、特に最後の方の「なんとしても会わずに金を振り込ませたいCarl VS. どうしてもCarlに会いたい私」の攻防のくだりは、1日分を1記事で収めることは到底不可能なため、極力それ以外の部分は巻いていきたいのだが、読み返すごとに味わい深いロマンス詐欺師のメッセージゆえ、遅々として進まずにいるのが現状である。

ではDay10の続き。
あれだけ長文のメッセージを送ってきていたが、さらに夜はこちら。

日本語訳すると・・


Carl:「こんばんは、まさこ。
今日は在宅勤務だったから、すごくリラックスした一日を過ごせたよ。夕方にはジムに行ってトレーニングをしてきたんだ。僕の仕事は長時間デスクに座ることが多いから、首に少し負担がかかるんだよね😅 だから、時々マッサージを受けるようにしてるよ。君の一日はどうだった? 日本の温泉は体をリラックスさせるのに最高だって聞いたことがあるよ😁

褒めてくれてありがとう。僕のお気に入りの名言を君にシェアしたいな。「偉大な事業や偉大な思想は、すべて滑稽なことから始まる。」これはレフ・トルストイの『戦争と平和』の言葉なんだ 🤔

実は、投資ってシンプルなものなんだ。ただ、忍耐強さと良い指導者が必要なんだよね。まさこにも、僕たちの学びを真剣に受け止めてもらえたら嬉しいな。仮想通貨は新しい金融分野の一部だけど、まだ広く教育が行き届いていないから、多くの人が不安を感じているんだ。でも、人は未知のものに対して怖さを感じるものだよね。実際には、仮想通貨は分散化、公平性、匿名性、透明性、不変性という特徴を持っているから、株式市場よりも安全なんだ。逆に、株は多くの資金が必要だし、コントロールしづらくて、利益が出るまでのサイクルも長いんだよね。後になって気づいたんだけど、株式市場は上場企業やマーケットメーカーによって操作されていることが多いんだ。簡単に言えば、「大きな魚が小さな魚を食べる」仕組みなんだ。僕の考えでは、株式市場は今がピークに達していて、これからさらに上がるかもしれないけど、長くは続かないかもしれないね。

わあ、まさこはたくさんの国に行ったことがあるんだね!僕はまだXXには行ったことがないんだけど、どんなところだった? 僕にとって一番印象に残っているのはイタリアのローマだよ。ギリシャやローマの建築様式にはすごく興奮したんだ。まるで歴史と現代が融合したような感じだったよ。でも、残念ながらオスティア・アンティカには行けなかったんだ。僕は歴史が深くて文化遺産が豊かな街が大好きなんだ 😌

ああ、僕も海が大好きなんだ。そしてビーチを歩くのも大好きで、よく一人で海辺を散歩するんだよ。XXについてもっと知りたいと思ってるし、日本文化について学べたらすごく嬉しいな 😆 まさこがそんな素敵な文化の街に住んでいるのは本当に羨ましいよ。

あはは、僕もデザートが大好きなんだ。抹茶味のケーキが特に好きで、日本では和菓子を食べる機会があったんだけど、本当に美味しかったよ 😌

うん、君の理解はほとんど完璧だよ。この文章の意味は「ふわふわもちもちのダブルの味わい、可愛らしい肉球の形が君の心を溶かす」って感じかな。

もしまさこが明日の夜に時間があれば、僕の簡単な金融知識や投資戦略をシェアする時間を作ることができるよ。そうすれば、もっと早く理解できると思うんだけど、どうかな?

もう遅い時間だから、今日はこれで返信を終わるね。シンガポールはもう23:08だから、そろそろ寝よう。おやすみ 😴」


長え・・長えよ・・。
朝に別のメッセージを送って夜はこれというのは、一般男性には無理なレベルの分量である。さすがはお仕事。ビジネスドキュメンテーションである。

Carlはここでも仮想通貨投資について熱く語ってきているが、私の脳内アラートは何も反応しなかった。
本来であれば、「まだオンラインで知り合って10日で顔も知らないのに、こんなに仮想通貨の話をしてくるなんてこいつおかしい」となるのが正常な感覚なのかもしれないが、私のセンサーは、昨日述べた「自分が投資詐欺・ロマンス詐欺に引っ掛かるわけがない」という先入観とともに、ある文豪によりぶっ壊されていた。

そう、トルストイである。

「僕のお気に入りの名言を君にシェアしたいな。『偉大な事業や偉大な思想は、すべて滑稽なことから始まる。』これはレフ・トルストイの『戦争と平和』の言葉なんだ 🤔」
このくだりを読んだ時、私は、「知り合って10日の、自分が好意を持っている女にトルストイの言葉を送りつけるとか、こいつ、相当やべえな」という感想でいっぱいになり、その後の仮想通貨についての熱弁も、「すごい変わったヤツ」という一括りの中に閉じてしまったのである。

今の私は、Carlとして写真を使われている実在の男性に会いに行くという夢に胸を膨らませているが、こうやって過去のメッセージを改めて見返していくと、いわゆるロマンス詐欺の「中の人」への関心も高めずにはいられない。

一体何をどうやれば、これから自分に恋愛感情を抱かせようと狙っている女相手のメッセージにトルストイが出てくるのであろうか。
また、瑣末なことに見えるかもしれないが、「レフ・トルストイ」と無駄にフルネーム表記であることにも注意を払いたい。
さらに、彼はこの日最後のメッセージの中で、「シンガポールはもう23:08だから、そろそろ寝よう」と言ってきているが、ここは普通、「もう23時を過ぎているから」と言うのが通常人ではないだろうか。

これを書いたロマンス詐欺の「中の人」が、一体どこまで「狙って」このようなメッセージを送ってきたのか、現時点の私には推測することが難しい。

以前も書いた通り、私は実際には3ヶ月で3500万円むしり取られる空前絶後のアホであるが、LinkedIn上の職歴・学歴だけを文字で読む限りは、頭の良さそうなインテリに見えると思われる。
ロマンス詐欺師側は、このターゲット像に合わせて、インテリが好みそうなトピックを選んできているのだろうか。また、フルネームや分単位での表記をすることで几帳面さをアピールしようと意図していたのだろうか。

さらに、これが意図的なものだとして、トルストイの名言は自分でチョイスしているのか、それとも「# 相手の発言内容を肯定することにつながる世界的に有名な文豪の名言を引用してください」といったプロンプトを与えてAIに作らせたメッセージなのかも気になるところである。

なお、この後のやり取りの中で、Carlは『アンナ・カレーニナ』について私が覚えている限り3回は言及してきており、実際にトルストイ好きであった可能性が捨てきれない。
文学好きの教養あるロマンス詐欺師など、世も末と考えるべきか、まだまだ更生の余地ありと希望を持つべきか謎である。

いずれにしても、当時の私の脳内違和感センサーはトルストイにより破壊されており、その後の仮想詐欺に関するくだりには何の違和感も抱かなかった。
「仮想通貨は分散化、公平性、匿名性、透明性、不変性という特徴を持っているから、株式市場よりも安全なんだ」という、教科書かよ、というメッセージも、「アイスランドは火山、氷河、溶岩、渓谷、滝が混ざり合った国で、一番有名なブルーアイスケーブがあって、本当に探検する価値がある場所なんだ」をはじめとするロマンス詐欺師構文に慣らされてしまった私には、「この人はこういう文章の書き方をするんだな」という感想しかもたらさなかったのである。

その上でCarlは「もしまさこが明日の夜に時間があれば、僕の簡単な金融知識や投資戦略をシェアする時間を作ることができるよ。そうすれば、もっと早く理解できると思うんだけど、どうかな?」と本格的な投資勧誘に進もうとしているが、これに対してはこの段階の私はなんだかんだと理由をつけて(日本語で聞いてもわからない投資の話を英語で聞いてもわからないから、あなたの時間を無駄にしたくない、とかなんとか書いた)断っている。

なお、最終的に3500万円をむしり取られていることからもわかる通り、今の私は「トルストイやべえ」だの「分単位なんておかしい」だの言っているが、この1ヶ月半後にCarlに夢中になった当時の私は「Carlってすごく真面目なんだ🥰」というお花畑解釈にシフトしていたことを念のため記載しておきたい。

結局、同じ発言であっても、こちらの感情次第で良い風にも悪い風にも取れるということに尽きる。
私の感情はこの翌日に送られてくる超ド級のイケメン顔写真と、その後洗練されていくロマンス詐欺師構文によって完全に支配されるに至るのである。




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