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【実録!ロマンス詐欺】Day7: 外国人マジック恐るべし
このnoteでは、ロマンス詐欺により3ヶ月で3500万円をむしりとられたアラフォー女子が、この先同じ思いをする人が一人でも少なくなるよう、自身の体験を当時の心情とともに包み隠さず公開します。
WhatsAppに移行してから3日目のメッセージ。
この日も前日に引き続き、通常男性であれば無理なレベルの長文メッセージを送ってきている。
さすがは仕事。彼らにとって長文メッセージを書いて送るのは、我々が日々の仕事の中でドキュメンテーションするのと同じと考えれば納得がいく。
とはいえ、こんなことは当時の私の頭には一かけらも浮かばなかった。「好きな国、日本に住んでいる日本人とやり取りするのが楽しいんだろうな」としか思っていなかったし、こちら側も同じだった。
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日本語訳すると・・
Carl:「おはよう、まさこ! 最近シンガポールでは雨続きだったけど、今日はやっと晴れ間が出てきたよ。今日の午後は会社の同僚とランチをする予定だよ😊
僕は夜は忙しくない時は公園にランニングに出かけてフレッシュな空気を吸うようにしてるよ。これってすごく健康にいいし、考える時間も取れるしね。もし君もこういうアクティビティーが好きなんだったら、夕ご飯を食べた後に散歩するところから始めてみるといいと思う。本当にリラックスできるいいやり方だよ😌
僕はまだ日本のラーメンを食べたことないけど、きっとすごくおいしいんだろうね。11月に日本に行った時に食べてみるのがものすごく楽しみだよ!😋
オリエンタルパールタワーは、ワールドフィナンシャルセンターにすごく近いところにあるよ。僕は南京路のカニがたくさん入った麺が大好きなんだけど、そこはいつも混んでるよ。シンガポールの夜景も綺麗だけど、僕は写真を撮るのが苦手だから、僕のスマホには数枚しか写真がないんだ。機会があったら君のために夜景写真を撮るよ😊
まさに君の言う通りだね。音と感覚って、信じられないくらい癒されるよね。綺麗な音楽を聴くと一瞬で気分が変わるし、それから穏やかな場所に行くと、静けさがすごく心を落ちつかせてくれるよね。僕はほとんど毎日、朝起きたら瞑想してるよ。お坊さんが瞑想するのと同じようにマインドフルネスの瞑想を実践してるんだ🤣
あはは、LinkedInはキャリアとこれまでの経験を書くためのプロフェッショナルなプラットフォームだから、みんなフォーマルな写真を使ってるよね。シンガポールだとLinkedInの利用率は日本と同じようにかなり低いよ。ごく一部の多国籍企業の社員は他の国のエキスパートとコミュニケーションするために使ってるけどね。僕のいる会社は社員が他の仕事を見つけるためにLinkedInを使うかもしれないことをすごく心配していて、僕の上司はLinkedInアカウントを閉鎖することすら検討してるよ。これまで僕は何度か説得してみたんだけど彼はものすごく頑固なんだ。こういう理由もあって、僕はこれから新しい仕事を見つけようと思ってるんだよ。
引き続き面白みは特にない、意識高い系のメッセージである。
もしこれが、dating appで知り合った日本人男性からのメッセージだったら絶対にこれ以上返信していなかったと思う。
散歩のくだりなどつまらなさすぎるにもかかわらず、外国人マジックというのは恐ろしい。
なお、私はこれまで、フランス、イタリア、インド、ハンガリーの男性と恋愛関係にあったことがあり、また職場にも外国人はうろうろしているため、相手が外国人であるゆえの特別感は、日本人の一般平均と比べると相対的にはかなり低いと思われる。
それでもやはり、知らない国の外国人というだけで、平凡な会話ネタでも許容できてしまうのだから、島国育ち日本人の感覚は、海外から我々を狙うロマンス詐欺師たちにとっては格好のカモなのだろう。
さて、この日のポイントは、日常の会話に紛れてしっかりと詐欺のタネを蒔いてきているというところである。
Carlは初めて私にLinkedInで声をかけてから2週間ほどでLinkedInのアカウントを削除したのだが、それを自然なものに見せるための伏線として、「自分の会社は、特に上司は、LinkedInアカウントに反対である」ということをさらっと伝えてきている。
また、これまた高度なテクニックだったと今更気づいて感心しているのだが、LinkedInに関する話題を先に出したのは私の方だったのである。
つまり、詐欺の伏線となる小ネタを、相手が出してきた話題に沿う形で、実に自然に紛れ込ませてきていたのだ。
当時の私はCarlの言ったことを丸っと信じており、何なら、「理解のない上司ってどの国にもいるもんなんだな、説得お疲れ様やで!」くらいに思っていた。
このあたり、もう少し正常な感覚というか、危機管理意識のある人であれば不審に思えたのだろうが、私の残念な脳みそでは無理だった。
なお、私はだいぶ後になってから、知り合ってから2ヶ月近く経ってからだろうか、詐欺の疑いが出てきた、というか、私以外の周囲の人は全員「それは詐欺だよ」と忠告してくれる段になって初めて、彼が所属しているというSGX Group(シンガポール証券取引所)に電話をして、自分が詐欺に遭っているかもしれない、という簡単な背景説明をした上で、「あなたの会社では社員にLinkedInアカウントの使用を禁止しているのか?」と問い合わせをした。
電話口に出てくれた、それこそ本物のSGX Group社員の方は、謎の日本人からの訳のわからない電話にもかかわらず、"yes, yes"と相槌を入れつつ、最後は気の毒そうに「禁止なんてしていませんよ・・」と教えてくれた。
ちなみに、この電話ではCarlが名乗っていた名前も伝え、「この名前の社員はおたくにいますか?個人情報で難しいかもしれないけれど、教えてもらえないか」と相談したところ、調べてくれた上で、これまた気の毒そうに、「そんな名前の社員はいないですよ」と答えてくれた。
SGX Groupは良い会社だ。。対応してくださった方、どなたか存じ上げませんが、その節はありがとうございました、とお伝えしたい。
ただ、私はこうした客観的な詐欺の証拠をもらったにも関わらず、そしてこの後もたくさん掴んだにも関わらず、本当に最後の最後までCarlのことを信じていた。
いろいろとおかしいことはあるが、何か事情があったのだろう、と自分で自分を無理矢理納得させていたのである。
どうしてそのようなめちゃくちゃな思考になってしまったのか、彼との過去のやり取りを振り返るのは心に負担がかかる作業ではあるが、これを通して答えを見つけていきたい。
なお、Carlがカニが好きであるというのはこの日初めて出たネタであるが、この後も折に触れ出ると共に、私は彼が日本に来ると言っていたタイミングで都内の一流のカニ料理のレストランの予約もしていた。当然行くことはなかったが。
なので今、カニを見ると彼を思い出し、一時的にカニが嫌いになっている。