Dear slave 親愛なる奴隷様 Loveですぅ! 第82話 家族
古い大きな家へ到着した周りには大きな倉庫もある、門には柊木農園と書かれている。横には畑が広がり温室が立ち並んでいる。駐車場に車を停めて門を潜り庭へ入った。白い髪が少し見える優しそうな人が手を振って迎えてくれた。
「星七ちゃんいらっしゃい………大きくなったねえ、もう星七君だね」優しく微笑んでいる。
「パパ、ただいまあ〜」琴音さんは抱きついた。
「お帰り琴音、元気だったかい?」
「パパこそ元気だったの?」
「勿論元気さ、ほらこの通り」
わずか数秒で如何に琴音さんが大切に思われているかが理解できた。
「星七君、こんな所までよく来てくれたね、大したおもてなしはできないけど、ゆっくりしていってね」優しい笑顔だ。
「ありがとうございます」僕は深々とお辞儀した。
「あっ、お見えになったんですね、お帰りなさい琴音お嬢さん」綺麗な女の人がにこやかに挨拶してくれた。
「お久しぶりです、高宮さん」琴音さんはニコニコ挨拶をしている。
誰だろう?僕は何となく思ってしまう。
「もしかして星七さんですか?」僕をにっこり見た。
「あっ………はい………星七です」
「じゃあ、今夜はいつものお店に予約しておきますね」そう言って家の中に入っていった。
僕は琴音さんと琴音パパも一緒に大きな家へ入って行く。綺麗な家だけど、随分歴史のある家のようだ。柱は黒く光っている、あちこちに彫刻のような窓の飾りが付いていて時代劇のセットを見ているようだ。広い和室でお茶と果物をご馳走になった。とても美味しかった。
「星七、農園を案内してあげるよ」
「はい」
僕は立ち並ぶ温室に案内された。
「ここは野菜や果物の品種改良をしてる所よ」
「へ〜………」
「向こうの温室はママが経営しているレストランに卸している無農薬の野菜なのよ」
「そうですか………って、レストランを経営してるんですか?」
「うん、関西では5軒経営してるわ、東京ではこの前行った銀座の1軒だけどね」
「えっ、あのお店は静御前の経営しているお店だったんですか?」
「そうよ」
「関西のお店にはここから野菜が届けられるの、美味しいって評判なのよ、まあパパが作ってるからね」自慢げだ。
その後は農園を散歩するように見て回る。
夜になり、高級そうなレストランへ連れて行かれた。
「ここのステーキはとても美味しいんだよ」琴音さんが教えてくれた。
ステーキが運ばれてくると、肉の説明がされる。
「本日は長崎県産の鈴田牛でございます、どうぞご賞味ください」
ファミレスのステーキしか知らない僕には、かなり衝撃的な美味しさだった。
「どう、美味しい」琴音さんが微笑む。
「美味しいです、超美味しいです………」味の説明はできないが、確かに異次元の美味しさだ。
食事を済ませ家へと帰ってくる。
「匠さん、お風呂の準備が出来ました」高宮さんが知らせてくれる。
「パパ、先に入って、私達後でいいから」
「そうかい。じゃあそうさせてもらうよ」匠パパはお風呂へ向かった。
僕は少し気になってる事を聞いてみる。
「静御前の会社はレストランを経営してるんですか?」
「レストランもやってるけど、主な仕事は貿易関係よ、船の権利を持ってるからね、それから不動産も、マンションやオフィスビルもたくさん持ってるわ」
「僕には全くわからない世界ですね………」
「そうでもないわよ、星七ならすぐに全体を把握できるわ」
「この農園は無くても大丈夫なんじゃないですか?」
「そうね、ここはパパのやりたい仕事だから、ママがこの家や土地を買ったのよ」
「そうなんですか」
「パパは元々大学で植物の品種改良を研究してたのよ」
「それでこの農園があるんですね」
「パパは週末しかママの所へ帰らないの、だからママは寂しくなると何かと理由を付けてこの農園までやって来るのよ」琴音さんは少し笑った。
「静御前は可愛い人なんですね」
「うん、あんなだけど、パパには弱いのよ」
僕は琴音さんが似てるような気がした。
匠パパがお風呂から出てきた。
「星七君もお風呂に入っておいでよ」
「はい、ありがとう御座います」
僕は琴音さんに案内されてお風呂に入った。木の香りがする檜風呂だった。