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パブリックコメント「外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令案等(重要・新興品目等)に対する意見募集について」にECCN 3A090相当が登場など

1月31日に経済産業省は安全保障輸出管理に関して2点パブリックコメントを開始しました。

案件番号595125013 外国為替令等の一部を改正する政令案等(補完的輸出規制等)に対する意見募集について

締切は3月1日。
公布は3月末ごろ、施行は公布から6か月後となっています。

大きく3つの改定で構成され、
・通常兵器CA規制の客観要件に関するもの
 輸出令別表第1の16の項が、16の項(1)と(2)に分かれて管理します。
 16の項(1) に工作機械、集積回路、無人航空機部品等 を指定。
 外国ユーザ―リストに「通常兵器」懸念が登場。

資料から

・通常兵器キャッチオール規制に係る包括許可の適用など
 インド、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、
 ベトナム、マレーシアの正規軍に対して軍事関連物資を輸出することか
 ら、これらの取引を特別一般包括許可を使えるようにしています。
・懸念国による迂回調達防止のためのキャッチオール規制の見直し
 グループA国への輸出にもインフォームが適用できるように変えていま
 す。

CP提出企業・団体が毎年7月に提出する「輸出者等概要・自己管理チェックリスト 様式3」が変更になっているのか不明です。もし何か変わっている場合、施行は9月末以降なので来年の7月から新しい様式3を使うことになります。

2つ目の改正は1の項に該当するものを輸出している企業に関わる改定で、関わっていない企業には影響がないでしょう。
1つ目の改定は、「新たな国際安全保障環境と貿易管理の課題」として検討が進んだ改定で特定貨物16の項(1)について客観要件が強化されましたが、それ以外は変わらず。法令に従って割り切ることができるかですね。
懸念が通常兵器となる外国ユーザ―リストが作成されるのは、進歩ですね。

案件番号595125012 外国為替令及び輸出貿易管理令の一部を改正する政令案等(重要・新興品目等)に対する意見募集について

締切は3月1日。
例年通りのWAなどの規制品目の改正および重要・新興技術に関する改正は、輸出令別表(政令)の改正を含むので閣議決定が必要となります。公布から2か月後に施行になり、パブリックコメントの締め切り後、いつ公布されるのか。それ次第です。
こちらは「輸出貿易管理令の運用について」などに関する改正を含んでいて、半導体製造装置、工作機械、火薬を使うものなどの包括許可関連のようで、施行は上の項目と同時なのでしょうか。
さらに、工作機械の精度に関しての改正もあり、こちら大きな制度変更をしているように見えます。こちらも施行はいつになるのでしょうか。分離して6か月後とかになるのか、同時なのか。

ECCN 3A090に関連すると思われる合計処理性能(TPP)

さて、ここからはECCN 3A090に関係すると思われる合計処理性能(TPP)についてです。

重要・新興技術に関する改正情報に合計処理性能(TPP)が含まれています。比較するため下記に日本の規制、米国の規制を引用します。

貨物等省令第6条 第1号 ヨ

揮発性メモリを含まない他の集積回路との間の全ての入力及び出力にわたる双方向の転送速度の総計が六〇〇ギガバイト毎秒以上である集積回路であって、次のいずれかに該当するもの又はこれらに該当するようにプログラムが可能なもの
(一) 合計処理性能(TPP)が六、〇〇〇以上である機械語命令を実行するデジタルプロセッサユニットを一つ以上有するもの
(二) (一)で指定された機械語命令の実行に寄与するユニットを除き、合計処理性能(TPP)が六、〇〇〇以上であるデジタル基本演算ユニットを一つ以上有するもの
(三) 合計処理性能(TPP)が六、〇〇〇以上であるアナログ基本演算ユニットを一つ以上有するもの
(四) (一)から(三)までのデジタルプロセッサユニットと基本演算ユニットの組み合わせであって、それらの合計処理性能(TPP)の総和が六、〇〇〇以上であるものを有するもの

輸出令別表第1の解釈

貨物等省令第6条第一号ヨ中の集積回路
グラフィカルプロセッサユニット(GPUs)、テンソルプロセッシングユニット(TPUs)、ニューラルプロセッサ、プロセッサ内蔵メモリ、ビジョンプロセッサ、テキストプロセッサ、コプロセッサ又はアクセラレータ、適応型プロセッサ、フィールドプログラマブルロジックデバイス(FPLDs)及び特定用途向け半導体(ASICs)を含む。

合計処理性能(TPP)
集積回路上の全てのプロセッサユニットにわたって演算ビット長にテラ(1012)オペレーション毎秒(TOPS)で測定された処理性能を乗じた
もの。
例えば、それぞれ16ビット演算で200TOPSの性能を持つ2つのデジタルプロセッサユニットを備えた集積回路のTPPは 6400(2プロセッサ×200TOPS×16ビット=6400)となる。
貨物等省令第6条第一号ヨ(三)において、各アナログ基本演算ユニットのTPPは、TOPSで表される処理性能に8を乗じたものとする。TOPS値は、全ての演算ユニットが同時に動作している場合に理論的に可能な最大値とする。
TOPS値と総計双方向転送レートの総計値は、メーカーがそのチップのマニュアル又はパンフレットで主張する最高値を用いる。
演算のビット長は、その演算の入力又は出力の最大ビット長と等しいとする。さらに、プロセッサユニットが異なるビット長×TOPS値を実現する演算用に設計されている場合は、最大ビット長×TOPS値を使用しなければならない。
疎行列と密行列の両方の処理を提供する演算ユニットは、TOPS性能実力値は、密行列の処理の性能実力値とする。(例えば、スパース性を利用した高速化演算処理は行わないものとする。)

TOPSの計算に関連する演算は、スカラー演算、ベクトル演算、行列演算又はテンソル演算などの複合演算のスカラー構成要素の演算の両方を含む。
スカラー演算は、整数演算、浮動小数点演算(多くの場合、FLOPSによって測定される)、固定小数点演算、ビット操作演算又はビット演算(AND、OR、XOR、NOT等の論理演算など)を含む。

基本演算ユニット
0個以上の変更可能な重みを含み、1つ以上の入力を受け取り、1つ以上の出力を生成するものをいう。
演算ユニットは、N個の入力に基づいて出力が更新されるたびに2N-1の演算を実行するものであり、処理要素に含まれる変更可能なそれぞれの重みは入力としてカウントされる。
各入力、重み及び出力は、1つ以上のビットを使用して表されるアナログ信号レベル又はスカラーデジタル値である場合がある。
このような演算ユニットには、人工ニューロン、積和演算(MAC)ユニット、浮動小数点ユニット(FPUs)、アナログ乗算器ユニット、メモリスタ、スピントロニクス若しくはマグノニクスを使用した演算ユニット、フォトニクス若しくは非線形光学を使用した演算ユニット、アナログ若しくはマルチレベルの不揮発性重み値を使用する演算ユニット、多値メモリ若しくはアナログメモリを使用した演算ユニット、多値理論のユニット又はスパイキングユニットを含む。    

ECCN 3A090

a. Integrated circuits having one or more digital processing units having either of the following:

a.1. A 'total processing performance' of 4800 or more; or
a.2. A 'total processing performance' of 1600 or more and a 'performance density' of 5.92 or more.

b. Integrated circuits having one or more digital processing units having either of the following:
b.1. A 'total processing performance' of 2400 or more and less than 4800 and a 'performance density' of 1.6 or more and less than 5.92, or
b.2. A 'total processing performance' of 1600 or more and a 'performance density' of 3.2 or more and less than 5.92.

比較してみて

同じ概念、同じ定義による規制のようですが、日本の規制は「入力及び出力にわたる双方向の転送速度の総計が六〇〇ギガバイト毎秒以上である集積回路」に限定されていて、日本は6000TPP、米国は4800TPPと規制値が違います。

米国のTPPに関する規制は集積回路等(3A090、3Axxx.z)だけでなく、電子計算機(4Axxx.z)、暗号装置(5Axx2.z)にも及んでいます。一方、日本は集積回路のみ(貨物等省令第6条第一号ヨ)です。
米国の場合、TPPが規制値以上の集積回路を組み込んだものは形態に関わらず該当にしようとしています。
日本の場合、「輸出貿易管理令の運用について」の1-1(7)(イ)ただし(除外の条件を改定していない) の10%ルールを使って非該当にする可能性があります。主要な要素になっているとして該当と判定するということになるのでしょうか。

ECCN 3A090との関係、ECCN 3A090に揃えることはできなかったのかなど経産省による説明、解説が必要です。

参考資料 CISTECの提言・要請

・2022年度 防衛装備移転に係る手続き的環境整備に向けた課題について(要望)(その2)
・2023年度 通常兵器キャッチオール規制に関する諸問題
・2023年度 安全保障輸出管理の制度・運用のあり方について(包括的要望書)
・2024年度 防衛装備移転に係る手続き的環境整備に向けた課題について(要望)(その3)

最後の提言は1月24日に送付されたもので、今回のパブリックコメントには反映されていない?

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