見出し画像

安全保障輸出管理 日本 少額特例のQA5 更新

これも古い話です。
2024年4月1日に経済産業省 安全保障貿易管理のHPの新着情報に「「少額特例」について、Q&A>少額特例のQA5を更新しました。」とあります。
これについて記載しつつ、少額特例をおさらいします。
Expert試験にも触れてます。

2024年4月1日に更新されたQA5

Q5:質問 2024/4/1追記

輸出貨物1つずつに、少額特例が適用されるのでしょうか。

▲A5:回答

総価額が少額特例の上限額(輸出貨物の種類により、100万円または5万円とされています。)以内であれば、少額特例が適用できます。ただし、適用にあたっては次の点に注意してください。

1 少額特例が適用されるか否かを判断する金額は、税関への申告額ではなく、契約額(無償の場合は税関の鑑定価格)です。一つの輸出契約を複数回に分けて船積み・輸出する場合などで、個々の申告額が規定の額を下回っていても、契約額全体では規定の額を超えている場合は輸出許可が必要になります。

2 また、少額特例が適用される「総価額」とは、個々の貨物の価格ではありません。1回の輸出契約ごとに対して、その輸出貨物のうち輸出許可の対象となる貨物を輸出貿易管理令の別表第1の各項のカッコごと(例えば「7項(4)」「10項(7の2)」などのそれぞれ)に区分けしたものを「総価額」として、少額特例が適用されることになります。したがって、1件の輸出の中で、輸出許可を必要とする貨物の輸出と少額特例により輸出許可が不要となっている貨物の輸出がまとめて行われることもあります。

3 同じ時期に同じ貨物について、同じ買主との間に複数の輸出契約が存在するケースで、それぞれの輸出について少額特例を適用する際には、複数契約とする合理性が存在しない場合は、少額特例の悪用とみなされる可能性があり、外為法違反となるおそれがあります。

<参考> 運用通達(1-1(5)、4-1-4参照)
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/tutatu/26fy/unyou_tsutatsu.pdf

安全保障貿易管理**Export Control*Q&A (meti.go.jp)

おさらい 少額特例 輸出貿易管理令(輸出令)

貨物にのみ適用可能

第4条第1項第4号
別表第一の五から一三まで又は一五の項の中欄に掲げる貨物であつて、総価額が百万円(別表第三の三に掲げる貨物にあつては、五万円)以下のもの(外国向け仮陸揚げ貨物を除く。)を別表第四に掲げる地域以外の地域を仕向地として輸出しようとするとき(別表第三に掲げる地域以外の地域を仕向地として輸出しようとする場合にあつては、前号のイ、ロ及びニのいずれの場合にも(別表第三の二に掲げる地域(イラク及び北朝鮮を除く。)を仕向地として輸出しようとする場合にあつては、同号のイからニまでのいずれの場合にも)該当しないときに限る。)。

おさらい 少額特例 輸出貿易管理令の運用について(運用通達)

1-1-(5)総価額の取扱い
輸出令第4条第1項に規定している「総価額」は次により取り扱う。

(イ)価額の全部につき支払手段による決済を要しない貨物の場合は、税関の鑑定価格をいう。
(ロ)価額の全部又は一部につき支払手段による決済を要する貨物の場合は、当該貨物に係る輸出貨物代金(輸出契約の履行により輸出者が取得する債権の総額(当該輸出者が当該債権の総額から当該輸出契約の履行に直接伴って負担する仲介手数料、代理店手数料、領事査証料、検数料その他の輸出に附帯する手数料の金額(その金額が妥当なものに限る。)を差し引いて受領する場合は、当該金額を差し引いた残額))をいう。

(注)
① 「輸出契約の履行に直接伴って負担する仲介手数料、代理店手数料」は、当該輸出契約の内容に仲介手数料又は代理店手数料を支払うべきことに関する定めがある場合(いわゆるシングル・トランザクションの場合)における当該手数料に限るものとする。
② 「金額が妥当なもの」は、輸出に附帯する手数料の金額が、次に該当する場合とする。
イ 仲介手数料及び代理店手数料については、その合計額が当該輸出貨物代金の10%以内の金額である場合
ロ 仲介手数料及び代理店手数料以外の手数料については、その手数料の合計額が輸出貨物代金の5%以内の金額である場合
ハ 金利に相当するものについては、国際的に通常の取引条件と認められる範囲である場合

4-1-4 輸出令第4条第1項第四号の解釈
輸出令第4条第1項第四号の「総価額」として積算すべき貨物の範囲は、輸出令別表第1の各項の中欄のうち括弧毎の貨物とし、輸出令第4条第1項第四号に規定された条件は各々の総価額ごとに判断する。ただし、積算すべき貨物の範囲に輸出令別表第3の3に掲げる貨物とそれ以外の貨物が混在する場合にあっては、輸出令別表第3の3に掲げる貨物の積算額及びそれ以外の貨物の積算額を各々の総価額とする。

おさらい 輸出令別表第三の三に掲げる貨物

別表第一の五の項(十四)若しくは(十八)、七の項(二)若しくは(十五)、八の項の中欄、九の項(一)若しくは(六)、一〇の項(一)、(二)、(四)、(六)、(七)、(九)、(九の二)若しくは(十一)、一二の項(一)、(二)、(五)若しくは(六)若しくは一三の項(五)に掲げる貨物であつて、経済産業大臣が告示で定めるもの又は
同表の一五の項の中欄に掲げる貨物

おさらい 輸出貿易管理令別表第3の3の規定により経済産業大臣が定める貨物

この項番であればすべてが該当するわけではなく、さらに細かく規定されています。
2024年9月12日の時点(2021年1月27日改正)では以下になります。

5の項(14) 第4条第十二号ハ又はニ
5の項(18) 第4条第十五号ハ若しくはニ
7の項(2) 第6条第二号ハ(一)5若しくは6若しくは(二)3又
はニ(一)5若しくは6若しくは(二)3若しくは4
7の項(15) 第6条第十六号ロ
8の項 第7条第一号ロ
9の項(1) 第8条第二号イ(二)
9の項(6) 第8条第六号
10の項(1) 第9条第一号イ(二) 若しくは(六)又はロ(三)
10の項(2) 第9条第三号イ、ロ若しくはホ、第四号又は第五号イ
10の項(4) 第9条第八号イ(一)1、(二)1又は(三)
10の項(6) 第9条第九号ハ
10の項(7) 第9条第九号ニ
10の項(9) 第9条第十一号イ、ロ、ヲ又はワ
10の項(9の2) 第9条第十一号の二イ
10の項(11) 第9条第十三号ニ、チ又はル
12の項(1) 第11条第一号の二
12の項(2) 第11条第四号ロ又は第十号ヘ若しくはト
12の項(5) 第11条第六号
12の項(6) 第11条第八号
13の項(5) 第12条第十一号

実務で注意すべき点

少額特例の適用判断は、契約単位に実施することになります。
通関手続きごとではありません。ITシステムではどうしても通関毎になってしまいますが、数回に分けて送付する場合(分割出荷)、大きなプロジェクトでは注意が必要です。うまくITシステムで処理するように工夫が必要です。

また、品目が複数ある場合は、輸出令別表第1の項番括弧ごとに分け、さらに告示貨物かそうでないかも分けることになります。

事例として以下のものを送付する場合、項番、告示貨物かどうかも区別します。

7の項(1)                  100万円以下
7の項(2) 第6条第二号ハ(一)4      100万円以下
7の項(2) 第6条第二号ハ(一)5 告示貨物 5万円以下
8の項 第7条第三号ロ             100万円以下


「3 同じ時期に同じ貨物について、同じ買主との間に複数の輸出契約が存在するケースで、それぞれの輸出について少額特例を適用する際には、複数契約とする合理性が存在しない場合は、少額特例の悪用とみなされる可能性があり、外為法違反となるおそれがあります。」
これも厄介ですが、少額特例を使うために意図的に分割して契約を分けていないことを証明、説明できるようにしておきましょう(どうやって?)。

輸送コストの削減のため、複数契約のものを同日に通関手続きをすることが発生します。こうしたときにどうするか。
より確実にするため、そもそもこうした複数の通関手続きを合わせることを認めないという方針もあります。都度輸出管理部門で確認するという方法もあります。

少額特例において、やはり輸出管理部門等でコストがかかり、罰則等を考えると特別一般包括許可を使って処理したくなります。が否定されてます。

少額特例を適用しなければならない案件は、包括許可証が使用できないので、特例や包括許可の適用可否判断を多段階で正確に行うこと。

経済産業省
安全保障貿易管理の実務~中級編パート2~
anpo_level3_part2.pdf (meti.go.jp)

Expertでの少額特例に関する問題と解説

2023年 <問題1>(配点:1)
本邦にある大学Xは、輸出令別表第1の9の項(1)に該当する新型の無線
機2台をアルゼンチンにある大学Yへ輸出する契約を結んだ。当該無線機は告示貨物で、1台55万円である。この場合における輸出令第4条第1項第四号の説明として、AからEまでのうち、正しい説明はいくつあるか、後記1から5までの中から1つ選びなさい。

A この輸出契約が、無償の贈与契約の場合、総価額は0円になるので、少額特例を適用できる。
解説:間違い。税関の鑑定価格を適用する。

B この輸出契約の総価額が100万円以下であれば少額特例を適用できる。
しかし、総価額は110万円であるので、少額特例は適用できない。
解説:間違い。告示貨物なので5万円以下。

C この輸出契約の総価額が5万円以下であれば少額特例を適用できる。しか
し、総価額は110万円なので、少額特例を適用できない。
解説:正しい。

D 仕向地がアルゼンチンであるので、この輸出契約の総価額がいくらであっ
ても、輸出令第4条第1項第三号のいずれの場合にも該当しないときでな
ければ、少額特例を適用できない。
解説:間違い。アルゼンチンは輸出令別表第3の地域なので適用できる。

E この場合、輸出申告を1台毎に、2回に分ければ、総価額が100万円以下になるので、少額特例は適用できる。
解説:間違い。少額特例は契約ごとに判断する。

1.1個  ← 正解
2.2個
3.3個
4.4個
5.5個

2022年 <問題4>(配点:1)
AからEまでのうち、正しい説明の組合せを後記1から5までの中から1つ
選びなさい。なお、全て本邦から1契約で輸出・提供され、かつ、キャッチオール規制の要件には該当しないものとする。
A (略)
B 米国向けに、輸出令別表第1の15の項(2)に該当する貨物α(総価額4万円)を輸出する予定である。貨物αは、輸出令第4条第1項第四号の少額特例で輸出することができない。
解説:間違い。15の項は5万円以下であり、適用可能。

C (略)
D (略)
E 外為令別表の9の項に該当するソフトウエア(総価額3万円)を書き込んだDVDを米国向けに輸出し、提供する場合は、少額特例を適用することができる。
解説:間違い。ソフトウェアには少額特例は適用できない。

1.A・B  ← 間違い
2.B・C  ← 間違い
3.C・D
4.D・E  ← 間違い
5.E・A  ← 間違い

2021年<問題1>(配点:1)
少額特例の適用可否について、AからEまでのうち、正しい説明には○、誤っている説明には☓を付した場合の正しい組合せを後記1から5までの中から1つ選びなさい。なお、輸出先の用途は全て民生用途で、輸出貨物に告示貨物はない
解説:告示貨物でないことを明言している。
   あの表を覚えておく必要はないということかな。
   覚えたくないですね。覚えていません。

A 本邦にある貿易会社が、輸出令別表第1の4の項(15)に該当する貨物を米国にあるメーカーに輸出するとき、価額80万円では少額特例を適用できるが、価額120万円では適用できない。
解説:×。4の項には少額特例は適用できない。

B 本邦にある貿易会社が、輸出令別表第1の7の項(1)に該当する貨物(価額90万円)と輸出令別表第1の7の項(2)2に該当する貨物(価額80万円)を米国にあるメーカーに輸出するときは、少額特例は適用できない。
解説:×。7の項は100万円以下であり、括弧ごとに積算すればよく、米国向けは100万円以下で少額特例は適用できる。

C 本邦にある貿易会社が、輸出令別表第1の14の項(1)に該当する貨物を米国にあるメーカーに輸出するとき、価額80万円では少額特例を適用できるが、価額120万円では適用できない。
解説:×。14の項は選択子Aと同様に少額特例の適用対象外。

D 本邦にある貿易会社が、輸出令別表第1の15の項(2)に該当する貨物を米国にあるメーカーに輸出するときは、価額80万円では少額特例を適用できるが、価額120万円では適用できない。
解説:×。15の項は告示貨物で5万円であり、80万円のものに少額特例は適用できない。

E 本邦にある貿易会社が、輸出令別表第1の6の項(6)1に該当する貨物(価額95万円)と輸出令別表第1の6の項(6)3に該当する貨物(価額50万円)を米国にあるメーカーに輸出するときは、少額特例が適用できる。
解説:×。括弧ごとに積算するので、100万円を超え、少額特例は適用できない。

1.A〇 B○ C〇 D☓ E〇
2.A☓ B☓ C☓ D☓ E〇
3.A〇 B☓ C〇 D☓ E☓
4.A○ B〇 C☓ D○ E☓
5.A☓ B☓ C☓ D☓ E☓ ← 正解

2020年<問題12>(配点:1)
AからDまでのうち、正しい説明はいくつあるか後記1から5までの中から1つ選びなさい。なお、本邦にあるメーカーXは、特別一般包括輸出・役務(使用に係るプログラム)取引許可を取得しており、輸出先の用途は、すべて民生用途である。

A 本邦にあるメーカーXは、輸出令別表第1の9の項(7)に該当する暗号通信装置α(総価額90万円)を米国にあるメーカーYに輸出する予定である。この場合、メーカーXは、少額特例を適用して輸出することもできるし、特別一般包括輸出・役務(使用に係るプログラム)取引許可を適用して輸出することもできる。
解説:間違い。包括許可は特例が使えないときに使う。

B 本邦にあるメーカーXは、輸出令別表第1の9の項(7)に該当する暗号通信装置α(総価額90万円)を米国にあるメーカーYに輸出する予定である。この場合、メーカーXは、少額特例を適用して輸出することはできるが、特別一般包括輸出・役務(使用に係るプログラム)取引許可を適用して輸出することはできない。
解説:正しい。包括許可は特例が使えないときに使う。

C (略)
D (略)

1.0個 ← 間違い
2.1個
3.2個
4.3個
5.4個 ← 間違い

最後まで読んでいただきありがとうございます。いただいたサポートは書籍費等に使わせていただきます。