これから生まれる新職業と必要なAIFSD
デザインの世界から学ぶ環境配慮設計という考え方
プロダクト・デザインの世界ではDFEという用語があるそうです。これは、Design for Environment(環境配慮設計)、つまり、エコなプロダクト(製品・商品・サービス)の設計をエコなプロセスで行いましょうという事です。
例えば、ほとんどの工業製品は、初期設計の時点で製造コストの8割以上の要素が確定してしまいます。
DFEの考え方からすると、この設計当初から全体を見通した設計をするわけです。いわば湧き水の段階で中流から下流で海に流れ込むまでの周辺環境まで想像するわけですね。
①シンプルな構成をモジュール化して組み立てる
②環境負荷の少ない材料を使う
③製造工数がかからず拡張性の高い工程を設計する
④製品寿命終了時のリサイクル環境を考慮する
流石デザインの世界は進歩的ですね。詳しい人がいたらもっと聞いてみたいです。
あらゆるサービス・プロセス設計に必要な高い視座
ところで、もちろんこれは工業製品に限った話ではなく、あらゆるサービス設計、行政サービスや社内プロセスの設計にまで共通して言える話のはずです。目先の利益に飛びつくのではなく、高い視座をもってプロセス設計をしなければ社会全体が前に進みません。地球全体が破滅にしか向かわないのです。
例えば、エストニアの電子行政サービスなどは、個別に見ればバランス取れていないものも多いですが、全体としては非常に高い視座に立っての設計が行われているのではないでしょうか。
もともと環境変化に敏感な地域ですから、全体統合してバランスを保つことの重要性を分かっているのかもしれませんね。その一部だけを取り出して真似しようとかあーだこーだ文句をつけようとするのはおかしな話です。
翻って我が国を見たとき、この辺の高い視座はどれだけ意識されているでしょうか。まあ徹頭徹尾、非常にお粗末だなとは思います。
例えば、最近施行された軽減税制一つとってもです。政治の駆け引きではなく、地球環境全体に対する負荷はどれだけ考慮されたでしょうか。そのような高い視座をもって議論した政治家はいたでしょうか。このような高い視座はデザイナーだけではなく、あらゆる人に求められていると考えています。
これから生まれるAIプロデューサーという職業
昨今、私は、AIや関連するテクノロジーの進化を見た時に、AIの技術を理解しながら社会実装まで持っていけるプロデューサーのような人材が多く必要になると考えています。
仮に彼らをAIプロデューサー(AIP)とかAIプロジェクトマネージャー(AIPM)と呼称します。彼らは、誰にでも使えるようになった数あるAIのモジュールの中から最適なものを探し出し、AI以外のテクノロジーとも組み合わせながら社会課題という問題を解いていくのです。
例えば、セキュリティを管理したい現場があるとします。AIエンジニアやAI
技術の会社が提供するのはいわゆるAI部分なのですが、AIプロデューサーに求められるのは、AI部分の知識に加え、現場の知識、最適なセンサーの知識、画像なのか赤外線なのかそれとも音声が良いのか等という知見、それに基づいた最適なAI技術の選定(画像解析なのか文字解析なのか、ディープラーニングなのかRPAなのか)そして、数あるAIモジュールの中から最適なモジュールの選択、組み合わせ(ハード・ソフト)、納入と顧客へのトレーニングといった実に多くの要素が必要となります。
最終的にAIじゃなくて人が最適であるという結論にたどり着くことができるのもAIプロデューサーなのです。
AIプロデューサーは個人の資質に依存します。AIエンジニアよりも高い視座と俯瞰力を持った人間だけが成ることを許される領域でもあるのです。最近は実際にこのような動き方をしている人が私の周りにも増えてきた気がします。もちろん相当にハイレベルなAIに関する知識も必要とされます。
このAIプロデューサーが必要とするのが、まさに、デザインにおけるDFEともいえる、AI版の視座の高さではないでしょうか。私はこれをAIFSD(AI for Sustainable Development)と名付けてみました。人類規模の持続可能な発展の可能性をAIレベルまで繋げて語れる人の存在です。
AIプロデューサーの資質とAIFSD
改めて、AIFSDを進めることができるAIPという職業が今後生まれます。えっと、、、、もう一度言います(笑)。「人類の持続可能な発展可能性に寄与するAI」を考え、「数あるAIを組み合わせて文脈でつなげられる」AIプロデューサーという職業が今後生まれます。
AIプロデューサーに必要な要素
①AIにとどまらないテクノロジー全般に対する広範な知識
②プロダクトが与える地球人類規模でのインパクトに対する高い知見
③高い倫理観と正義感
④最後まで成し遂げる強い責任感
⑤周りを巻き込むコミュニケーション能力と熱意