31 カミングアウト
俊「…ごめん!気になってこっそり尾けてた!」
一輝「びっくりした…。じゃあさっきの全部見てたんだな…。」
俊「ごめん、まさか告白とは思わなくて…。」
一輝「ストーカーみたいなことすんなよ。」
俊「ごめんって。」
一輝「康太と雅也は?」
俊「あの2人は先に帰った。」
少し無言になる。
俊「でもさあ、何で断ったの?雫って前一輝が言ってたタイプど真ん中じゃね?大人しくて中性的で。俺絶対オッケーすると思った。」
一輝「いや、まあな…。確かに見た目はタイプに近いけど。」
俊「え?じゃあ性格?それも一輝のタイプ通りじゃん。」
一輝「うん、まあ…。」
俊「…一輝、いっつも大事なとこ言わないよな!なんかあんの?恋愛の話のときいっつもそんな感じじゃん!」
う、ヤバい。また詰められてる。
俊「最近マシになってたからそんな言わなかったけど、やっぱりなんかあるよな。すごい気になるんだけど。」
くそ、やっぱりこのまま隠し通してってわけにはいかないか。最近いい感じできてたのに。
俊「なあ、なんかあるんなら教えてよ。俺たち友達だろ?俺そんなに信用出来ない?」
いや、信用出来ないわけじゃない。けど、カミングアウトはそう簡単に出来るもんじゃないんだよ。
でも…これはもう言った方がいいのかな…。元々一回言おうって思ったこともあったしな。今こんなにゲキ詰めされて、これで言わない方が後々良くないかもしれない…。俊なら…大丈夫…だよな…?
俊「一輝!」
一輝「…分かった。言うよ。」
俊「え、うん。」
懇親旅行の夜に感じた心のザワつきがまた襲ってきた。言うぞ、言うぞ!と思うほど、不安と、恥ずかしさと、今まで感じたことのない感覚が押し寄せてくる。
少しの静寂の後、言った。
一輝「あ、あのな、俊。俺、実はな…。」
俊「う、うん。」
一輝「…ノンケなんだ。」
俊「…ノンケ?」
一輝「うん、ノンケ。女の子が好きなんだ。」
戸惑っているみたいだ。まあそりゃそうだろ。ノンケが身近にいるなんて誰も思ってないからな。
俊「え、だって、好きな男のタイプ言ってたじゃん。」
一輝「あれ嘘。ていうか、中性的な男って言ったけど、そもそも女が好きなんだ。そう言った方が安全かなと思って。」
俊「エルジーランドで、すれ違った男がタイプだとか言ってたのは!?」
一輝「たまには自分からそういうの言っといた方が疑われなくていいかなと思って。」
俊「…じゃあ、恋愛の話で話し辛そうにしてたのは、ホントはノンケなのを隠してたからってこと…?」
一輝「そう…。」
あのときのあれはそうだったからなのか、と答え合わせしている感じがなんか恥ずかしい。全部演技だったっていうのがバレて、いろいろ思われてるんだろうな。
俊「…そんな…。」
一輝「驚かせたよな…。でも全部ホントなんだ。」
俊「じゃあ…今までずっと俺は…」
俊「一輝に騙され続けてたんだな…。」
一輝「いや、悪気があったわけじゃないって!そんな簡単に言えることじゃないからさあ!人聞き悪い言い方すんなよ!」
俊は走ってどこかに行ってしまった。騙されてたって…そんな言い草ないだろ。てか、お前が勝手に俺を同性愛者だと思い込んでただけじゃん。しかも自分から聞いてきといてなんだよその態度。
いや…受け入れてくれると思ってたのになぁ。あんな反応されるとは…。あ、まさかバラしたり、しないよな…?さすがにないよな?大丈夫か?そうでなくても、次会うとき気まずいな…。