40 対面
家に帰ると、父さんと大輔さんがリビングで待っていた。
一輝の父「一輝、そこに座りなさい。」
一輝「…はい。」
ああ…ここでしっかりと話し合うんだな。まあ時期も時期だし…夏頃って言ってたからな、結婚。その前にしっかり整理しておくんだろう。
一輝の父「大輔といろいろ話し合った。大輔にいろいろ教えてもらった。…ノンケは悪いことじゃない。本人にもどうにも出来ない。する必要もない。…そうだな。よく理解した。」
一輝「…。」
一輝の父「確かに最初は受け入れられなかった。今まで精一杯育てて来たつもりなのに何でってな。傷つけることも言ってたと思う。すまなかった。」
大輔「うん、それとね、認めてあげるとか、そういうことでもないんだよってね、言ったんだ。同性愛が偉いわけじゃないし、対等に接してあげられるようにって。」
一輝の父「ああ。まだ全然理解も足りてないと思う。完全に受け入れられたわけでもない。でも大輔と一緒に改めて一輝の親として頑張りたいと思う。」
一輝の父「一輝は…どうだ。俺ら2人に父親を任せたいって思うか。」
なんだよ、改まっちゃって。そんなの…
一輝「…今更何言ってんの。前から2人は俺の父さんじゃん。」
父さんはハッとするように瞬きをした。大輔さんは小さく何度かうなずいていた。
一輝「結婚…するんでしょ。」
一輝の父「ああ…。ありがとな。」
一輝「おめでとう、竜一父さん、大輔父さん。」
2人はとても安心した表情を浮かべていた。
〜〜〜〜〜
次の日、一日を終えて下校し、河川敷の道が近付いてきたところで、目の前に亮佑とあのときの輩2人組が現れた。
亮佑「あ〜〜〜、なんで死なねえのかな〜〜〜!」
そう言いながら、亮佑は輩2人を左右に据えて近づいてくる。右手には金属製のバットを持っている。
亮佑「道彰とか言ったっけな…。あいつは親にバラしたらちゃんと死んでくれたのにな〜。ノンケという生き物を生み出した罪深き親もろともさあ。」
バン!
亮佑は地面をバットで強く叩きつけた。
亮佑「…なのになんでお前は親にバラしてもそうやってピンピンしてんのかな〜。平気で学校にも来続けるしさ〜。頼むからさっさと死んでくんねえかな〜〜〜!」
グイッと俺の顔を覗き込むように顔を近づけ、亮佑は言った。
亮佑「…なあ、とっくに俺がやったって気付いてたんだよな。」
一輝「…。」
亮佑「なんでそう思うか教えてやろうか?」
一輝「…えっ!」
亮佑が指差した先、輩グループの男が1人と、もう1人。
体をロープで縛られ、囚われの身になっている有希さんの姿があった。
亮佑「あいつと昨日ここで喋ってたよな。ちょっとこいよ。話の続きをしようぜ。」